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先見創意の会

脱炭素―日本のとるべき道 【提案】

岡光序治 (会社経営、元厚生省勤務)

ゼロカーボンの及ぼす主なインパクトは、例えば、次のようにいわれている
(引用元:「脱炭素で変わる世界経済」井熊 均・その他著[日経BP] p.3~4)。

■生存・生産環境維持の問題
地球温暖化と気象変動は、気温上昇、台風の大型化、豪雨災害の激増、水面上昇などをもたらし、世界的に問題となっている。温暖化の原因は、人類が排出するCO2にあることは疑いの余地がない。温暖化に対応しなければ、地球は住めなくなる。
■経済問題
カーボンニュートラル、ESG(環境・社会・企業統治)投資の拡大は、株価や経営を直撃。また、炭素税や関税などの形で、「脱炭素にしなければ利益が出ない」という環境が作られつつある。
■エネルギー転換であり、産業革命である。
あらゆるものの生産・流通・廃棄に化石燃料が使われている中、エネルギー源のほぼすべてを再エネや原子力に作り変えなくてはならない。
■国家間の覇権闘争
ゼロカーボン時代のエネルギー源の中心は、太陽光・風力発電を中心にした再エネになる。中国は、太陽光と風力とを支配しつつある。これまで、米国が世界の覇権を握ってきた理由は石油の支配にあるが、「次代の石油」である太陽光を獲ることで、中国が米国に取ってかわるかもしれない。

<電源ポートフォリオ>
各国が、ゼロカーボンという目標を設定すると、CO2を出さずに需要を満たすことができるエネルギー源は、重ねて言うが、太陽光・風力を中心とした再エネしかない。このため、各国は必然的に共通の電源ポートフォリオを導入することになる。

事実、日本、中国、EU、国際機関のIEAが示した2050年頃の電源構成は、3分の2程度が再エネになっている。そして、太陽光や風力発電には出力変動がつきものなので、残り40%を出力調整が可能な電源で賄うことにしている。主には、既存技術の水力発電、原子力発電、バイオマス発電で、残りを新技術である火力発電+CCS、水素発電で、となっている。
(参考:CCS(Carbon dioxide Capture & Storage)とは、CO2を集めて大気中に拡散しないように固定する技術。CO2をフィルターや溶剤で集め、回収・貯留し、地中深くの砂岩層や岩盤の隙間に固定するもの。)

<電源毎のコスト>
2021年に政府が示した試算によると、2030年の事業用太陽光発電コストは8.2~11.8円/KWh、住宅用は8.7~14.9円/KWh、陸上風力は9・9~17.2円/KWh、石炭火力は13.6~22.4円/KWh、天然ガス火力は10.7~14.3円/KWhである。数字が示されていないが、原子力は最もコスト高のはずである。

太陽光発電コストに限ると、2000年代には35円/KWhだったが、2010年代に大幅に低下した。中国で見ると、施工費用の安い内モンゴルや青海などでは、約3.2~4.8円/KWhまで下がっている。

<ゼロカーボンを支える技術革新>
再エネのコストが下がり、最も安価な電源となったほか、太陽光発電と風力発電の変動を吸収する技術が進化している。上述したように、CCSと水素の本格的導入が現実のものになってきたほか、デジタル技術の発展による送配電の制御機能の向上、蓄電池の性能向上とコスト低減などである。素材生産の技術革新もある。

<日本の生き残り策>
2020年段階で中国の経済規模は日本の約3倍になっている。2030年頃には、5倍以上に達し、また、米国の経済規模を抜くだろうと予想されている。米中合算して比較すれば、日本の規模は10分の1以下になる。日本は、明らかに弱者である。弱者は、少ない資源と少ない強みを、限られた領域に集中的に投入しなければ生き残れない。

■日本が競争力を持っているモーター、蓄電池、素材、パワー半導体に集中すべきである。そして、規模を追うのでなく、事業の収益性に軸足を置き、利益を稼ぎ、それを一点集中して、技術を磨き、重ね、先行投資していくというモデルに転換する。

■エネルギーの覇権の要諦は、石油で学んだように、流通を抑えることにあり、① 太陽光発電や風力発電のような発電設備の供給、② 水素の流通が考えられる。
①は、中国が掌握しつつあるので、日本は②を他国と結束して強みを生かす。

なお、太陽光については、メガソーラーを拡大する国土の余地が少ないので、ルーフトップなど建物、自動車などと一体型のタイプに注力すべきだ。ペロブスカイト型は日本で誕生したことでもあり、育てるべきである。

■膨大な数の発電所が各国に作られ、巨大なQ&M(保守・管理)市場が生まれる。日本の電力会社の停電確率の低さなどを支えたQ&Mを一つの事業として切り出し、確立し、各国から受託するようにする。

■水素製造・流通では、日本は高いレベルの技術を持っているので、米国と組んで対応する。あわせ、ガスタービン技術を生かし、水素発電を実現する。

■日本が強みを持っているミドリムシなどの微細藻類について、国内企業を糾合して航空機燃料の分野に焦点を当て開拓する。

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岡光 序治(会社経営、元厚生省勤務)

◇◇岡光序治氏の掲載済コラム◇◇
◆「日本は、2050年には、エネルギー自給国になろう!」【2021.10.19掲載】
◆「『夢の燃料』水素とは?」【2021.6.8掲載】
◆「オゾンガス曝露により新型コロナウイルスを不活化した居住空間の確保策(提案)」【2021.2.9掲載】
◆「『食』が全CO2の3割占める」【2020.10.6掲載】
◆「地球システムのレジリアンスにかかる提案」【2020.6.16掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。

2022.01.25