自由な立場で意見表明を
先見創意の会

医療百論2022

コロナ禍を超えた先へ
コロナ危機で露呈した政治、経済、社会の構造的課題に迫る。 総勢27名のコラムニストによる68本ものコラムを一斉掲載。
はじめに

「医療百論2022」の発刊に際して

先見創意の会は、医療関係者や医療に関心のある一般の方々が個人として自由な立場で情報交換、相互啓発、意見表明を行う場を提供することを主たる目的として発足し、17年が経過しました。この間、様々な情報を提供するとともに、コラムニストや会員の皆様から頂いた貴重なご意見やご提案をホームページ上に掲載してきました。
先見創意の会を一般社団法人化し、新たに「医療と法」のセクションを加え順調に推移し一層の充実を図ることが出来たと思っています。多数の多種・多彩なメンバーがコラムニストを構成しており、内容も医療・福祉分野に限らず、政治・経済・法律・社会問題など多岐にわたっています。様式もエッセイ、意見、提案、調査報告、研究報告など様々です。
これらを例年通りに分野別に整理し直し発刊することになりましたが、時代の流れには逆らえず、本年度から電子書籍化を試みます。読者の皆様には興味を持って頂ける内容が盛りだくさんとなっており、是非ご活用頂ければ幸いです。

過去2年間「新型コロナ」の度重なる感染拡大に見舞われ、本年に入っても混乱状態が続いています。3年目を迎えた「新型コロナ」感染拡大状態ですが、この間我が国では3人目の首相が誕生し、それぞれの担当大臣の顔ぶれも変わり、首尾一貫した政策がとられているとは思われません。以前にも指摘したように、今後も発生しうるパンデミックに十分対応できる権限を持った独立した「統括組織」の必要性を感ずるのは私だけでしょうか?
一方「新型コロナ」に対応する医療関係者の精力的な活躍が評価される反面、ネガテブな評価も散見されます。特に、地域医療提供体制に中心的な役割を担う地域医師会組織は充分その役割を果たしたのでしょうか?今一度振り返って見つめ直してもらいたいものです。連日、感染症専門家がマスコミをにぎわしていますが、にわか専門家も続出し無責任な発言を繰り返し社会の混乱を助長しています。受け売りの情報ではなく「科学的な根拠」を持った情報が独立した「統括組織」から発せれるような仕組みの構築が待たれます。

最後になりますが、貴重なコラムをボランテアで執筆して下さったコラムニストの皆様に厚く感謝申しあげるとともに電子書籍化の試みをご理解いただきますようにお願い申し上げます。

2022年3月末日

一般社団法人 先見創意の会
代表理事  青柳 俊

目次
おわりに

また1年が経過し、「医療百論」は17冊目の刊行となりますが、今回からはWeb化される事になりました。
もう数年で20年を迎える事になり、継続は力なりをまさに示していると思います。

2019年からの新型コロナウィルスによるパンデミックは、1~2年で収束するとの大方の予想を覆しました。この冬はオミクロン株の大流行により、感染者の累計は全世界で4億人を突破しました。
この2年間でワクチンの開発・接種、治療薬の開発と、周りの状況は大きく変わりました。しかし著効を示すまでには至らず、感染対策の為の人流抑制により、長期間の行動制限を余儀なくされています。
パンデミックによる経済の停滞は一時回復傾向にありましたが、再び停滞に向かっています。
それにもまして、人同士のコミュニケーションが制限された事により社会の閉塞感は一段と増し、大人だけでなく若者や子供への影響も計り知れないものとなっています。

今回のパンデミックで、2つの面が大きな問題だと考えます。1つは経済格差の拡大、もう1つはコミュニケーションの形の変化です。
この2年間で世界的に貧富の差は著しく拡大し、富む者は益々富み、貧しい者は益々貧しくなりました。その原因としては、IT化の急速な進行が情報格差をより一層拡大させたことがあげられます。情報格差イコール経済格差になっています。
ワクチン接種の面では、mRNAワクチンの9割が先進国で使用されましたが、発展途上国はそれ以外のワクチンでさえ入手出来ず、アフリカ諸国では未だに接種率が10%に達していません。一方でイスラエルでは何と4回目の接種が始まっています。
国際的なワクチンファンドのコバックスも機能的に運営されているとは言えません。
発展途上国の接種が進まない現状は、発展途上国からの更なる変異株の出現を危惧させます。国際的な人の往来が活発な時代の今、新たなパンデミックを先進国に引き起こす可能性が考えられます。
経済格差の拡大はとどまるところを知りません。
コミュニケーションの形の変化は全世代に大きな影響を与えています。
赤ん坊はマスクをした大人たちに囲まれて、表情を読む訓練が出来ません。
子供達は、リモート授業等では集団生活で学ぶ人間関係も学ぶ事が出来ません。
大学生は、卒業後社会に出てから重要になる友達関係を構築出来ません。
以前から言われているコミュニケーション能力の欠如が、パンデミックで益々悪化していると考えます。知りようもありませんが、数十年後にはそれが当たり前の社会になっているかもしれません。

このパンデミックの中、衝撃的なプーチンによるウクライナへの侵攻は、国際社会のコミュニケーションの分断化を一層進めるのではないかと危惧します。戦争の早期終結が望まれます。

我々はより一層の他者への思いやり、正しい情報の共有に心がけなければと考えます。
その一助として『医療百論2022』がお役に立てることを願います。

最後にコラムを執筆して頂いている先生方と事務局に深謝いたします。

2022年3月末日

一般社団法人 先見創意の会
理事  斎藤 達也