自由な立場で意見表明を
先見創意の会

公衆衛生しか知らない医師だが、ウクライナ問題を考察してみた

佐藤敏信 久留米大学教授・医学博士

まずもって、今般の侵攻で被害や苦痛を受けておられる方には衷心からお見舞い申し上げる。拙稿をお読みいただいているときには、一定の解決を見ていることを切に望む。

その上で申し上げると、私は平和主義者である。政治的な信条は持ってはいるが、今回はあえてそれとは関係なく、できる限り客観的な立場から考察してみる。

さて、筆者は留学の経験はないし、いわゆる国際派でもないが、厚生省入省以来、WHO等の会議に出席するようになった。日本の属するWHOの西太平洋地域事務局管内は、かつて大日本帝国陸海軍に蹂躙(?)された国が多く、それらの国の代表から、会議の合間に当時の日本の行動に対する議論を吹っ掛けられることがあった。そもそもそれまで自分の中であまり考えたこともなかったし、考えていたとしても明確な分析まではできておらず、それをまた英語で説明しなければならないので、本当に困惑した。

1990年代の後半になるとヨーロッパの会議にも出席する機会が出てきた。すると、ここでは独仏の距離感、ヨーロッパ大陸と英米の距離感のようなものを肌で感じることができた。とりわけ、重要な発言はフランスに任せ、ドイツが財政面も含めて裏方的にその後押しをするという姿勢が印象に残った。

こうしたドイツの立ち居振る舞いには第二次大戦とその後が関係していたことは間違いないが、筆者の印象では2009年のギリシア危機以降、その立ち居振る舞いにはっきりした変化がみられるようになった。一言で言うと、ヨーロッパの盟主を演じようとし始めたのである。その後のディーゼルゲートや気候変動問題、性急な原発廃止などを見ても、その行動は注意を持って見守る必要があるなと感じていた。

一方、医学や医療の関係者は、ウクライナと言えば1853~56年のクリミア戦争を思い出すのではないか。かのナイチンゲールが看護師として従軍し、そこで野戦病院における患者の入院時の症状と推移、病床の配置、病室の環境などの詳細データを統計学的な手法を用いて整理したという。その結果、野戦病院での死者の数は、戦死よりも、衛生状態の悪い病院での伝染病による死亡が多いことが一目で分かるグラフを作成し、衛生状態の改善を上層部に訴求した。これが奏功して、野戦病院の衛生状態の改善が図られ、その結果、死亡率の劇的な低減につながったという(注1) 。実践的な医療統計と病院管理学の祖なのである。

詳細は略すが、このように過去100年ほどを見てもこの地域は紛争の舞台であった。
そんな背景を踏まえつつ、今回の事態を俯瞰すると、気づかされることが相当にある。紙数の制限があるのでそれらを列挙することにする。

1.総論
(1)民主主義と意思決定
民主主義には欠点も多い。その最大のものは意思決定のスピードが遅いということだ(注2) 。しかし、今般の問題を見るに、権威主義的国家の場合、一部の指導者が暴走すると、それを止めることは簡単ではない (注3.4), ということだ。
とりわけ、ロシアの友好国であるはずの中国がまさに一連の冬季北京オリンピックを開催している最中に侵攻したのには驚かされた。
(2)力の信奉者
世界中が2つの大戦とその後の冷戦を経験したにも関わらず、相変わらず「力の信奉者」やそうした国があるということに驚かされた。クラウゼヴィッツの時代の「戦争は外交の一手段」(注5) が今日にも生きているということだろう。
(3)核戦争の脅威
シェリングらの抑止理論(注6) が広く理解されるに至り、近年、核保有国による核戦争の脅威は去ったかに見えたのだが、上述のように指導者が合理的な判断をせず、暴走するようなことがあれば、抑止にはならず壊滅的な被害・災厄が起こる可能性があるということに気づかされた。
(4)国連の実行力
筆者も、国連本体ではないまでも、その関連機関とその内情について多少は知っているが、それにしても実行力、影響力のなさをあらためて思い知らされた。つまるところ、第二次世界大戦の戦勝国と敵国、そしてその他大勢による単なる巨大な集合体というところだろうか。逆に、朝鮮戦争において、「国連軍(注7) と言う名称」の軍隊を送ることができたことに今さらながら驚く。

