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新型コロナワクチンについて<その6>~ワクチンの効果 & 誤情報に注意~

三澤多真子 医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長

東京都小金井市では4月19日から医療従事者への新型コロナワクチンの接種を開始、4月26日から高齢者接種が開始、さらに6月21日から一般の接種が開始されております。

6月27日の時点での接種率は、医療従事者1回目94%、2回目87%、高齢者1回目88%、2回目63%、一般1回目2.4%となっています。小金井市は多摩地区で最も接種が進んでおり、全国的にみても最も進んでいる自治体の一つです。

今回はワクチンの実際の効果と課題を見ていきます。またこれから接種を受ける若い世代の方々は、インターネットやSNSの誤情報を見て不安に感じたり、接種を躊躇なさったりしているかもしれません。正確な情報はどこを見たらいいかもご紹介致します。

1.ワクチンの効果と課題

(1)小金井市の状況
現在日本で使われているファイザー・ビオンテック社、モデルナ社(武田薬品工業供給)のmRNAワクチンは、ウイルスの感染をおさえる「感染予防効果」、ウイルスに感染しても病気を発症するのをおさえる「発症予防効果」、重症化するのをおさえる「重症化予防効果」がいずれも90%以上で、なおかつ安全性も高いという、非常に優れたワクチンです。

小金井市では冒頭でご紹介した通り、高齢者の接種は完了が見えてきています。市内の感染状況はどうなっているのでしょうか?

 

図1をご覧ください。少なくとも1回ワクチンを接種した高齢者が40%を超えた5月23日の週から、60歳以上の感染者が0~1人/週とほとんど出なくなっています。医療機関でのクラスター発生も4月末から報告がありません。一方、10歳未満~50代は変動しつつ引き続き感染が続いています。ワクチンの効果がはっきり出ていると言えると思います。大変希望がもてる結果ですね。

(2)海外の状況

①イスラエル  
16歳以上へのワクチン接種がいち早く進んだのはイスラエルです(図2)。ファイザー・ビオンテック社のワクチンを2回接種した方が人口の60%を超えた同国では、感染者が激減し、行動規制を解除し、マスクの着用義務もなくなりました。ところが最近感染者が増えてきました(図3)。その多くが変異ウイルスデルタで、主にワクチンを接種していない子どもたちや海外から帰国した方々などが感染しています。屋内でのマスク着用が再度義務づけられ、12~15歳の接種を急ぐ方針です。

②イギリス 
イギリスは感染者数・死者数が大変多かったため、2回目接種までの間隔をのばし、多くの国民にまずは1回接種するという戦略をとりました。感染者数は激減しましたが、最近再拡大してきています(図4)。1回では予防効果が不十分であること、接種していない方の感染、デルタ変異ウイルスの流行などが原因と考えられています。イギリスではファイザー・ビオンテック社とアストラゼネカ社のワクチンが使用されています。ファイザー・ビオンテック社のワクチンはデルタにも効果が認められていますが、アストラゼネカ社のワクチンはデルタでは効果が下がることも一因と考えられます。

この他、アメリカでも、最近新型コロナ感染で亡くなっているのはほぼワクチン接種をしていない方であることが報告されています。

このような海外の状況を見て言えることは、(ⅰ)広い世代でなるべく多くの方が規定の接種回数を完了させることが感染収束に重要であること、(ⅱ)その前に感染対策を緩めると感染が再拡大してしまうこと、(ⅲ)ワクチンを接種していれば万が一感染しても重症化しなくてすむこと、です。

2.誤情報に注意

インターネットやSNSでワクチンの誤情報が蔓延しています。信頼できる情報源と正しい情報をお伝え致します。

(1)おすすめの情報サイト
こびナビ:信頼できる専門家の先生方がわかりやすく解説してくださっています。Q&Aがまとまっていておすすめです。動画や、インスタグラムでのライブもあります。
   
