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新型コロナワクチンについて<その1>~効果と安全性と特徴~

三澤多真子 医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長

日本でも新型コロナワクチン接種が始まりました。長いコロナ禍を終息させる唯一の武器とも言えます。数回にわけて新型コロナワクチンの解説をさせていただきます。

現時点で日本で承認され使用されているのは、ファイザー・ビオンテック社のmRNAワクチンです。このワクチンは21日間隔で2回接種します。現在オックスフォード・アストラゼネカ社のベクターワクチンとモデルナ社のmRNAワクチンが承認申請中です。今回はファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチンについて述べます。

1.有効性

mRNAワクチンははじめて実用化された新しい技術です。mRNAワクチンについては後述します。
人類にとって朗報であったのは、専門家も驚くほど効果が高いことです。

ワクチンの効果には3種類あります。感染自体を抑える感染予防効果、感染しても症状が出るのを抑える発症予防効果、発症しても重症化するのを抑える重症化予防効果です。イスラエルでファイザー社の新型コロナワクチンを2回接種した市民60万人と、接種していない市民60万人を比較したところ、発症予防効果は94%、重症化予防効果は92%でした。感染予防効果は正確に調べることが難しいのですが92%程度ありそうです(図1)。ちなみにインフルエンザワクチンの発症予防効果はおよそ40-60%です。ファイザー社の新型コロナワクチンはとても効果が高い優秀なワクチンなのです。

2.安全性

ワクチンが原因かどうかわからないけれど、ワクチンを接種した後に好ましくない反応が出たものを有害事象といいます。有害事象の中で、ワクチンが直接原因でおこったものが副反応です。(図2)たとえば、ワクチン接種の帰りに雷に打たれた、というのも有害事象として報告されていますが、これはたまたまワクチン接種後に起こったことであり、ワクチンが原因ではありませんので副反応ではありません。

ファイザー社の新型コロナワクチンの副反応は以下のようなものが報告されています。

その他、悪寒、関節痛などが報告されていますが、ほとんどが2,3日以内におさまっています。

重大な副反応にアナフィラキシーがあります。アナフィラキシーとは、強いアレルギー反応がおこって、蕁麻疹や粘膜の腫れ、息苦しさ、吐き気や腹痛、血圧低下のうち二つ以上がみられるものです。

図3のとおり、インフルエンザワクチンより頻度が高いですが、皆様も一度は使ったことがあると思われる抗生剤に比べるとずっと低いです。

アナフィラキシーは接種後15分以内に74%、30分以内に90%が発生しています。
接種後15分は必ず経過観察を行います。
万が一アナフィラキシーがおこっても、薬で治療できます。これまで新型コロナワクチンが原因で亡くなった方は世界で一人も出ておりません。

3.mRNAワクチンとは

日本で接種がはじまっている新型コロナワクチンはファイザー・ビオンテック社のmRNA(メッセンジャーアールエヌエー)ワクチンです。mRNAは昔生物の授業で聞いた!という方もいらっしゃれば、忘れた、何それ?という方もいらっしゃると思います。以下mRNAワクチンについて解説します。

(1)ワクチンとは
そもそもワクチンとはなんでしょうか?
ワクチンは、体に細菌やウイルスなどの病原体が入ってきた際に、事前に免疫をつけておくことで感染や病気の発症、重症化を予防するお薬です。病原体に感染すると、免疫細胞はその一部を認識して反応し、それに対する免疫ができます。そして免疫細胞は一度入ってきた病原体をずっと記憶していて、次に同じものが入ってきたときに素早く攻撃できる仕組みになっています。

ワクチンを打つと、実際に病原体に感染しなくても免疫をつけることができます。新型コロナウイルスもそうですが、感染すると命にかかわったり後遺症が残る病原体もあります。そういった危険な病原体に対してワクチン開発が行われています。
 
