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先見創意の会

どうする地域社会福祉?

岡光序治 (会社経営、元厚生省勤務)

この5月、現在居住している地区(小学校区)の社会福祉協議会の会長を引き受けてしまった。関係者が強く要請してきた理由はいまだはっきりしない。暇そうに見えたのとお人よしに付け込まれたのだと諦めている。引き受けた結果は、打ち合わせの会合が多く企画するイベントの数もばかにならないため、やたらに時間を取られることだ。そして、使う時間の割には具体的な成果が見えてこないのが不満である。

大げさな言い方をすると、地方自治は憲法でも規定され、各種制度でも住民自治が前提におかれ、自助と共助がまず求められている。同会長職を通して垣間見た自治の実態に潜む問題点とどうあるべきかについて私見を述べる。

<どのような地区か?>
居住している市は、西日本の政令指定都市。2023年3月現在の人口は118万人、世帯数は57万9千、平均世帯人員は2.0、8つの特別区から成る。現在の居住地は中心部から西寄りの特別区でベットタウン的な色彩が強く、この特別区には18の地区社協がある。

その一つを担当しているわけだが、この地区(小学校区)は、人口が4,375人、世帯数は2,256、65歳以上人口は1,836人(42%)、一人世帯は885世帯。そして、この地区社協は、15の自治会と、防犯、防災、体育協会、PTA、母親クラブ、民生委員、子供会、高齢者の会など15の地区内諸団体から構成されている。

<散見される問題(順不同)>
〇 自治会に加入しない、または、脱会する件数の増加
予算上も、加入世帯数を1,745世帯としている(自治会のない場所もあり、個人加入している件数は6件)。全体の世帯数は2,256だから、500世帯ほどは加入していないことになる。もちろん、任意加入。しかし、加入者が減りやがて自治会が成り立たなくなると、現在の仕組みの下では、社協を場にする地域福祉活動は機能不全に陥ってしまう。

その理由の一つは、地区社協の収入のほとんどは自治会加入世帯による「会費」(1世帯当たり年1,200円(月当たり100円))で賄われているからである。会費収入が減れば活動資金が枯渇し、事業は休停止せざるを得なくなり、構成する団体への助成もできなくなり団体の活動は止まり、上納金もなくなれば上部団体も困るはずである。

ちなみに、今年度予算の支出は、毎月各戸に配布する“広報誌”とイベントなどの事業費、体育協会、子供会、青少年健全育成、防災、防犯、高齢者の会、ボランティア活動などの団体への補助と、区社協への会費、コミュニティ交流の負担金、区民まつりの協力金などである。

〇 活動の担い手の高齢化と壮年層の参加の拒否ないし無視による活動の停滞
高齢化に伴う身体機能の低下により、地域活動に参加できない(会場までの移動がままならない)し参加する意欲がわかないなど、活動の担い手が減少している。

65歳以上の高齢者には、活動に参加すると、“いきいきポイント”が発行され、市から1ポイント100円相当が還元される。いわば、65歳以上の活動参加者についてはインセンティヴの措置が講じてあるが、それより若い年齢層に対しては何もない。壮年層は、自治会を年寄りクラブないし暇な女性の集まりとみなし、敬して遠ざけているようにも思える。

〇 日々の生活をめぐる情報の途絶
一人世帯が急増、近くに親族が居るのか不明のケースがほとんどである。個人情報保護という理由で、公の調査は特定目的に限られ、関連するものがあっても開示が難しい。本人からの申し出以外、生活の安全を保つのに必要な情報を把握できない。もちろん、出生の場合も死亡のケースも家族からの自発的な連絡に頼っている。

制度的には、民生・児童委員がいるし、一人暮らしで日常生活動作に困難な高齢者には本人の申し出があれば、周囲の協力者に見守り役を依頼する仕組みはある。災害発生時の避難困難者について申し出があり登録すれば、特定の近隣住民の支援が可能な制度も用意してあるが、これらの制度は、個人からの申し出と協力者の存在を前提にしている。

<対応策>
1.生産年齢層に対して
休業補償の一環として、介護休業にプラスして、有給のボランティア活動休暇制度を制度化する。自身の高齢親族への定期訪問を含め、上記のような高齢者に対する協力や児童生徒の放課後における各種教育・運動指導などを行うことを対象にする。

社内はもちろん地域社会でも、他人を手助けする「利他」の精神を涵養する公による広報活動、参考資料の提供などを活発化する。そして、経済対策としては、衣食足りて礼節を知る、健全な中間所得層の育成に重点を置く。

2.一人世帯及び二人世帯に対して
公から情報ツール(簡単スマホやタブレット)を該当世帯に貸与、“見守り110番部隊” 特別区の法人化した社協に設置―との間でネットワークを形成する。見守り110番部隊は、民生委員と同様公が委嘱し、システムのコントロールに当たるが、手段的にはAI管理する。日本郵政との間で、郵便物配達の際、その管理状況を確認し、異常を感知したら、見守り部隊に連絡する協定を交わす。

また、見守り部隊は、e-スポーツの高齢者版を用意し、ツールを通じて体を適切に動かす手段を提供し利用方法を指導する(各参加者の身体条件は自発的に提供してもらい、条件にふさわしい指導を行う)。 そして、この定期指導を通じて、個々の対象者の安全を確認する。

3.全世帯に対して
花いっぱい運動を自治会活動として展開する。地域住民に対し、定期的に、地域の集会所などの地域拠点に集合してもらい、希望者にプランタン、土、種を提供し、生育方法を指導する。これには、園芸福祉の専門家に参加してもらう。もちろん、この機会を利用して、安否確認など情報収集を行い、困りごと相談にも乗る。

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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

◇◇岡光序治氏の掲載済コラム◇◇
◆「少子化対策私見」【2023.4.18掲載】
◆「SUCCESSFUL AGEINGのすすめ」【2022.12.13掲載】
◆「中浜万次郎に学ぼう!」【2022.8.23掲載】
◆「スマートエイジングの勧め」【2022.5.17掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください

2023.07.11