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家族介護の現状と課題 ーその3ー

川越雅弘 埼玉県立大学大学院・研究開発センター 教授

1.はじめに

介護保険制度は、家族等が担ってきた介護を社会全体で支えること、すなわち「介護の社会化の実現」を一つの目的として創設された。確かに、介護保険制度導入により、公的サービスによる支援体制は拡充してきたものの、在宅で介護を受けている高齢者のうち主介護者が親族である者の割合は約7割を占めるなど、未だ家族が大きな役割を担っている状況にあるが、その実態は明らかとなっていない。

前稿では、2019年の「国民生活基礎調査」をもとに、家族介護の現状を整理した。最終回の今回は、介護保険制度開始当初の2001年の状況との比較を通じて、家族介護の変化をまとめるとともに、課題と対策について私見を述べる。

2.家族介護の状況はどう変化したか(2001年と2019年の比較)

1)要介護者のいる世帯
要介護者等のいる世帯の割合をみると、「単独世帯」は12.6ポイント、「核家族」は7.1ポイント、「夫婦のみ世帯」は3.9ポイント増加しているのに対し、「三世代世帯」は19.7ポイント、「その他世帯」は3.8ポイント減少していた(表1)。

2)主介護者の状況
主介護者の同居率をみると、2001年の71.1%から2019年には54.4%に減少していた。

ここで、主介護者の要介護者等との続柄をみると、最も増加していたのは「不詳」で10.0ポイント、次いで「別居の家族等」6.1ポイント、「事業者」2.8ポイントの順であった。一方、最も減少していたのは「同居の子の配偶者」で15.0ポイント、次いで「同居の配偶者」2.1ポイント、「その他」2.0ポイントの順であった(表2)。

3)同居の主介護者の特性
同居の主介護者の男性の割合をみると、2001年の23.6%から2019年には35.0%に増加していた。
次に、年齢をみると、最も増加していたのは「80歳以上」で10.0ポイント、次いで「70代」5.0ポイント、「60代」4.6ポイントの順であった。一方、最も減少していたのは「50代」で9.8ポイント、次いで「40代」7.1ポイント、「40歳未満」2.7ポイントの順であった(表3)。

4)1日の平均的な介護時間
同居の主介護者の1日当たりの平均介護時間をみると、最も増加していたのは「必要な時に手をかす程度」で10.0ポイント、次いで「その他」3.1ポイント、「2~3時間程度」1.8ポイントであった。一方、最も減少していたのは「ほとんど終日」で8.1ポイント、次いで「不詳」6.1ポイント、「半日程度」0.6ポイントの順であった(表4)。

2001年と2019年の家族介護の状況を比較した結果、
① 要介護者のいる世帯をみると、三世代世帯が大幅に減少する一方で、単独世帯・夫婦のみ世帯・核家族世帯が増加していた。
② 主介護者が同居する割合は、2001年の71.1%から54.4%に減少していた。
③ 主介護者の続柄をみると、「同居している子の配偶者」が大幅に減少する一方で、「別居の家族等」の割合が増加していた。
④ 同居の主介護者の男性の割合をみると、2001年の23.6%から35.0%に増加していた。
⑤ 同居の主介護者の年齢をみると、80歳以上が大幅に増加する一方で、40~50代の割合が減少していた。
⑥ 同居の主介護者の1日当たり平均介護時間をみると、「ほとんど終日」が減少する一方で、「必要なときに手をかす程度」が増加していた。
などがわかった。

3.これまでの分析から見えてきたこと

1)家族介護の状況の変化から見えてきたこと
要介護者等のいる世帯は、三世代世帯が減少し、単独世帯や核家族世帯が増加するなど、世帯の規模が縮小していることが明らかとなった。また、①主介護者の同居の割合が減少している、②「同居の配偶者」や「子」による介護の割合は5割弱で変化は少ない、③「同居の子の配偶者」による介護が大幅に減少する一方で、「別居の家族等」による介護が増加しているなど、主介護者の様相が変化していることも明らかとなった。

世帯規模の縮小、同居割合の減少により、今まで同居家族(配偶者・子・子の配偶者)により担われていた介護が、別居の家族や同居の未婚の子などにシフトしている可能性が、また、同居の子の配偶者による介護の減少が、40~50代の主介護者の割合の減少や介護時間の短縮化につながった可能性が示唆された。

2)要介護度別にみた家族介護の負担状況から見えてきたこと
前稿で述べたように、1日当たりの介護時間を要介護度別にみると、要支援1~要介護2では「必要なときに手をかす程度」が、要介護3以上になると「ほとんど終日」が最も多くなっていた。また、介護内容を要介護度別にみると、要介護2までは生活援助中心であるが、要介護3から、「入浴」「排泄」といった高負荷・高頻度の介護が必要になっていた。