2.ロシアとロシア軍
(1)ロシアの側に立ってみれば、1949年のNATO創設以来、押されっぱなしだったという思いなのだろう。NATOに遅れて創設されたワルシャワ条約機構軍(注8) だったが、1991年には解散し、そればかりかかなりの国がかつての敵側NATOに加盟してしまった。
(2)(上述のこととも関係するが)ロシアは、仮に侵攻しても、冬季北京オリンピックの閉会式から同パラリンピックの開会式までの間に簡単に終結させられると考えていた節がある。
(3)ソ連及びロシアは、独ソ戦におけるソ連軍の粘り強い戦いぶりとその結果としての勝利と言う事実やその後の冷戦を通して、世界的にはアメリカと並ぶ軍事大国とみなされて(注9) きたが、今般のことで短期間の継戦能力すら疑わしいことが露呈した。
(4)また独ソ戦におけるT-34(注10) の活躍から、長年にわたって戦車大国とみなされてきたが、今般のことでその能力にも疑問符が付いた。
(5)関連して言えば、現時点でT-14(アルマータ)の投入は報道されておらず、近代改修されたT-72B3(注11) 、T-80が主力のようだ。つまり新型の戦車を開発しているものの、量産して配備するだけの経済力もないのではないかと想像される。
(6)その改修されたはずのロシアの新旧戦車が、FGM-148ジャベリン(注12)によって比較的簡単に撃破(注13)されている映像が映った。
(7)こうして見ると、ロシア軍は、2020年ナゴルノ・カラバフ紛争の経験(注14)に学んでいないか、学んでも不十分な対策のままウクライナに侵攻したのではないか(注15) 。
(8)逆に、ウクライナがそれを学んだか(注16)、その支援国がそうした経験を伝授した可能性がある。
(9)一方、中露関係の先行きは不透明だ。最近の中露関係しか見ていないと、両国は長年にわたって友好・蜜月関係にあるように見えるが、そうではなく、遡れば1858年の璦琿(アイグン)条約以来、中国は被害者意識を持っていたと考えるべきだろう。それが近年では1969年の中ソ国境紛争に繋がり、そうした両国の間隙にその後の米中、日中の国交回復がある。つまり、状況に応じて敵味方が入り乱れるというのがこれまでのところだ。仮に今般のロシアの行動に対して各国の批判が著しく高まれば、中国もその動きを読んで行動を変えてくる可能性がある。
(10)ロシアの輸出額の半分は「鉱物性燃料」つまり天然資源だが、「一般機械」も少なからずの寄与がある。輸出先を見ると、この一般機械の中身は「武器」なのだろう(注17)が、今般のことでその市場での評価が低下する可能性がある。つまり経済的にはますます困窮の度を深めるだろう。

3.米国の戦略
(1)中国の経済的、軍事的台頭により、パックス・アメリカーナにはっきりと陰りが見え、その結果軍事の面では二正面作戦を行えるだけの余力はなくなったように見える(注18) 。
(2)そのこともあってか、NATOとして本格的に支援する可能性もあったのに、直接的な軍事介入はしない方針のようだ。
(3)そうした中で、軍事情報の提供や武器の供与に留めるという戦略(注19)は、第三次世界大戦の回避と言う点では意味があるようだ。またそれなりにウクライナへの大きな支援(注20)にも繋がっている。
(4)おそらくは偵察衛星等による情報収集の結果があって、開戦前の数か月にわたって、ロシアの侵攻を世界に訴えたのだろうが、世界の多くは米国の単なるプロパガンダか杞憂と捉えたのではないか。一方、米国が、入手した情報を(相手に手の内を見せないために秘匿するのではなく、逆に)広く開示するという戦略を取ったのも新しい試みと言える。
(5)台湾や日本の立場に立てば、いざとなった時にも米軍による直接介入はなく、せいぜい口先介入か経済制裁程度にとどまるのではとの思いを強くしたのではないか。

