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新型コロナワクチンについて<その3>~よくみられる副反応について~

三澤多真子 医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長

新型コロナワクチンを打ちたいけれど副反応が気になる、という方もいらっしゃると思います。重い副反応であるアナフィラキシーについては、<その2>にて解説いたしました。アナフィラキシーはめったに起こりませんので、今回はよく見られる副反応についてご説明したいと思います。現在日本で承認され接種されている新型コロナワクチンはファイザー・ビオンテック社のものですので、これについて解説いたします。

1.どんな副反応がどれくらいの頻度で出るか?

新型コロナワクチンはインフルエンザワクチンと比べると副反応の頻度が高めです。局所の副反応としては接種部位の痛みや腫れ、全身の副反応としては倦怠感、頭痛、発熱、悪寒、関節痛、筋肉痛、下痢、吐き気などが報告されています。最近ニュースになっている血栓症はアストラゼネカ社のワクチンでのことで、ファイザー・ビオンテック社のワクチンでは報告はありません。

日本国内で160例を対象に臨床試験を行った結果は表1のようになります。これは海外のデータとほぼ同じです。一点、海外では発熱は38℃以上と定義されていますので、37.5℃以上で集計している日本では発熱の割合は海外データより多くなっています。
ファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチンは3週間あけて2回接種しますが、総じて2回目のほうが出やすいです。接種翌日に症状が出て、接種3~4日目にはおさまることが多いです。(表1)

日本では2月17日から医療従事者への接種がはじまりました。先行接種を受けた約20,000人に対し詳細な副反応の調査がなされています。4月9日に厚労省から発表された中間報告のデータをみてみましょう。(図1)

接種部位の痛みはまず出ると思っていたほうがいいでしょう。ちょっとした筋肉痛程度から腕があげにくい程度まで個人差があります。また2回目接種後は6割以上の方で倦怠感がみられ、頭痛や発熱も3~4割の方でみられます。半数の方は軽い症状ですが、残りの半数の方は薬を必要としたり日常生活に支障が出ています。いずれも接種翌日が一番強く、接種3~4日目にはほぼおさまります。長く続くわけではありませんのでご安心ください。

2.年齢による違い

図2をみていただくとわかるように、37.5℃以上の発熱は、20歳代では5割程度出ますが65歳以上では1割ほどです。一般に副反応は年齢が若い方のほうが出やすくなります。

3.副反応への対応

接種部位の痛みや頭痛、発熱が出てつらい場合は、解熱鎮痛剤を服用して構いません。予防的に解熱鎮痛剤を飲むことは、ワクチンの効果に影響をおよぼす可能性があるのでやめましょう。もともと持病のためにそうした薬を服薬されている方は、中止する必要はありません。主治医のいる方は、あらかじめ主治医に相談しておくといいですね。

ひとつ注意点があります。ワクチンの効果が出始めるのは、1回目を接種してから12日ほどたってからです。しっかり免疫がつくのは2回目を接種して2週間たってからです。
たまにワクチンを打ったのに感染したというニュースが流れますが、ワクチンを打つ直前に感染していた場合もありますし、1回目のワクチン接種後約2週間は感染のリスクが接種前と変わりません。また非常に有効性の高いワクチンではありますが、100%予防できるわけではありません。ただし接種すればたとえ感染しても症状が出るのを抑えられますし、重症化を防ぐ効果もあります。

なお、新型コロナワクチンにはウイルス本体の遺伝子は入っていませんので、ワクチンを接種することで新型コロナウイルスに感染することは絶対にありません。副反応で味覚嗅覚障害や翌日以降に咳が出ることはありませんので、そのような症状が出た際は必ず発熱外来を設けている医療機関にご連絡ください。

4.最後に

副反応はワクチンが免疫を作っている証拠です。一時的なものであり数日でおさまりますので、落ち着いて様子をみてください。接種翌日に症状が一番強くなりやすいので、その日は予定を入れず家でゆっくりできるようにしておくと安心です。ご心配な方は、翌日医療機関があいている日に接種していただくといいでしょう。
副反応が出てご心配な際は、まずは接種を受けた医療機関にご相談ください。集団接種会場で接種された方は、かかりつけがあればかかりつけ医にご相談ください。

副反応を心配し過ぎてワクチン接種をしないことは本末転倒です。真に恐れるべきは新型コロナウイルスに感染すること、また自分が感染することでご家族や大切な方にうつしてしまうことです。新型コロナウイルスに感染すれば、発熱、咳、倦怠感は長く続きますし、社会的にも様々な制約を受けます。以前は若い方は重症化しにくいと言われていましたが、最近は20~30歳代の方でも肺炎になる方が増えており、命を落とす方もいらっしゃいます。

国民の6割以上がファイザー・ビオンテック社のワクチン接種を2回終了したイスラエルでは、経済活動をほぼ完全に再開しているにもかかわらず感染者が激減しています。(図3)

一方、日本では2回の接種を終えた方は0.4%で、先進国の中で最下位です。ふたたび感染は急拡大しており、変異ウイルスも増えています。幸いファイザー・ビオンテック社のワクチンは現在出ている変異ウイルスにも効果があることがわかっていますが、ウイルスは常に変異し続けています。このまま感染が拡大していけばワクチンが効かない変異ウイルスが出てくる可能性もあります。

コロナ禍を終わらせるにはなるべく早くワクチン接種率をあげていくしかありません。ワクチンに対する正確な知識を得ていただき、自分自身や大切な方を守るために、そして普通の生活を取り戻すために接種をご検討いただければと思います。

【参考資料】
コミナティ筋注添付文書第3版
第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告(3)
「新型コロナワクチン接種のお知らせ」厚生労働省
こびナビワクチンQ&A
REUTERS COVID-19 TRACKER

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三澤多真子(医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長)

◇◇三澤多真子氏の掲載済コラム◇◇
「新型コロナワクチンについて<その2>~禁忌者・要注意者・アナフィラキシーについて~」【2021年4月8日掲載】
「新型コロナワクチンについて<その1>~効果と安全性と特徴~」【2021年4月6日掲載】
「新型コロナウイルス感染症の検査の目的と解釈の理解のために」【2020年5月26日掲載】
「若年性認知症の人の社会参加に対する考察」【2019年7月30日掲載】
「おたふくかぜワクチン定期接種化を求む」【2018年4月24日掲載】

2021.04.15