コラム

    • ケアマネジメントの課題と改善策-その1(全2回)-

    • 2014年01月21日2014:01:21:08:00:00
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに-マネジメントの機能強化が求められる背景―

 
 2013年9月の介護サービス受給者数は477万人で、うち85歳以上(超高齢者)が約半数を占めている。超高齢者の場合、医療や介護だけでなく、生活支援に対するニーズも高い。そのため、これらサービスが包括的に提供される仕組み、いわゆる「地域包括ケア」提供体制の構築が、現在、重要な政策課題となっている。
 
 同体制を実現するためには、まず、「必要サービスを量的・質的に確保すること」が重要となるが、それと併せて、利用者特性等や置かれた状況に応じて、これらサービスや支援を適切に配分する「ケアマネジメント」の質が重要となる。しかしながら、現行のケアマネジメントに対しては、①自立支援の考え方が十分共有されていない、②アセスメントに基づく課題認識が十分でない、③サービス担当者会議における多職種協働が十分には機能していない等、様々な問題点が指摘されており、その機能強化を如何に図るかが、現在、重要課題となっている。
 
 さて、本稿の目的は、ケアマネジメントの課題とその改善策について言及することにある。第1回目は、まず、ケアマネジメントの位置づけと期待される役割について整理したい。
 
 

■介護保険の目的とケアマネジメントの役割

 
 介護保険制度の目的は、同法第1条で述べられているが、そのポイントは、①利用者の尊厳を重視する、②保険給付は、利用者の自立した生活を支援するためのものであるという点にある。
 
 さて、「自立支援」を実現するためには、個々の高齢者の心身の状況や置かれている環境、ニーズを踏まえた上で、総合的な援助方針の下、必要なサービスを計画的に提供するとともに、目的の達成状況を定期的に評価していく仕組みが必要となる。そこで導入されたのが、ケアマネジメントである。
 
 ケアマネジメントの目的も、通所介護などのサービスと同様、「自立支援」である。ただし、複数領域にニーズを有する高齢者の場合、介護サービスだけでは自立した生活を支え切れない場合も多い。そのため、介護サービスを中核としつつ、医療サービスやボランティアサービスなど、地域の様々な資源を統合した包括的なケア提供が求められることとなる。ただし、ケアマネジャーは、これらすべての領域に精通している訳ではないため、多くの異なる分野の専門職との連携・協働が必須となる。
 
 

■ケアマネジメントと生活機能

 
 ケアマネジメントは「自立支援」を理念とするが、その具体化を図るために採用されたのが、ICFの生活機能モデルの考え方である。
 
 これは、「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」の3要素を「生活機能」と定義した上で、これに影響を及ぼす「健康状態」、「環境因子」、「個人因子」を含めて、高齢者の障害を包括的に捉えるものである(図1)。ケアマネジメントでは、利用者本人の「生活機能」の維持・向上を図ることを通じて、可能な限り、その人らしい生活を営むことを支援することを目指すこととなる。
 
 

■ケアマネジメントプロセスとは

 
 ケアマネジメントは、おおむね、①本人の意向の確認(インテーク)、②アセスメント(課題抽出)、③ケアプランの作成、④ケアプランに沿ったケアの提供、⑤モニタリング、⑥評価 といったプロセスから成り立つ(図2)。以下、主な手順の概要を解説する。
 
1)本人の意向の確認(インテーク)
 ケアマネジメントでは、「利用者が自分らしい生活を営むこと」を出来る限り支援することを目指す。そのため、本人がどのような生活を望んでいるのか、どのような生活をしたいのかの意向の確認が非常に重要となる(これが出発点)。
 
2)アセスメント(課題抽出)
 課題を正しく認識するための手段として実施するのが、アセスメントである。ケアマネジメントでは、生活機能の維持・向上を目指すため、生活機能や関連因子に関する14領域(健康状態、日常生活活動(ADL)、認知機能、社会とのかかわり等)に対するアセスメントが、ケアマネジャーには求められている(図1)。
 
 さて、課題とは、「現在の状態」と「あるべき姿(本人が望む姿)」のギャップのことである。ケアマネジャーは、まず、アセスメント領域毎に課題を抽出した上で、本人の意向、課題解決の緊急性、改善の可能性などを考慮して、「解決すべき課題」の設定を行う。その上で、解決すべき課題が生じている根本原因の分析を行う(課題分析)。
 
3)ケアプランの作成
 アセスメントを通じて設定した「解決すべき課題」に対し、いつまでにどこまでのレベルを目指すのか(長期・短期目標)を設定するとともに、それら課題の解決に向け、誰が何を行うのかの役割分担を具体的に決めた計画(ケアプラン)を策定する。その後、各サービス担当者は、ケアマネジャーが立てたケア方針に沿って、個別援助計画を策定する。ケアマネジャーが策定した全体ケア計画と各サービスの個別援助計画が連動していなければ、課題解決にはつながらない。両計画の連動性が非常に重要となる。
 
図1. ICFとケアマネジメントにおけるアセスメント14領域の関係
 
 
図2. ケアマネジメントプロセスとは
 
 

■おわりに

 
 本稿では、ケアマネジメントの位置づけと期待される役割について整理した。次回は、事例検討を通じて把握されたケアマネジメント上の課題を紹介するとともに、その改善策について言及したい。
 
 
 
【参考文献】
1.介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会:介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理,平成25年1月7日.
 
 
 
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川越雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)

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