4.中国
(1)中国に関しては、マスコミが種々報道しており、今さら書くこともないが、相当に苦境に陥ったことは間違いない。
①その最大のものは、ロシアとの立ち位置、関係を今後どうしていくのかである。
②すり寄れば同一視されるし、突き放しても中国の現時点における数少ない友邦を失くす。
③各国から、所詮、ロシアと同様の力の信奉者とみなされることは、今後の一帯一路の展開においても好ましくない。
(2)一方でロシアの実力が見えたことで、中国優位が明確になったのではないか。
(3)台湾問題を想起した人は多いが、中国の立場に立って考えると、自主開発・改良と主張しているが、ほとんどの兵器はソ連・ロシア由来(注21)であり、上述のように西側の携帯型兵器が一定以上の能力を示したことで、戦術の見直しを迫られるだろう。つまり、昨年来米国が注意喚起している台湾侵攻(注22)などは、戦略・戦術の練り直しになるだろう。

5.ドイツ
(1)日本人は過去にドイツから多くを学んだ(注23)。過去には留学する日本人も多かった。また第二次世界大戦では枢軸国の一員だった。近年では環境先進国との評価(注24)もあり、世代を問わずシンパシーのようなものを感じていた人は多いのではないか。
(2)しかし、結論を先に言えば、米中露の影響力に隠れてあまり見えないが、日本にとっては意外に要注意な国である。
(3)冒頭でも触れたが、第二次世界大戦後のドイツのスタンスをあらためて簡単に振り返っておこう。一つはナチスドイツの行為についての彼らなりの整理である。自身の犯した行為とそのもたらした結果についての論理的な整理とともに謝罪による信頼の回復を行ったつもりでいる。
(4)もう一つは仏独協調によるプレゼンスの確保である。日本の教科書はイギリス中心に書いてあるし、近年ではアメリカの力が強いので、どうしてもアングロサクソン中心のモノの見方になりがちだが、ヨーロッパに行ってみれば、それは必ずしもそうでないということがわかる。結局、古代ギリシア、古代ローマが全ての起源であり、それを受け継いでいるのはフランス他大陸の国々であると言う自負のようなものである。フランスの場合、ブルボン王朝からナポレオン三世にかけての栄光の記憶も残っている。そうした価値観の中では、所詮、イギリスは大陸ではなく、アメリカは強大だがヨーロッパの長い歴史から見れば新参者と言う評価である。つまり、第二次世界大戦後のパックスアメリカーナ、そしてそれに同調するイギリス、つまりアングロサクソン陣営に対する強烈な嫉妬・対抗意識が隠れているように思える。そうして、ヨーロッパの復権は仏独協調によってこそなされるとの考えだったのである。
(5)ところが、近年フランスの地位が相対的に低下し、またナチスドイツの残像が人々の記憶から薄れるようになって、ドイツはあからさまにヨーロッパの盟主としてふるまうようになった。2009年にデフォルト問題が起きた時のギリシア、イタリアに対する態度を覚えておられる方もあろう。
(6)日本の立場から言えば、シュレーダー、メルケル以降の日本に対する態度には目に余るものがあった。多くのマスコミや知識人はこれに気づかないか、気づいてもニュースバリューが低いと思ったのか大きくは報じなかった。
(7)例えば2015年の訪日だ。7年ぶりの訪日は、滞在わずか30時間。東京で訪問した場所や相手、発言内容を見ても、周到に準備された日本に対する嫌味にあふれたものであった(注25)。メルケルの対日観が窺い知れよう。
(8)シュレーダー、メルケルを含めてドイツの支配階層は、明らかに日本敵視政策であったのだが、これは、かなりの部分、嫉妬に由来すると考えられる。日本はドイツに学んだ分、産業構造や得意分野が重なっている。とりわけ自動車製造については発祥の地を任じながら、今やトヨタに代表される日本メーカーに押されている。
(9)そこで、目覚ましい経済発展を遂げる中国にすり寄り、いろんな手を尽くし、今や中国国内の自動車販売において確固たるブランドイメージを築くに至った。その過程で、鉄道の分野では上海への世界初のリニアモーターカー・上海トランスラピッド建設に協力したし、ドイツの新幹線ICEの技術なども惜しみなく提供した。
(10)それでも依然としてトヨタなど日本メーカーへの恐怖にも近い焦りはあった。その結果がディーゼル車重視政策であったのだが、これはいわゆるディーゼル・ゲートで破綻した。自動車産業のみならず国家ぐるみの犯罪的行為であったことが明るみになり、ドイツの工業技術への信頼と評価は地に落ちた。
(11)そこで、彼らは目先を変えようと自動運転だ、そしてEV車だと宣伝し、「トヨタに代表される日本メーカーは環境対策に後ろ向きだが、近い将来、ガソリン車はもちろんHV車もヨーロッパでは販売できなくなる」と世論工作をし、同時に規制を設けることとした。多くの日本のマスコミも無邪気にこの考えに乗った。
(12)それもこれもノルドストリーム2(注26)あってのことだろう。合理的なはずのドイツが原発を、そして石炭火力を矢継ぎ早に廃止するというのは、筆者の眼にもあまりに短絡的と映ったのだが、ロシアから天然ガスを輸入し、発電した電気でEV車を動かすという戦略だったのだろう(注27) 。
(13)つまり、近年は西側の各国とは違うドイツ独自の戦略の中で、露中とがっちり結びついていたのだ。
(14)しかし、これからはドイツにとっても(ロシアほどではないまでも)地獄が始まるだろう。ロシアからの天然ガス供給なしでエネルギー供給は足りるのかということである。
(15)したたかなドイツのことだから、おそらくまた手のひらを返して別の論理を組み立てて、それに沿った政策・キャンペーンを打ち出すのだろうが…。