コロナワクチンナビ:厚生労働省のサイトです。正しい情報が確認できます。

コロワくんの相談室:LINEボットが質問に答えてくれます。とても使いやすくわかりやすいので是非友達登録してみてください。
   
河野太郎大臣ブログ「ワクチンデマについて」:現在出回っている誤情報について解説してくださっています。こびナビ監修です。

(2)よくある質問や誤情報
mRNAワクチンについてよく聞かれる質問や誤情報を一問一答形式でまとめておきます。詳細は上記おすすめサイトをご参照ください。

Q1.mRNAワクチンを打つと自分の遺伝子に組込まれるのではないか?
A1.組込まれません。 mRNAはすぐに分解され、体内に残りません。

Q2.将来何がおこるかわからないので心配です。
A2.科学的にもこれまでの調査からも長期的な副反応は想定されておりません。

Q3.ワクチン接種後に亡くなった方がいると聞いた。
A3.ファイザー・ビオンテック社、モデルナ社のワクチンの「接種が原因」で亡くなった方はこれまで一人もいらっしゃいません。「ワクチン接種が原因で亡くなる」のと、「ワクチン接種後に亡くなる」のは全く意味が異なります。後者にはたまたまそのタイミングで別の原因で亡くなったということがあります。

Q4.ワクチン接種したネズミが2年で死んだと聞きました。
A4.ネズミの寿命は2年です。

Q5.アナフィラキシーがこわい。
A5.頻度はごく稀です。1回目の新型コロナワクチン接種で重いアレルギー反応が出た方以外は、他の原因でアナフィラキシーが出た方でも接種できます。アナフィラキシーの90%以上は接種30分以内に出ることがわかっているので、これまで重いアレルギー反応が出たことがある方は30分間接種施設にいていただきます。たとえおこったとしても適切な対応で全員回復しています。

Q6.熱や倦怠感が出るのが嫌だ。
A6.コロナに感染するほうがよほど有害です。命にかかわることもあれば後遺症が残ることもあります。軽症・無症状でも隔離が必要となります。ワクチンの副反応は長くても数日以内におさまります。若者のほうが副反応が強く出やすいですが、免疫機能が元気な証拠で、その分免疫もしっかりつきます。

Q7.解熱鎮痛剤は飲んでいいですか?
A7.痛み、頭痛、発熱がつらい時は我慢せずに服薬して構いません。種類はなんでも構いません。熱が出ても辛くなければ薬は飲まなくて構いません。あらかじめ飲むのはおやめください。

Q8.不妊になると聞いた。
A8.なりません。卵巣に蓄積しません。妊娠中でも接種できます。

Q9.授乳中ですが接種できますか?
A9.問題なく接種できます。母乳に移行した抗体で赤ちゃんも守ることができます。

Q10.漠然と心配です。
A10.ワクチン接種しないことによる感染リスクや社会・経済活動の低迷のほうが明確に心配です。

Q11.抗体依存性増強現象(ADE)がおきないか?
Q11.おきません。ADEがおこったという報告はありません。

Q12.若者は重症化しないから接種しなくてもいいのでは?
A12.高齢者より重症化率が低いというだけで、若者でも重症化する方もいらっしゃいます。亡くなった方、倦怠感・呼吸困難感・味覚嗅覚障害・脱毛等の後遺症で苦しんでいる方もいらっしゃいます。接種をお勧めします。

Q13.子どもは大人からうつされているだけだし重症化しないから接種の必要はないのでは?
Q13.子ども同士の感染が増えています。子どもでも2,000~3,000人に一人の頻度で多系統炎症性症候群(MIS-C)といって多臓器に炎症がおこって重篤化することがあります。海外では、亡くなったり、足を切断するなどしたお子さんもいます。軽症でも隔離のために親と離れて入院することもあり、つらい思いをしています。ワクチン接種をしなければ今の感染対策を続けていくしかなく、行事もできないままになってしまいます。子どものメンタルヘルス上もよくありません。接種できる年齢であれば接種をお勧めします。

