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地域包括ケア/地域づくりに向けた当大学の取組 -その1-

川越雅弘 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

1.はじめに

人口減少・超高齢化が進むなか、地域包括ケア提供体制の構築が重要な政策課題となっている。ただし、医療・介護需要の高い後期高齢者が急増する都市部と、高齢化の進展は緩やかだが、労働人口が大幅に減少する地方では置かれた状況が大きく異なる。そのため、市町村には、地域特性や課題を適切に把握した上で、地域課題の解決策を展開するといった「地域マネジメント力」の強化が求められることとなる。しかしながら、①地域課題を市町村自身があまり把握できていない、②多職種・地域住民を巻き込んだ形での課題解決策の推進を行える人材が少ないなど、課題が山積している状況にある。  
こうした状況を改善すべく、当大学では、市町村職員を含む地域包括ケア関係者の課題解決力(=マネジメント力)向上に向け、様々な取組を行ってきた。
本稿では、これら取組の概要と展開例を紹介するとともに、こうした取組を通じて感じた大学の役割・機能について私見を述べたい。

2.取組概要

1)人材育成の対象とポイント
筆者が所属する研究開発センターでは、目指す姿を「人材の育成を通じて、地域・社会に貢献すること」とした上で、育成対象を、①市町村職員、②各種コーディネーター(生活支援、在宅医療)、③医療・介護職とするとともに、これら人材の育成目標を「地域包括ケアに関する業務遂行力の向上(ケース/事業/地域に対するマネジメント力の強化)とした。その上で、これを実現するための課題を、①本人の業務遂行力を高めること、②業務が遂行しやすい環境を整備することとした(図1参照)。

2)人材育成のための手法について
マネジメント力を高めるためには、①国の施策の動向や方向性の理解、②マネジメントに関する実践力を高める必要がある。そこで、これらを強化するための2種類の集合型研修(off-JT)を設けた(シンポジウム及びセミナー)。
ただし、学んだ方法論を、地域課題の解決のために、実際に応用出来なければ意味がない。そこで、個々の市町村の解決したいテーマやそのレベルに応じて、課題解決方法を指導・助言するためための仕組み(OJT)を導入した。
Off-JTとOJTを通じて、方法論を学ぶことはできるが、課題解決を具体的に図っていくためには、課題解決策を有する多様な人材をネットワーク化しておく必要がある。そこで、地域課題を知っている人と多様な解決策を有する人をマッチングするための会議体(ネットワーク会議)を設けた(図2参照)。

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3.地域マネジメント力強化に向けた更なる取組:学内体制の明確化

現在、県内外の複数の市町村を支援しているが、こうした取組を更に広げていくためには、学内体制の明確化が必要と考えた。そこで、本年9月、研究開発センター内に「地域包括ケアマネジメント支援部門」を設けた。
なお、同部門が有する機能は、
①データ分析支援(既存データのデータベース化及び分析資料の提供等)
②事業マネジメント支援(オンラインでの無料アドバイス)
③地域づくりに関わっている関係者や民間企業との連携支援
④国の施策動向に関する情報提供
の4つである。

4.おわりに

今回は、地域マネジメント力強化に向けた当大学の取組の概要を紹介した。次回は、ネットワーク会議による地域課題の解決例を紹介するとともに、これら取組を通じて感じた大学の役割・機能について私見を述べる。


川越雅弘(埼玉県立大学大学院 教授)

◇◇川越雅弘氏の掲載済コラム◇◇
◆「新型コロナ感染拡大が介護・高齢者支援に及ぼした影響とは(2)」【2020年8月4日掲載】
◆「新型コロナ感染拡大が介護・高齢者支援に及ぼした影響とは(1)」【2020年7月21日掲載】
◆「介護保険事業計画の現状・課題と改善策(2)」【2020年2月11日掲載】
◆「介護保険事業計画の現状・課題と改善策(1)」【2020年2月4日掲載】

☞それ以前のコラムはこちらから

2020.12.15