6.日本
(1)重複するが、日米安全保障条約があるとはいえ、いざと言う時に米国の直接的かつ十分な支援が受けられるのかどうか疑問符が付いた。
(2)仮に支援が得られるとしても、自衛隊に支援が来るまで持ちこたえられるだけの継戦能力があるのかも心配になる。
(3)第二次世界大戦における占守島の戦い(注28)とその帰結に学べば、最低限の防衛は重要なのではないか。
(4)この時期に、鹿児島県鹿屋基地への米軍無人機MQ9リーパー配備検討(注29)や、三沢基地への大型無人偵察機RQ4グローバルホークの配備のニュース(注30) が流れたことは、上述の動きの中での一連の流れと捉えるべきだろう。後者は偵察目的の既定の導入としても、前者は武装型の無人機、それも米軍による配備であり、かなり重要な意味を持つ。
(5)2015年の安全保障関連法案の審議の際には、「戦争反対」を叫び国会周辺などで大規模なデモが起こったが、実際に戦争が起こってみるとそういうグループによる活動はほとんど見聞きしなかった。
(6)ロシアと平和条約締結及び北方領土問題解決への道のりは、これで遠くなった。もっとも、近年のロシアの動き(注31)を見ていると、この問題で日本と真摯に交渉としようと言う態度は既に失われていた。
(7)戦争の歴史、とりわけ近世の歴史を振り返ると、エネルギー問題がその根底にある。今回のドイツを他山の石として、これまで以上にエネルギー源の多様化と輸入先の多様化とを図る必要がある(注32)。
(8)近代の歴史や国際問題についての、国民の理解を深める(注33)必要がある。

7.終わりに
(1)ロシアは元より、中国も、今後の外交では相当に苦戦するだろう。
(2)ロシアの経済、軍事、外交などその総合力に対する各国の評価は著しく低下するだろう。
(3)戦争・紛争は決してあってはならないが、世界中にはいまだに力の信奉者が存在するということが明確になった。
(4)仮に侵攻された場合に、友好国を持っていたとしても適時適切に他国の支援が得られるという保証はない。
(5)西側の各国の中では、今後のドイツの行動を注視する必要がある。日本もマスコミを筆頭に、ドイツに対する片思い的親近感が強すぎる。冷静に丁寧に観察するべきである。
(6)ウクライナに学べば、武力の保持が侵略に対する一定の抑止力を持つということは言えるだろう。そして、そのために高価な最新兵器を購入し、それを誇示するだけでも意味があるだろう。しかし、実際の戦闘においては、ハイ・ローミックス(注34)のような柔軟な戦術と(人道的に許されるのかどうかは分からないが)無人兵器がよほど重要になってくることが明らかになった。
(7)冒頭にも述べたように、この問題の一日も早い解決を望む。

