自由な立場で意見表明を
先見創意の会

大丈夫なのか、「日本ブランド」大成建設の施工不良問題

楢原多計志 (福祉ジャーナリスト)

海外でも知られている日本企業の不祥事が相次いでいる。「スーパーゼネコン」の1つ大成建設が札幌市で建設中の高層ビル工事で施工不良とデータ改ざんが発覚し、同社は自費でビルを建て直すハメになった。不祥事のニュースは外国通信社から配信され、海外でも信用が失墜する恐れも。

▽自費でビル再建

経緯を振り返ってみよう。3月16日、大成建設の相川善郎社長が記者会見し、NTT都市開発から発注された「(仮称)札幌北1西5計画」複合施設(地上26階・地下2階建て)工事で施工不良が見つかったと発表した。

今年1月、NTT都市開発の担当社員から「鉄骨柱を接合するボルトの穴がズレており、おかしい(計画と違っている)のではないか」と指摘を受けたことが不祥事発覚の発端。大成建設が全数調査したところ、鉄骨部分で77カ所、コンクリート製の床スラブでも245カ所で精度不良が見つかった。

建築基準法などの法令違反はなかったものの、大成建設がNTT都市開発と取り交わした限界許容値を超えており、大成建設は15階まで組み立てた鉄骨を取り外して自費でビルを立て直すことを提案し、NTT都市開発は承諾した。

だが、不祥事はこれにとどまらなかった。NTT都市開発の指摘を受けた後、大成建設がデータを改ざんした虚偽の報告書をNTT都市開発と工事監理会社の久米設計(東京)に提出していたことが判明。施工不良と虚偽報告のダブル不祥事となり、2024年2月竣工、同年4月開業の予定は2年余遅れる見通しとなった。

4月17日、大成建設は2023年3月期の決算見通しと役員処分を発表した。ビルの建て直し費用と工期の遅れによる違約金として総額で約240億円の損出を計上する一方、相川善郎社長が役員報酬50%、取締役(社外除く)30%、執行役員20%、それぞれ3カ月間返上する。

施工不良に関わる損出のほか、建築資材の価格高騰による建設コストの増加や、競争激化による受注不振などがあり、23年3月期の純利益予想を670億円から471億円に下向修正した。

▽工期を最優先

こうした大成建設の不祥事をどう受け止めるのか─。

「前代未聞の不祥事だ」と深刻に受け止めているのは、総合商社の役員だ。

「大成と言えば、鹿島(建設)、大林(組)、清水(建設)、竹中(工務店)と並ぶ『スーパーゼネコン5社』の1つ。海外展開にも積極的で日本企業のイメージダウンになりかねない」と話した。ロイター通信やAP通信などの外国メディアも不祥事を報じた。

ここ数年、自動車、機械、電機などの著名メーカーの不正検査が次々に発覚している。今年に入ってもトヨタグループのダイハツの不正検査や近畿日本ツーリストの新型コロナワクチン接種の過大請求などが明るみになっており、「日本ブランド」の信頼失墜を懸念する声が高まっている。

「建設業界の実態が如実に表れている」と話すのは北海道や東日本で公共事業やビル建設を得意とする中堅ゼネコンの元経営者。今回の不祥事の大きな要因として品質より工期厳守を最重視する企業体質を挙げた。背景に慢性的な人手不足があると指摘する。

「工事の遅れは受注の機会を失うことにつながる。本社に限らず、現場でも工期の厳守が最優先され、ガバナンスが機能しなくなっている。品質に重大な問題があっても誰もやり直しを言い出せない雰囲気になっているようにみえる」と懸念している。

また「工事を監理する会社がゼネコンと『なあなあの関係』にあり、余計な指摘やアドバイスは極力しないケースがあるのではないか」とも話した。

久米設計は3月16日、「自主記録等をもって確認するという弊社の監理業務内容に照らすと、今回のような自主検査記録に虚偽の記載がされた場合、弊社の監理者がその施工不良を発見するのは極めて困難であったと考えております」などとの見解を発表し、責任の不在を強調しているが、では、何を、どう監理しているのか、第三者には分かりにくい。

医療・介護の現場はどうだろう。忙しさにかまけて「医療の質」や「介護の質」が二の次になっていないだろうか。

ーー
楢原多計志(福祉ジャーナリスト)

◇◇楢原多計志氏の掲載済コラム◇◇
◆「遅い!『コロナ病床確保金』検証」【2023.1.31掲載】
◆「最低賃金改定」【2022.10.4掲載】
◆「改めて「かかりつけ医ってなんだ?」【2022.6.14掲載】
◆「増収増益というが」【2022.3.1掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。

2023.05.16