自由な立場で意見表明を
先見創意の会

医療百論2023

解決なき争いが世界の混迷を深める
ウクライナ戦争、物価高騰、エネルギー不足と世界が混迷する中、日本はコロナ禍をどう乗り越えるのか。総勢25名のコラムニストによる64本のコラムを一斉掲載。
はじめに

先見創意の会は、医療関係者や医療に関心のある一般の方々が個人として自由な立場で情報の交換、相互啓発、意見表明を行う場を提供することを主たる目的として2006年に発足しました。私は、昨年青柳前代表理事から代表理事を引き継ぎました。まだ至らないところも多々あると存じます。皆様の暖かいご支援により何とか務めさせて頂いております。
この18年間、様々な情報を提供とするとともに、コラムニストや会員の皆様から頂いた貴重なご意見やご提案をホームページ上に掲載してきました。会員数やアクセス件数も増加し、本会の役割も認知されるようになったことを喜ばしく思っております。約20年の継続は正に「継続は力なり」を実感させて頂いております。

この1年もまさに激動の1年だったと思います。新型コロナウィルスによるパンデミックが収まると思うとまた拡大し、その不安感が国民の生きるエネルギーを奪っているかに見えます。2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は1年経過しましたが、終息の目途は全く立たず、多くの子供や若者達が犠牲になっている事は痛恨の極みです。世界経済もグローバル化から一転ブロック化に進み、エネルギー・食料の確保が困難になり価格も高騰し、我々の生活を直撃しています。ここで考えるべき大事なことは、医療も我が国にとって重要な戦略の一つだということです。コロナ禍で現在の医療体制の不備が洗い出されました。またワクチンを含め医薬品開発・製造も我が国にとって喫緊の問題と思われます。

このような時代だからこそ、当会の活動が、困難に立ち向かう皆様の知恵の一助となることを切に願っております。
今後とも、当会の目的を忘れることなくホームページのコンテンツの充実を図り、会員同士の情報交換、相互啓発や意見表明の場として発展するよう尽力する所存です。 何卒よろしくお願い申し上げます。

最後に会の運営を支えて頂いているコラムニストの方々、そして事務局の方々に深謝いたします。

2023年3月末日

一般社団法人 先見創意の会
代表理事  斎藤 達也

目次
おわりに

本年度より、本会の副代表を務めさせていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします。

さて、2040年にかけて、85歳以上高齢者の急増と、0~14歳人口および15~64歳人口の減少が同時進行します。85歳以上高齢者は、医療・介護・生活支援に対する包括的ニーズが高いため、これらサービス提供体制を構築すべく、地域包括ケアシステムの推進が現在図られています。

ただし、地域が抱える課題は、高齢者問題への対応だけではありません。昨今取り上げられているヤングケアラー問題、高齢の親が引きこもりの子どもを支える8050問題、親の介護と子どもの育児を同時に行うダブルケア問題など、様々な課題が顕在化しています。

ところで、現在の国・都道府県・市町村の体制は、高齢者、障害者、生活困窮者、子ども・子育て家庭など、対象者別の縦割り構造になっています。医療も同様に、医師は臓器別、リハ職は病期別(急性期・回復期・生活期)に分かれています。子ども・子育て支援を行っているNPO法人等の取り組みも、子供食堂などの食や居場所づくり、学習支援、アクティビティ支援、医療的ケア児への支援など、支援対象や内容が細分化されていて、各支援団体同士が、支援範囲を超えて連携している例は少ないのが実情です。

課題が単一であれば、こうした体制で対応可能かもしれません。しかし、これから求められるのは、「複合課題への対応」です。また、提供体制・支援体制には「包括性」「継続性」が求められることになります。また、これら課題を解決するためには、医療・介護専門職だけでなく、自治会・民生委員・社協・生協・商工会・民間企業など、多様な主体が有する力を総結集していく必要があります。ニーズの変化にどのように対応できるのか、こうしたパラダイムシフトに応えられるかどうかがこれから問われるわけです。

医療百論は、医療に関するテーマだけでなく、関連領域のテーマ(法律・新型コロナ・介護など)や医療を取り巻く環境に関するテーマ(政治・経済、社会など)を総合的に論じたものです。『医療百論2023』が、社会のなかでの医療の位置づけや果たすべき役割を再考するための一助となれば幸いです。

最後にコラムを執筆して頂いている先生方と事務局に深謝いたします。

2023年3月末日

一般社団法人 先見創意の会
副代表理事 川越 雅弘