コラム

    • ケアマネジメントの課題と改善策-その2(全2回)-

    • 2014年05月13日2014:05:13:08:05:00
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに

 
前号では、ケアマネジメントの位置づけと期待される役割について言及した。本稿では、退院事例に対するケアプラン内容分析をもとに、ケアマネジメントの課題を整理するとともに、その改善策について言及したい。
 
 

■退院時ケアマネジメントの現状-脳卒中退院事例のケアプラン内容分析から

 
現在、複数の自治体にて、地域ケア個別会議(多職種による事例検討会)に関わっているが、脳卒中退院事例に対する「解決すべき課題」としてケアマネジャーがよく挙げているのが、課題1:自宅で入浴ができない、課題2:再発に対する不安が強いなどである。
 
そして、対策として挙げているのが、課題1に対しては「清潔保持を行うために通所サービスで入浴を行う」、課題2に対しては「定期的に通院しているかを確認する」「服薬状況の確認を行う」などとなっている。
 
 

■課題1(入浴ができない)に対するマネジメントの問題点とは

 
入浴動作は、①立位保持、②移乗(乗り移り)、③座位保持、④浴槽をまたぐ行為といった複数の動作で構成される(図1参照)。「入浴ができない」という課題を解決しようとすれば、これら各動作をアセスメント(観察・評価)した上で、本来、対策を検討することとなるが、ケアプランをみる限り、入浴ができない原因に言及した記載は少ない。また、対策の多くは、「通所サービスで入浴を行う」などとなっている。このことは、入浴ができないことに対する対処療法として、通所サービスが選択されていると考えれば合点がいく。課題を解決するというマネジメント本来の目的が忘れ去られて、通所で入浴を行うこと自体が目的化している可能性が高い。
 
図1. 入浴を構成する動作と介助方法
 
 

■課題2(再発に対する不安が強い)に対するマネジメントの問題点とは

 
九州大学医学部が行っている久山町研究によると、病型別にみた初発脳卒中後の再発率は、脳梗塞で「1年以内」10%、「5年以内」34%、「10年以内」50%、脳出血で「1年以内」26%、「5年以内」35%、「10年以内」56%、くも膜下出血で「1年以内」33%、「5年以内」55%、「10年以内」70%と報告されている1)。このように、脳卒中患者は高い再発リスクを抱えており、再発を予防するためには、①再発の原因となる病気の管理、②生活習慣の改善、③抗血栓薬の服用が重要と言われている(図2参照)。
 
ところが、ケアマネジャーが挙げる「脳卒中の再発予防」対策をみると、通院状況及び服薬状況の確認のみである。脳梗塞の退院事例検討会の場で、脳梗塞の病型を質問したことがあるが、病型を答えられたケアマネジャーはほとんどいなかった。これは何故か? 「脳梗塞の再発予防のためには、脳梗塞を最初に引き起こした原因を把握した上で、服薬や生活習慣上の留意点をおさえておく必要がある」という意識がケアマネジャーにあれば脳梗塞の病型の把握は必須となるが、通院や服薬管理を行うだけであれば、脳梗塞の病型を知っておく必要性は低い。そのため、脳梗塞の病型まで把握しているケアマネジャーは少ないと推察される。
 
図2. 脳卒中の再発予防のために必要なこと
 
 

■ケアマネジメントの機能強化に向けて

 
課題1に対する問題点は、①ケアマネジャーが一連の動作をアセスメントできていない(観察していない可能性もある)、②課題解決がマネジメントの目的であるという意識が弱い、③逆に、何のサービスを導入するか(対処療法的アプローチ)の意識が強いなどである。
 
このうち、①に関しては、リハ職が最も得意とする領域である。したがって、例えば、リハ職も参加したサービス担当者会議を利用者宅で行い、リハ職による動作の観察や評価の方法をみることで、観察や評価のポイントを学ぶことができる。このような仕事の仕方を身につければ、多くの職種と仕事をするケアマネジャーのスキルは自ずと高まるのである。利用者宅でのサービス担当者会議の開催と、その場でのADL面や健康面からみた課題の確認作業の標準化が、多職種協働の質を高める有効な手段と考える。
 
課題2に対する問題点は、①初発脳卒中の発症原因やリスク要因を把握していない、②病気の管理、生活習慣の管理などは医療職の仕事と考えている(ケアマネジャーとしての役割が整理されていない)、③主治医の関心領域がどこにあるかがわかっていないなどである。
 
これらの問題点を解決するためには、ケアマネジャーの役割を具体化することが必要と考え、ケアマネジャーや医師とともに「脳卒中の再発予防に向けたケアマネジメントチェック表」を作成した(図3参照)。
主な課題別にみたケアマネジメント業務内容の標準化、ケアマネジメントプロセスの標準化(利用者宅での多職種による動作確認の徹底など)が、ケアマネジメントの機能強化を図るための有用なツールになると考える。
 
図3.「脳卒中の再発予防」に向けたケアマネジメントチェック表(※クリックで拡大)
 
 
【参考文献】
1. Hata J, Tanizaki Y, Kiyohara Y. et al.: Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study.  J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 ;76(3):368-72.
2.ケアマネジメントの資質向上のためのテキスト作成班:疾患の観察ポイントと医療連携-脳卒中-、平成25年3月.
 
 
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川越雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)

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