Q14.効果がいつまで続くかわからない。
A14.6か月間は十分な効果が期待できることがわかっています。それ以上は現在調査中ですが、少なくとも1年間は効果が期待できるとみている専門家が多いです。かりに将来追加接種が必要になっても、一度免疫がついていれば追加接種で十分抗体があがることが期待できます。

Q15.変異ウイルスにも効きますか?
A15.mRNAワクチンは現在問題となっている変異ウイルスにも十分な効果があります。

Q16.1回接種ではだめですか?
A16.ファイザー・ビオンテック社のワクチンは1回接種の3週間後で発症予防効果は50%です。ファイザー・ビオンテック社、モデルナ社のワクチンともに2回接種の2週間後に発症予防効果が約95%となります。免疫がしっかりつくのは2回接種の2週間後です。

Q17.5Gに接続される、磁気をおびる。
A17.そのような事実はありません。

3.最後に

皆さん自粛生活にもいい加減疲れたのではないでしょうか? ワクチンは、防戦一方だったコロナとの戦いに現れた唯一にして最強の武器であり希望です。コロナを収束させ、普通の生活に戻り、経済を復活させるには、なるべく早くワクチン接種を進めるしかありません。ワクチンを接種しなければ、新型コロナウイルスに感染するリスク、自分が感染して人にうつすリスクをずっと背負っていくことになります。厳しい感染対策を継続せざるを得ず、経済活動も再開できません。また、接種していない人の間で感染がくすぶると、そこから新たな変異ウイルスが出てきます。変異ウイルスは感染が続く限り新たなものが出ますので、せっかくワクチンでついた免疫が効かないウイルスが出てきてしまうかもしれません。ワクチン接種のメリットとデメリットを天秤にかければ雲泥の差でメリットのほうが大きいです。

ワクチンを接種しなければ副反応の心配がなくゼロリスク、ということではありません。自分を守るため、自分の大切な人を守るため、社会を守るために、まずは正しい情報を入手しましょう。多くの方がワクチンを接種することが社会を守ることになり、社会を守ることは社会の一員である自分自身を守ることになります。

河野大臣もブログで述べられていますが、誤情報を流す理由は以下の4つのどれかにあてはまると言われています。
一、ワクチンを批判して、自分の出版物やオリジナル商品に注目を引き寄せて、お金を稼ぐ。
二、科学よりも自分の信奉するイデオロギーに基づいて主張する。
三、過去に誤ったことを発言したために抜け出せなくなっている。
四、自分に注目を集めたい。
誤情報に惑わされず、正しい情報に基づいて、接種する/しないの判断をしていただければと思います。
 
ファイザー・ビオンテック社、モデルナ社の新型コロナワクチンは極めて有効で安全性が高いワクチンです。是非接種をご検討ください。そして一日でも早く元の生活を取り戻しましょう!

【参考資料】
1. Our World in Date
 Coronavirus (COVID-19) Vaccinations – Statistics and Research – Our World in Data
2. JOHNS HOPKINS University Medicine Coronavirus Resource Center
 COVID-19 Map – Johns Hopkins Coronavirus Resource Center (jhu.edu)

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三澤多真子(医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長)

◇◇三澤多真子氏の掲載済コラム◇◇
「新型コロナワクチンについて<その5>~モデルナ社の新型コロナワクチンについて~」【2021年6月3日掲載】
「新型コロナワクチンについて<その4>~筋肉注射について~」【2021年4月20日掲載】
「新型コロナワクチンについて<その3>~よくみられる副反応について~」【2021年4月15日掲載】
「新型コロナワクチンについて<その2>~禁忌者・要注意者・アナフィラキシーについて~」【2021年4月8日掲載】
「新型コロナワクチンについて<その1>~効果と安全性と特徴~」【2021年4月6日掲載】
「新型コロナウイルス感染症の検査の目的と解釈の理解のために」【2020年5月26日掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。

2021.07.01