自由な立場で意見表明を
先見創意の会

「食」が全CO2の3割占める

岡光序治 会社経営、元厚生省勤務

食は、人が生きていくための基盤である。そして、生産から流通、消費、廃棄にいたる「食のサプライチェーン」が形成されている。

一方、一連の流れから排出される温室効果ガスは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告した「土地関係特別報告書」によると、世界の人為起源CO2の28.8%を食料システムからの排出量が占めている。
(全CO2=520億t、農業(畜産を含む):49億t、土地利用による森林伐採:62億t、食品加工・保存・貿易など:39億t)

温室効果ガス削減の観点から、サプライチェーンの各段階に相応しい対応について考えてみる。

生産

〇農林水産業に伴う森林破壊と生物多様性の損失は避けねばならない。持続可能な農業や養殖、畜産を広める。とくに、熱帯雨林近辺で焼き畑農業に依存せざるを得ない人に焼き畑に頼らずに生活できる仕組みの整備を図るとともに、そのための経済システム作り及び現地指導のための資材提供と技術指導要員の養成確保・派遣・指導システムを構築する。(コロナ禍に伴う職業転換が不可欠だが、余剰人材をこうした分野に転換することを国策として進めるべき。)

〇原料別CO2排出量は、大豆肉1に対し、鶏肉1.7、豚肉2.8、牛肉12である。(日清食品ホールディングスの試算)
肉を植物タンパク質-持続可能なたんぱく質―に置き換えることで大きな削減効果がありそうだ。タンパク質供給の多様化を図る方策を官民挙げて探る必要がある。「代替肉」あるいは「培養肉」の市場が拡大傾向にあるが、多くの人の理解と納得の上でこうした方向をもっと進めるべきである。最先端技術の導入を積極化し、人々の嗜好に合うよう改良できるようにしたい。

〇EUは、昨年12月、「欧州グリーンディール」を発表し、その柱の一つに「Farm to Fork 」(食品のサプライチェーンを持続可能なものに移行する”農業から食卓まで“)戦略を打ち出した。30年までに全農地の25%を有機農業にするという目標を立てた。有機食品や環境や人権に配慮した食品は、サステナブルな食に欠かせない。日本農業もこうした方向性を国レベルで追及する体制にしなければならない。

流通

〇EUの委員長は、16日の一般教書演説で、30年に域内の温暖化ガスの排出量を1990年比で少なくとも55%減らすと表明した。具体的には、自動車のCO2排出規制を30年に向けて強化するほか、排出量取引制度を強化・拡充する。再生可能エネルギーの拡大とビルの省エネも排出減に貢献余地が大きいとみている。

〇各国が大胆な排出減に慎重な中、EUは高い目標を掲げる。環境技術の面からいうと、日本は高い水準にあるものの、削減策に大胆さを欠けば、技術の覇権をEUに奪われかねない。効果が期待できるハイレベルの削減目標を設定するとともに環境技術の向上を国あげて推し進め、世界に提供し貢献することが肝要である。

〇運搬の世界では、その主要な手段たる自動車について、排出規制の強化でCO2削減を進める。あわせて、水素ドローンによる配送システムの普及・定着に取り組む。そして、エネルギー全般について、自然エネルギー由来の水素エネルギーの普及を図ることとする。

消費

〇消費者が賢くなり、サステナブルの食を選択するよう、情報提供と教育を官民挙げて行う。

〇食品ロスを少なくする長期保存・腐敗防止に関する研究と実践を進める必要がある。とくに、容器包装について再考が必要だ。

〇生産→運搬・流通→消費に到るブロックチェーンを構築し、追跡可能な体制を作る。

廃棄

〇廃棄物処理法を改正し、IT時代に相応しく改正する。基本思想として、大型処理施設での集中処理方式を止め、分散小型化する。そして、CO2を排出しない処理技術の採用に努める。また、一廃と産廃の現行の区分について再検討する。

〇また、廃棄物処理のための溶融炉の建設が炉のメーカーの持ち回りで進められている。炉メーカーの既得権益化している。どうしても燃やしたいなら、既存の溶鉱炉を併用・活用するようにすれば足りる。なお、新規溶融炉建設費は数百億単位の経費が掛かるところ、CO2を排出しない加水分解方式であれば数億単位で済む。この事実を多くの人に知ってもらいたい。

〇消費者には、分別をより細かくすることを義務付け、分別収集の徹底を図り、再利用が容易に進められる体制の確立につなぐ。なお、プラスチックゴミは、加水分解方式であれば、元の石油原料に近い形に戻し燃料として再利用でき、ゴミのかたちで流出させないで済む。

〇消費から廃棄までのブロックチェーンを作り、追跡可能な体制にする。そして、生産から消費までのチェーンに繋ぎ、一貫した追跡が可能なシステムを作る。(IOTの時代、IOT技術をフル活用すれば、実現可能である。)排出ルール違反のケースには、排出元及び運搬・処理業者全員から応分の反則金を徴収することにすべきである。


岡光序治(会社経営、元厚生省勤務) 

2020.10.06