筆者らが行った研究により、要介護2・3レベルから在宅生活が困難化すること、特に認知症の人でその傾向が強いことがわかっている(参考文献1)。また、在宅介護実態調査から、要介護3以上では、①「認知症状への対応」と「夜間の排泄」に対して主介護者の不安が大きいこと、②訪問系サービスの利用回数の増加とともに、認知症状や夜間排泄に対する不安が軽減すること、③移送サービス(介護・福祉タクシー等)」や「外出同行(通院等)」へのニーズが高いことが示されている。

したがって、認知症高齢者を含めた中重度の要介護者とその家族を如何に支えるかがポイントとなる。

4.中重度の要介護者とその家族を如何に支えるか

中重度者の在宅生活を支えるための対策の一点目は、介護サービス提供体制の整備の促進である。訪問系サービスの利用回数が増えると、認知症状や夜間排泄への不安が軽減する傾向にあることから、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護などのサービスの拡充が必要と考える。ただし、これらサービスは要介護度に応じた包括払いとなっているため、高頻度の支援を必要とする利用者(特に軽度者)が多い事業所だと経営的に厳しくなる。したがって、利用者ニーズへの対応状況に応じた報酬のあり方を再考し、これら地域密着型サービスの拡充を促す必要がある。

二点目は、認知症に対するケアやケアマネジメントの質の向上である。特に、施設や居住系への入所・入居を決定するキーパーソンとマネジメント担当者間のコミュニケーションは重要となる。認知症では、要介護2・3から、常時の徘徊、一人で出たがる、幻視幻聴、暴言暴行、大声を出す、介護に抵抗するなどの周辺症状の出現率が高くなってくる。こうした事象だけをとらえ、事象を生じさせている原因や背景もおさえないまま対策を考えると、医療機関につなぐ、施設に入れるなどの対症療法的対策に陥りやすい。もし、こうした周辺症状が、「本人の不安」から生じていることだとしたら、その不安に対応する方法を本来考えるべきである。提供体制や地域の支援体制の整備とともに、こうした地域資源を、本人の困りごとを生じさせている根本原因の解決に向けて活用するといった視点と方法論を身につけるためのマネジメント教育を強化する必要があると考える。

また、本人だけでなく、家族の不安や悩み、困りごとを聴くことも重要である。ただし、こうした寄り添い型支援は、課題解決を得意とする専門職はそれ程得意ではない。本人が心を許せる人、同じ境遇の人の方が適していると思われる。認知症の人と家族の会などが行っているような寄り添い型の支援(集いの開催・電話相談・会報の発行など)と、専門職による課題解決型の支援が連携し合って、認知症本人とその家族をトータルで支える仕組みを構築していく必要がある(寄り添い型支援を行っているNPO法人等を支援する体制を強化するなど)。

三点目は、地域資源を活用した支援策の充実である。要介護3以上だと歩行機能はかなり低下している。また、要介護高齢者の場合、複数の疾患を抱えていることも多い。そのため、定期的に通院する必要があるが、通院同行に対する家族の負担は大きい。在宅介護実態調査で、要介護3以上で外出同行に対するニーズが高かったことは、こうした実態を反映したものと考えられる。現在、地域支援事業に位置付けられた生活支援体制整備事業で、地域資源の開発が進められている。デマンド型交通サービスを提供する企業と連携して、買物や通院に対する移動手段の確保を図るといった自治体の例もみられる。民間企業と自治体が連携・協働しながら、中重度者の通院手段を確保していくことも、家族負担軽減につながる有用な対策と考える。

本稿は、在宅で療養する要支援・要介護高齢者に対する家族介護の実態を明らかにしたものである。本人が望む生活や暮らしの実現に向け、家族介護支援策のあり方、これら支援策を有効活用することができる人材育成のあり方の両面を再考するための一助になれば幸いである。

※本稿の一部は、埼玉県立大学研究開発センタープロジェクト「多主体協働による地域課題解決を推進するための体制・方法に関する研究~支援者支援に焦点を当てて~」によるものである。

【参考文献】
1.川越雅弘,南 拓磨(2020):一人暮らし認知症高齢者の出現率および生活状況の実態-介護保険データより―、老年精神医学雑誌、31,p. 460-466.

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川越雅弘(埼玉県立大学院教授・研究開発センター教授)

◇◇川越雅弘氏の掲載済コラム◇◇
◆「家族介護の現状と課題-その2-」【2021年8月10日掲載】
◆「家族介護の現状と課題-その1-」【2021年6月29日掲載】
◆「地域包括ケア/地域づくりに向けた当大学の取組(2)」【2021年2月23日掲載】
◆「地域包括ケア/地域づくりに向けた当大学の取組(1)」【2020年12月15日掲載】
◆「新型コロナ感染拡大が介護・高齢者支援に及ぼした影響とは(2)」【2020年8月4日掲載】

☞それ以前のコラムはこちらから

2021.11.30