コラム

    • 医療と介護の連携が叫ばれている背景の考察 (その2/2)

    • 2011年04月05日2011:04:05:10:54:46
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

 

 この度の大地震で亡くなられた方のご冥福をお祈りし、被害者に心からのお見舞いを申し上げます。あわせ、原発事故の鎮静化を祈るものです。再建・復興に向け、国の総力と知力を注ぎ、個々人は足元からも協力していくことが大切と思います。国造り、人づくりの大切さを痛感しております。本気でシェルター作りも考える必要がありそうです。 

 医療と介護の連携についても、テレビの映像を見れば、実際に行われているではありませんか。その必要が目の前にあるからだと思います。 

 
以下、前回に続きその2を掲げます。 
 
 

■地域でのサービス提供体制は不十分 

 
 個人の日常生活はその家庭・住まいで展開される。高齢者へのアンケート調査では毎回、多くの対象者が自宅での生活の継続を望んでいる。入院を嫌い、過剰な医療サービスの提供は、特に本人自身は、望んでいない。 
 
 このような人々の一般感情・希望を念頭に、介護保険創設時において強調されたのが、在宅サービスの充実であった。そこでは、在宅生活を続けるためには介護・医療ニーズへの対応をしっかり行う必要があるが、家族力にすべてを委ねるわけにはいかない。家族を介護に拘束し、介護疲れで倒れるような事態を招いてはならない。女性を介護から解放すべしとも主張された。だから、介護を社会化し、外から家庭に必要なサービスを入れようと考えられたのである。 
 
 現実は、質・量ともに不十分。人材不足が叫ばれる一方、介護労働に対する報酬は高くない。そして、少し報酬を高め民間の力を引き出そうとしたら、不祥事が発生する始末。 
 
 地域包括システムに賛意を表する一人だが、喫緊の課題は人材の養成と多様な職種の量的確保である。あわせて、24時間短時間巡回訪問介護や夜間対応訪問介護のような様々な試みが民間の知恵と実行力で行われ、それを促進する公的援助が必要である。 
 
  • 報酬の一部を、一括交付金方式で保険者である市町村に交付し、地域の実情に応じたサービスの種々の試みを大胆に推し進める仕組みをこしらえることを提案したい。 

 

  • 医療・介護・生活支援サービスの3要素からなる関係職種でサービス提供チームを編成できるよう人材を確保し、複数チームを編成し、チーム毎に成果を評価し、平均以上の実績を上げたチームには成功報酬を支払うこともあっていいのではないか。 

 

  • 人材育成に金を惜しんではいけない。国がしなければならないことはこの部分である。介護・医療関係の職業訓練、職業転換支援、資質アップ、社会的評価の向上、報酬確保をきっちりと行うべきである。また、人的鎖国の開国、ことばや資格へのこだわりも見直すべき。 
 
 

■実は住まいが確保されていない。 

 
 自宅での生活に基本を置くも、心身の状態によっては病院や施設に入ることは避けられない。介護保険の発想は、心身の状態によって自宅と施設・病院を行ったり来たりするというものである。その時々に、QOL、安心・安全、人間の尊厳の確保にもっともふさわしい場所を選ぶという考えである。 
 
 実態は、絵に描いた餅に等しい。 
 
 トレンドとしては次のとおりである。高齢者の「終の棲家」である施設サービスの主役は、特養が占めてきた。しかし、その量的不足から、低価格の介護付き有料老人ホームが一時ブームを呼ぶ。そして、平成18年3月の有料老人ホームの総量規制と同年成立した「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者居住法)に基づく高齢者専用賃貸住宅(高專賃)が登場する。要件を充足すれば高専賃に特定施設入居者生活介護が適用されることとなり(平成19年(2007年)4月)、住処の主役の座が有料老人ホームや高齢者住宅へとって替わりつつある。 
 
 しかし、政策として住処の確保が打ち出されているわけではない。この点を明確にし、「町の中心部に全ての施設を集める」というアワニーの原則にしたがいコミュニティを形成し、医療と福祉を統合したケアを届ける「コミュニティケア」を実現していくべきである。(大規模地震後の街の再建もこのような発想を是非盛り込んでほしい。避難先には、核攻撃にも耐えられる適切に配置された大規模なシェルターも本気で考えるべき) 
 
  • 住処の確保と同時に、複雑で連携のない現在の施設・住まい・病院間の交通整理と連携の在り方とを明らかにすべき。例えば、①自立期 自立型居住施設、高齢者住宅(不動産業)②ロウケア期 サービス付き賃貸住宅、ケア付きホーム(不動産業、介護福祉事業)③ハイケア期 介護付きホーム(介護福祉事業)というように。 

 

  • 在宅・施設を通じ、医療提供は病医院の責任テーマであることを確認。また、介護サービスの提供は、関係職種の人々を人材として育成する。

 

  • 管理を専門とする組織に所属させ、施設等の要請に応じその組織から必要なチームを派遣する構図にしてみるのも方策の一つ。
 
 
--- 岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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