【脚注】
(注1)「統計データを駆使したナイチンゲール!」:奥積 雅彦(総務省統計研究研修所教官)統計図書館ミニトピックス号外2020年7月修正
(注2) 新型コロナ禍の対策においても、民主主義の意思決定のスピードの遅さが問題になった。以下の記事は、そんな権威主義における対策にも問題はあるとしている。「『権威主義の優位』、前提疑え 民主主義の未来」:東島雅昌・東北大学准教授(日本経済新聞オンライン・2021.8.19掲載) 
(注3) この原稿を書いている最中に、こんな記事を見つけた。Why the Ukraine crisis is so bad for western populists(西側のリベラル派にとってなぜウクライナ危機は悪いニュースなのか):Janan Ganesha  FINANTIAL TIMES, MARCH 8 2022. 日経新聞にも翻訳転載されている。
(注4)民主主義だから暴走しないとも言えない。トランプ前大統領がいい例だろう。日本のように議院内閣制であれば、その決断の内容とスピードは確かに緩慢だが、暴走は格段に抑えられる。
(注5)「縮訳版 戦争論」:日本経済新聞出版カール・フォン・クラウゼヴィッツ, 加藤秀治郎の60ページでは、次のような表現となっている。「戦争とは他の手段をもってする政治の継続に他ならない」。そしてその悦明は、「戦争は政治的行動であるだけではなく、政治(対外政策)の手段でもある。彼我両国の間で政治的交渉を継続するなかで、それとは別の手段を用いて、政治的交渉を継続する行為と言えよう。」となっている。
(注6) 「シェリングの抑止理論」:航空研究センター防衛戦略研究室 3等空佐 山本哲史
(注7) アメリカ以外にも派遣の規模は小さいながらイギリスなど合計16か国が兵力を提供した。韓国は当時国連非加盟。
(注8) 「ソビエト版NATO『ワルシャワ条約機構軍』」の誕生から解体まで」:2019年5月15日ボリス・エゴロフ RUSSIA BEYOND日本語版 ここでは、ソ連・ロシアの恨み節が聞ける。
(注9) 軍備を強化したいアメリカの産軍複合体が、ソ連・ロシア軍の武器その他の能力を過大に喧伝した可能性もある。1976年の函館空港MIG-25強行着陸事件の後、アメリカに移送されて研究された結果、MIG-25が想像したほどの能力ではなかったことに、西側の軍事関係者がむしろ驚いたという。
(注10) 詳細は略すが、「避弾経始」などの防御や、攻撃、生産性などあらゆる点で当時の戦車の一つの頂点であったとされる。
(注11) 高性能エンジンに換装され、爆発反応装甲が追加装備されるなど大幅に改修・改善されているとは言え、タネ車は型式が示すように1971年開発である。湾岸戦争で使用されたものは、輸出用のモンキーモデルだったと言われているが、一方的なやられっぷりをテレビ映像でご覧になった方も多いだろう。
(注12)詳細は略すが、現時点で最強とされる米国の歩兵携行式多目的ミサイル。装甲車両の装甲は、近年大幅に改良されているが、それでもなお装甲の薄い上部を狙うトップアタックモードが有効だったとされる。
(注13) 第一次世界大戦で初めて登場したタンク(戦車)は、長年にわたって地上戦の主役だったが、それが歩兵による攻撃に弱いとなれば、今後の戦い方に大きな変化をもたらすだろう。
(注14) アゼルバイジャンは、ドローンを本格的に使用した他、複葉機のAn-2と組み合わせるなど、いわゆるハイ・ローミックス戦略を駆使し、戦前の評価を覆して実質的に勝利したとされる。
Military lessons from Nagorno-Karabakh: Reason for Europe to worry(ナゴルノカラバフからの軍事的な教訓ヨーロッパが恐れる理由) (European Council on Foreign Relations Gustav Gressel Senior Policy Fellow Commentary 24 November 2020 )
