コラム

    • 要介護高齢者に対する退院支援の現状と課題 -その3(全3回)-

    • 2013年10月01日2013:10:01:09:30:00
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

>>その1 >>その2

 

 

■はじめに

 
入院医療費の適正化、医療提供体制の効率化の観点から、平均在院日数の短縮化が推進されている。こうしたなか、円滑な退院を支援する「退院支援」の機能強化が求められている。
 
前回は、①一般病床における退院支援部門の設置状況、②退院支援プロセスの現状について解説した。本稿では、退院患者に対するケアマネジメントの現状と課題を整理した上で、その改善策について私見を述べる。
 
 

■退院後のケアプランの現状

 
自宅退院要介護者に対するケアプランへのサービス種類別導入率を、一般病床と回復期リハ病床別にみると、いずれも「福祉用具貸与」の導入率が最も高く、次いで「通所介護」「訪問介護」の順であった。ここで、訪問看護の導入率をみると、一般病床35.5%、回復期リハ病床14.6%、通所リハの導入率をみると、一般病床11.3%、回復期リハ病床30.2%と、回復期リハ病床からの退院患者に対しては、一般病床に比べて訪問看護導入率が低く、逆に、通所リハの導入率が高かった(滋賀県における退院患者調査、表1)。
 
前回の報告でも紹介したが、一般病床では看護師とMSW、回復期リハ病床ではリハ職と看護師を中心に退院前ケアカンファレンスが運営されている。また、入院原因疾患をみると、一般病床では肺炎、心疾患、悪性腫瘍、回復期リハ病床では脳梗塞、大腿骨骨折、脳出血が上位を占めている。そのため、一般病床では、疾患の特徴から、看護の継続性に関心が払われやすく、かつ、看護師の関与が強いため、訪問看護の導入率が高く、逆に、回復期リハ病床では、疾患の特徴から、リハの継続性に関心が払われやすく、かつ、リハ職の関与が強いため、通所リハの導入率が高くなったものと考えられる(逆に言えば、一般病床退院患者の「廃用性機能低下」、回復期リハ病床退院患者の「再発予防」に対する視点が弱い可能性がある)。

■退院時ケアマネジメントの課題:リハ職との協働ケアマネジメントとの比較より

 
日常生活活動(ADL)に障害を有する要介護高齢者が、退院後からスムーズに自宅での生活が送れるようにするためには、退院後のケアプランを策定するケアマネジャーが、自宅環境下でのADL状況、療養環境などを適切にアセスメントした上で、リハサービスの導入の必要性、リハ職による指導・助言の必要性などを適切に判断する必要がある。しかしながら、①ケアマネジャーは福祉系が多く、自身がリハの必要性を正しく認識できていない、②ケアマネジャーがリハの必要性を認識したとしても、それを本人/家族に説明し、同意をとることは困難であるといった問題点が指摘されている。
 
そこで、これら問題点の改善策を検討するため、ケアマネジャーとリハ職による協働ケアマネジメント(退院後同行訪問、自宅環境下でのADL評価、ケア方針に関するリハ職による指導・助言、家族介護指導など)を実施し、その効果を検証した(以下、介入群)。なお、ケアマネジャー単独によるケアマネジメント群を比較対照群とした。その結果、①ADL得点(バーセル指数)は、両群とも3カ月後に有意に改善していた(表2)、②ADL得点の変化量は、対照群に比べて介入群で有意に改善していた(表2)、③内容別にみたリハ実施率の変化をみると、介入群では筋力増強運動、バランス練習、起居・立位動作練習、移動動作練習の実施率が有意に上昇していたが、対照群では全てのリハ内容で有意差はみられなかった(表3)などがわかった。

■退院時ケアマネジメントからみえてきたケアマネジメントの課題

 
対照群では、退院1週間後と3カ月後のケアプランの内容、リハの実施内容がほぼ同じであった。一方、介入群では、リハ職による指導・助言により、3カ月後には筋力増強運動、バランス練習、起居・立位動作練習、移動動作練習の実施率が有意に上昇していた。また、ADL自立度も、介入群の方が有意に改善していた。
 
では、なぜ対照群では同じプラン内容が継続していたのか。これは、ケアマネジャーが「退院後の現在の利用者の状態を維持したい」という潜在的な意識を持っているため、現在の状態が維持出来ていれば、ケアプランを変える必要性がないと判断し、その結果同じプランが継続されるという構造から生じた現象ではないかと推察される。リハ職や看護師から、「ケアマネジャーは、状態が悪くなったり、ADLが低下してから相談にくる」という話を聞くことがあるが、これは、現状維持を目指していたにも関わらず、状態が悪化したり、ADLが低下してしまったため、現状維持という目標が達成できなくなってしまい、その結果、看護師やリハ職に相談をしたと考えれば納得ができる。現在のケアマネジャーの約7割は福祉系であるが、福祉系の方は、今後の可能性(予後)を見据えたうえで、今何をすべきかを考えるといった(医療系の)思考過程ではなく、現在の状況に対する関心が強く、結果として悪化した後に、事後的に対応をとっているのではないかと考えられる。このような課題を有する現行のケアマネジメントの機能強化を図るためには、医療職が、こうした福祉職の思考過程の特徴を認識したうえで、要介護高齢者の状態の改善・悪化の可能性に言及しながら、現在の状態とのギャップを意識させる形で課題を正しく認識させるといった、思考プロセスへの側面支援を行うことが必要と考える。
 
 

■多職種協働によるケアマネジメントを推進すべき

 
現在、2つの市で、「ケアマネジメントの機能強化を目的とした地域ケア個別会議(多職種による事例検討会)」の司会役を担っている。個々の事例の課題をみると、健康面の問題、ADLの問題、機能面からみた問題など、複数の領域にわたる様々な「日常生活上の課題」を要介護高齢者が有している実態がわかる。これら多領域にわたる諸課題を解決するのがケアマネジャーの役割であるが、その際、重要になるのが、①適切な課題認識、②課題を引き起こしている根本原因の究明、ならびに③対応策の検討および実践である。
 
これは、福祉系を中心としたケアマネジャーだけでは対応できない。マネジメントを仮に看護師やリハ職が行ったとしても同じ事である。この問題を解決する唯一の方法が、得意分野が異なる多くの職種が「利用者が抱える課題を解決する」という共通目標のもと、それぞれの役割を果たすといった多職種協働マネジメントを推進することにあると考える。
 
 
【参考文献】
川越雅弘:退院後のケアマネジメントプロセスへのリハ専門職の介入効果、厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業「要介護高齢者の生活機能向上に資する医療・介護連携システムの構築に関する研究」平成23年度分担研究報告書、pp.37-78、2012.
 
 
 
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川越雅弘(国立社会保障人口問題研究所)

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