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増収増益というが

楢原多計志 福祉ジャーナリスト

大手製薬会社が発表した2021年3月期の業績見通しによると、国内トップの武田薬品工業はじめ、大半が売上高や営業利益を伸ばしている。コロナ禍や円安で業績不振にあえいでいる他業種からは羨む声が聞こえそうな勢いだが、製薬会社のトップは「海外の販売が頼りで国内はサッパリ…」と浮かない表情。2022年度診療報酬改定で薬価のマイナス改定が決まった。また大衆薬の販売額は2年連続してダウン。主要製薬会社の海外依存が加速しそうだ。

減収は1社のみ

武田薬品工業3兆5100億円(前期比+9.8%)、大塚ホールディングス1兆4983億円(昨年12月決算、+5.3%)、アステラス製薬1兆3230億円(+5.9%)、第一三共1兆300億円(+7%)。売上高が1兆円を超える国内製薬会社は軒並売り上げを伸ばし、営業利益も大きく回復している。 

売上高1000億円を超える国内製薬会社15社の中で減収となるのは塩野義製薬1社のみ。主力の抗うつ治療薬の後発品参入やロイヤリティ収入減などが響いた。また新型コロナ経口薬の21年度内販売が困難となったことも(2月17日時点、臨床試験中)影響したようだ。

国内割合は2割

大手薬品会社執行役員は国内販売の将来性について「今のような診療報酬改定が続く限り、好転は望めない」と悲観的だ。22年度改定は全体改定マイナス0.94%。うち医療機関の人件費などになる診療報酬本体はプラス0.43%とされ、その引き上げ財源に薬価引き下げ(マイナス1.37%)が充てられることに不満を隠さない。

そして「国内での売り上げが伸びなければ、海外に活路を求めるしかない」と言う。実際、医療用医薬品の売り上げ予想をみると、アステラス製薬や第一三共、エーザイ、塩野義製薬は前期比で減収としている。

2019年、武田薬品工業は約6兆円(当時)をかけてアイルランドのシャイア―を買収した。希少疾患治療薬などの開発販売が狙い。結果として売上高で世界トップ10入りを果たした。

また売れ筋の大衆薬や生活習慣病治療薬を他社に売却し、得た資金を海外展開に投じている。総売上高に占める国内割合は20%程度に過ぎない。後発品メーカーも海外展開を急いでいる。

国際信用の失墜も

当たり前のことだが、患者で言わせれば、医薬品は安全性を前提に、効果がより高く、より安い医薬品が最も望ましい。

安価という点では後発品だ。数量ではシェア8割に達している。だが、小林化工や日医工などの後発品メーカーによる不正製造や杜撰な管理が発覚して信頼が失墜した(医療現場には「最初から信頼できない」との声もあった。)

小林化工のケースのように社長を含めて会社ぐるみで不正を行った場合、行政処分として業務停止では信用回復という根本的な解決にはなり得ない。責任者への刑事罰適用(賛否をめぐる論議が起こりそうだが)など厳罰に処す方向で法整備すべきだ。進出した外国でこのような事態を招いたら業界全体が国際信用を失いかねない。

土台から見直す

22年度薬価制度見直しでは、革新的な医薬品のイノベーション評価として新薬創出等加算や先駆的医薬品などの有用性加算が見直されたが、現場の反応は鈍い。

「加算の要件が複雑になる上、ベースの薬価そのものが低く、加算を算定しても大幅な収益増には繋がらない」などと厳しい意見が出ている。診療報酬もそうだが、薬価をベースから見直すべきではないか。いくら繕っても土台が腐っていては、どうにも…。

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楢原 多計志(福祉ジャーナリスト)

◇◇楢原多計志氏の掲載済コラム◇◇
◆「『幽霊病床』のレッテル」【2021.10.26掲載】
◆「離職の隠れた要因ハラスメント」【2021.7.6掲載】
◆「どこが”科学的”なのか」【2021.3.16掲載】
◆「事実上、”訪問リハビリステーション”」【2020.12.1掲載】
「十人十色 要は・・・。」【2020.9.1掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。

2022.03.01