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先見創意の会

SUCCESSFUL AGEINGのすすめ

岡光序治 (会社経営、元厚生省勤務)

先進国における日本国民の幸福度は最下位との調査報告がある。

「幸福」の定義をhappinessではなくwell-beingとして、こうした報告を考え直すとそのまま素直に受け入れ難いようにも思えるが、病院や老人関係施設を訪れて、入所ないし通所の高齢者の顔を眺めると、総じて、楽しそうな顔には当たらない。

Well-beingしながら上手に歳を重ねる方法について考えてみたい。

〇上手に歳を重ねることに関わるファクター
人生後半期は、本来、その人生航路において得た知恵と経験を活かし人生をエンジョイする時期に位置付けられるはずである。日々の生活や人間関係の中で健康を保ち生き生きとし人生の喜びに輝いているはずである。自立し、自己決定しているはずである。現実の高齢者像は、しかし、健康面でも、外見でも、能力の面でも種々多様だし、総じて他への依存が強い傾向にある。

どのような性格や姿勢が、上手に歳を重ねる人とそうでない人とを分けるのであろうか?人生後半の健康とwell-beingに深い影響を与えるファクターとしては、肉体的能力のほか精神的な情緒や社会・生活環境が考えられる。

・遺伝的な要素
仮にご先祖様から病的要素を受け継いだとしても、本人の健康的なライフスタイルによってその遺伝要素の発現を抑え込んでいるケースは多々ある。
つまり、一般的に言えるのは、人生後半においては、遺伝的要素よりもライフスタイル、精神的情緒そして社会・生活環境的要素が重要なファクターとなる、ということである。

・経済的要素
経済的に安定であれば、より質のいい食事、レクリエーションやスポーツ活動、医療的サービスへのアクセスが比較的容易となり、健康的なライフスタイルを保ちやすい。また、買い物や移動の容易さ、レクリエーション活動や医療施設の利用の便利さ、住まい、高齢者にフレンドリーな近隣生活環境などをチョイスする範囲が広がる。

・社会活動と人間関係
家族、コミュニティーあるいは職場などにおいて「かかわり」を持つことが上手に歳を重ねる秘訣といえる。大切なことは、「かかわり」を認識し、周りも許容すること。そこに、愛情と思いやりの人間関係が伴うと一層効果的である。注意すべきは、その「かかわり」のあり様が変化することである。変化を想定し、変化と向き合い柔軟に対応する知恵と覚悟を養うべきである。それと、仕事から引退した際、隙間をつくらないことである。

・積極的な精神的姿勢
自立して生活し、自己決定できている人は、概して、健康的である。
自宅を離れなければならない状況になった時、通例、家族が次なる生活の場を決めることが多いが、事前に高齢者に説明し、決定過程に参加させ、納得を得るようにして混乱をできる限り回避していきたい。(社会的な環境整備が追い付かないきらいはあるが…)

愛情、とりわけ包容力は、精神的安定の基礎である。特に、家族関係を大切にし、係累の面倒を見、家族が困った事態に立ち至ったときに手助けしてあげるなどの姿勢が肝要である。してもらうのではなく、してあげる、姿勢である。

ストレスを持たないこと、そのために、愛情と笑いと満足・心の安らぎ―場合によっては、諦めーが不可欠である。

・身体活動と精神活動
身体活動(簡単なエクササイズなど)を毎日続けることが肝要。
同時に、考えること、頭を使うこと。学習、読書、仕事、レジャーを通して考え、頭を使うこと。これは、心的機能を良好に保ち、人生に横たわる困難にチャレンジする力と知恵を与えてくれる。
学びつつ、考えつつ、からだを動かす一挙三得の「手」と考えられるのは、草花を植え育て、あるいは、田畑に出て自らの手で種をまき、育て、収穫することである。

・食事、健康習慣
バランスのとれた、種類豊富な、栄養十分な食事の勧め。喫煙、過度な飲酒は厳禁。

・モチベーションの向上
以上のようなことを言うと、“わたしは年を取り過ぎている”、“もう体はガタガタ、到底できない”、“変われるはずがない”と返ってくる。しかし、健康なライフスタイルと積極的な姿勢を持つのに遅すぎるということはない。一挙にはできないが、少しずつ小さな変化を積み重ねることだ。自分流で。社会的には、高齢者をヘルシーなライフスタイルにするチャンスの場に引き出し、学ばせ、続けさせる、人と仕組みが必要である。

〇幸福度を高める方法
前野隆司先生(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所教授)の、心理学の立場からのご提案を紹介したい。「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」という4つの因子を意識すると幸せになる、というもの。
「やってみよう」因子は夢や目標を可視化し、ワクワクしながら取り組むこと。
「ありがとう」因子は①感謝を可視化する。今日一日感謝したことを3つ書いてから眠る、など。
②利他的行動をとる。対話、傾聴、許容が重要。ユーモア、冗談、笑いも。
「なんとかなる」因子。過去の転機やつらかったことを話し合うなどして、課題・悩みを可視化する。「なんとかなる」と思い込み、ポジティブな行動や表現を心掛ける。
「ありのままに」因子。ありのままに考え、行動する。背伸びしない。ありのままで付き合える仲間を持てるといい。

もう一つ。メタ認識を心掛ける。自分で自分の心の動きを監視し、制御する。カッカッしている自分や落ち込んでいる姿などを上から眺め、“ああ!怒っているな”とか、“いつものことながら”と自分を眺め、鎮める。                    

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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

◇◇岡光序治氏の掲載済コラム◇◇
◆「中浜万次郎に学ぼう!」【2022.8.23掲載】
◆「スマートエイジングの勧め」【2022.5.17掲載】
◆「脱炭素-日本のとるべき道【提案】」【2022.1.25掲載】
◆「日本は、2050年には、エネルギー自給国になろう!」【2021.10.19掲載】
◆「『夢の燃料』水素とは?」【2021.6.8掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。

2022.12.13