(2)mRNAワクチンとは
ワクチンにはいくつか種類があります。これまで使われてきたのは生ワクチン(病原性を弱めた病原体)、不活化ワクチン(感染力をなくした病原体)、組換えタンパクワクチン(病原体を構成するタンパク質)です。mRNAはタンパク質の設計図で、mRNAワクチンは病原体を構成するタンパク質の設計図を投与することで免疫をつけるという新しい種類のワクチンです。(図4)

私たちの体の中では、日々細胞内で様々なタンパク質が作られています。その仕組みを簡単に説明すると次のようになります。
➀細胞の核にあるDNAから、作りたいタンパク質の情報が記載されている部分をmRNAに設計図としてうつしとる。
➁mRNAは核の外の細胞質でリボソームというタンパク質合成マシーンに読み取られてタンパク質ができる。(図5)

新型コロナウイルスの場合、ウイルスのまわりのスパイクタンパク質(Sタンパク)というトゲトゲの部分への免疫をつけたいので、この部分の設計図が書かれたmRNAワクチンを作ります(図6)。Sタンパクの部分の設計図だけなので、ウイルスの遺伝子本体は入っていません。ですからワクチンを打つことで新型コロナウイルスに感染することはありません。また、mRNAは核の中に入り ませんので、ヒトの遺伝子に組み込まれることもありません。

mRNAは細胞に取り込まれてから20秒から20分で分解されます。作られたタンパク質も10日以内には分解されいずれも体内に残りません。このような理由から、mRNAワクチンの長期的な副作用は考えにくく、たとえあったとしても非常に稀と考えられています。さらに、mRNAワクチンは効率よく免疫をつけることができるので、アジュバント(免疫をつけるのを助ける補助剤)が入っていません。水銀などの保存剤も入っていません。成分はmRNAと、mRNAをくるむ膜になる脂質と、塩類、糖類のみでいずれもこれまで人に投与されていて安全性が確認されています。

これまでの組換えタンパクワクチンは、標的となるタンパク質を工場で作っていました。図6のSタンパクを見ていただくとわかるとおり、タンパク質は複雑な3次元構造をしていて作るのが大変です。mRNAワクチンは、設計図を投与すればこの複雑なタンパク質合成を自分の細胞がしてくれます。人間の体ってすごいですね!設計図を作ること自体はそれほど難しくはないので、たとえば変異ウイルスが出たら、それに合わせて設計図を書き換えればすぐに対応することができます。

4.最後に

mRNAワクチンは新しい技術ですが、突然ふってわいたものではありません。mRNAワクチンの基礎研究は20年以上行われてきており積み重ねがありました。技術の進歩により新型コロナウイルスの遺伝子配列を迅速に解析することができました。重症急性呼吸器症候群(SARS)の際の研究も役立ちました。100年に一度のパンデミックの中で、世界の超大国がお金と人を全力投球した結果、これまでにないスピードで開発し安全性や有効性を確認することができました。副反応はゼロでありませんが、これまでに新型コロナワクチンの副反応で亡くなった方はいらっしゃいません。一方、新型コロナウイルスに感染すれば命を落とすこともあり、若者でも倦怠感や嗅覚障害、脱毛などの後遺症が長く続くこともあります。どちらにしてもゼロリスクはありません。

世界中で1年以上パンデミックが続き日本では第4波が危惧される中、ワクチンは唯一の武器であり希望です。長いコロナ禍に終止符を打つために、ワクチンについての理解を深め、接種をご検討いただければと思います。

【参考資料】
こびナビ 
新型コロナワクチン公共情報タスクフォース 
「コミナティ筋注」添付文書
・IDSA.Vaccines FAQ

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三澤多真子(医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長)

◇◇三澤多真子氏の掲載済コラム◇◇
「新型コラムウイルス感染症の検査の目的と解釈の理解のために」【2020年5月26日掲載】
「若年性認知症の人の社会参加に対する考察」【2019年7月30日掲載】
「おたふくかぜワクチン定期接種化を求む」【2018年4月24日掲載】

2021.04.06