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先見創意の会

孤独死防止策に関する提案

岡光序治 (会社経営、元厚生省勤務)

どうする地域社会福祉?」の続編として、孤独死防止策に関し考え、一部実行したことを述べる。

動機

先に紹介したように、筆者の関わっている地区(小学校区)の2023年3月時点での世帯数は2,256、うち一人世帯は885、全世帯に占める割合は39.2%。

何をいまさら、とお考えになる向きもあろうかと思うが、看過できないきっかけがあったのである。隣接する地区で、近時、ひとり暮らしを見守る役割を引き受けていたひとり暮らしの男性が室内で倒れ、4日間、外に知らせることができないまま経過、異常を察知した近所の通報で警察による窓ガラスを破り家に入るという手段によって倒れているところを発見、救急搬送し、命はとりとめたケースが発生、次いで、同じようなケースが同じ地区で発生。関係する会議においてこの情報を得たので、筆者の地区ではこうしたケースの発生を防止すべく、地区内自治会を中心に何らかの策を講じるよう働きかけを始めたというわけである。

お手本として示されている方策

地元自治体や地域包括支援センターに照会し得られたお手本は、以下の通り。

1.日頃から近所の方々と交流を持つ。
ひとり暮らしの方で積極的に地域との交流を持っているのは、どちらかと言えば、女性でひとり暮らしの男性は孤立しがち、近隣の集まりの“おんなの園”を遠くから眺めている傾向にある。例えば、ふれあいサロンへの参加をまず促す相手は女性が多い(出渋る相手を説得するのが女性である場合が多いからかもしれないが…)。

地域包括支援センターが行っている見守り活動(啓発活動を進めているが)への登録もなかなか進まない。

健康寿命を目指し自治体も力を入れている「百歳体操」の参加者も広がってくれない。

2.デイサービスやデイケアといった通所サービスを利用する。
健康を自認する人はまず見向きもしない。そして、やっていることが子供っぽく、高齢者を没個人のうえ子供扱いし、一流との接触は期待できない「場」にプライドのある高齢者が近付かないのはある意味、当然とも言える。

3.見守りサービスのある宅配サービスや事業者による安否見守りサービスを利用する。
当然のことながら、利用料金が発生する。また、事業者への信頼性が問題となる。

4.見守りカメラ(特定の事業者による有料サービス)を設置する。

5.SNSで交流する。
NPO法人がLINEを使って行うケースなどもあるが、有料だしスマートフォンが必要である。

6.郵便局員や新聞配達員による異常事態(らしき)ケースの連絡体制の整備
自治体と郵便局や販売所と協定を結ぶ必要があるが、筆者の周辺では、協定は結ばれていないようだ。

7.緊急連絡カードの整備と保管場所の明示
社会福祉協議会は、緊急カードを用意し、求めに応じ、配布している。但し、配布を求める声はあまり上がっていないようだ。

これはあらかじめ、連絡先の家族、協力してくれる近隣住民、民生委員、病歴、かかりつけ医などを記載し、控えを民生委員が保管しておくもの。異常事態で本人が応答できない場合に記載してある情報が緊急対応の際の有力な参考資料となると考えられるもの。

示されたカードには、「電話機の近くに置いてください」と記載されているが、このカード設置推進地区では、目立つ色合いのケースを用意し冷蔵庫に入れておくように、と勧めている(緊急時、カードの設置場所探しをしないで済むように、との発想)。

はっきりしていない点は、緊急連絡網。民生委員が連絡網のキイになるということはそれとなくわかるが、戸を開けて室内に入る必要がある場合には、警察や消防の力を借りなければならない。筆者は、異常事態発見者は、民生委員に連絡すると同時に110、119に通報し、できれば皆が揃って、問題の住居に出向くことをあらかじめ、決めておいてはどうかと言っている。

提案

情報通信手段が発達した現代、この分野にもIT関連のデバイス、通信網の利活用を試みるべきではないか。いくつか提案したい。(順不同)

1.水道使用量測定機器の設置・活用
メーターの側に使用量測定・発信センサーを設置し、使用量を一定時間帯ごとに発信させる。水道局は、自動的に各戸の使用量を把握すると同時に一日中水道が使用されないなどの異常事態を検知できるシステムにしておく。検針の人員は不要になるし、異常を検知したケースを民生部局に連絡し、緊急対応につなぐことができる。

2.電力使用量についても、同様の使用量測定センサーを設置する。各戸の電力使用パターンを把握し、異常なパターンを認識できるシステムを組めば、電力会社は、1と同じ初期情報を提供できる。

3.コミュニケーション・ロボットの活用
例えば、ユカイ工学のBOCCO emo のような見守り可能なロボットの活用は、検討に値する。地域を特定し導入実験を試みている市社会福祉協議会も存在する。聞けば、リースも可能の由、月額4,000円、これで遠隔地に住む子供は親の見守りが可能になり、連絡範囲を地元福祉関係者に広げれば、適格な対応にもつながる。
市町村自治体には国からDX推進の補助金が交付されることになっているので、市町村は積極的にこうしたロボットの導入を試みてはどうか。

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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

◇◇岡光序治氏の掲載済コラム◇◇
◆「どうする地域社会福祉?」【2023.7.11掲載】
◆「少子化対策私見」【2023.4.18掲載】
◆「SUCCESSFUL AGEINGのすすめ」【2022.12.13掲載】
◆「中浜万次郎に学ぼう!」【2022.8.23掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください

2023.10.03