もう一つは読売新聞の記事である。「自治州巡る戦闘でドローン猛威、衝撃受けるロシア…『看板商品』防空ミサイル網が突破される」(読売新聞オンライン2020.12.21掲載) この図の中には、重要な役割を果たしたとされるイスラエル製自爆ドローン「ハーピー」の活躍は描き込まれていない。
(注15) マスコミが言うように両軍の士気の問題はあるのかもしれないが、それは客観化、数値化できないのでここでは触れない。
(注16) トルコ製バイラクタルTB2が活躍しているとされる。
(注17) 経済産業省通商白書2018第1部 第2章第5節
(注18) ベトナム戦争以降、戦争は可視化された。写真や動画で見ることで、戦争による死が一般国民にも「わかる」ようになった。軍人であれ民間人であれ、戦争とそれに伴う死は、多くの国民にとって耐えがたいものとなった。つまり、これからは「死なない」戦争でなければ国民が許さないのだ。ベトナム戦争におけるソンミ村虐殺事件の報道などもあって、民間施設や民間人を巻き込む戦争は明らかに犯罪的行為とみなされるようになったし、戦闘員の死でさえ、よほどの大義名分がない限り許されない時代になった。つまり簡単に参戦できないのだ。アメリカにとってみれば、先のアフガン撤退の苦い記憶も残っている。
(注19) 考えてみると、これは日露戦争当時の英仏のスタンスに似ている。もちろん、2014年のクリミア危機において、ロシアの行動を結果として黙認してしまったことへの反省は生かされているのだろう、
(注20) 先の独ソ戦に置き換えてみると、ソ連の勝利も単にソ連の底力だけではなく、1941年から1945年までのアメリカのレンドリースプログラムによる、莫大な資金と武器・資材の提供が大きかった。ソ連はもっぱら戦車の製造に注力すればよかった。
(注21) 殲などの戦闘機がSu(スホーイ)のライセンス生産やコピーあることは知られているが、中国初の空母として2012年に就役した「遼寧」も、元々はロシアのヴァリャーグと呼ばれる空母であり、廃棄寸前となっていたものをウクライナ経由で購入し、大規模改修したのは有名である。
(注22) 今般のアメリカの情報収集能力から考えると、2021年5月から10月にかけて、何らかの明確な兆候があったのだと思う。5月には日仏米豪共同演習「アーク(ARC) 21」が実施されている。フランスはそのために強襲揚陸艦を派遣し、長崎県佐世保港に入港している。また同じころ、霧島演習場で、自衛隊と初の離島防衛訓練まで行っている。英空母HMSクイーン・エリザベスは5月に母国を出港し、9月には横須賀港に入港した。10月には海上自衛隊を含む6カ国の16隻が沖縄近海での大規模演習を実施している。日本のマスコミの扱いはどれも小さかった。
(注23) わが国の社会保障の分野の先生と言える。ワイマール憲法下の各種施策を学び、取り入れた。学んだ結果の一つが我が国の「健康保険法」であり、今年で100年を迎える。
(注24) 脱原発や再生可能エネルギー、EVの推進など、かけ声は素晴らしいが、その実現性については疑わしい。
(注25)メルケルは、日本の歴史問題にかかわる発言を行ったとされている(HUFPOST記事)。一方、中国とはどうかというと2005年の首相就任以来在任16年間で12回訪中している。
(注26) シュレーダーは、2017年ロシアの国営石油会社 ロスネフチの取締役に就任。2022年2月にはロシア国営のガス大手、ガスプロムが取締役候補に指名したとの報道もあった。
(注27) 言うまでもなく、フランスからは原子力で発電した電気を購入している。
(注28)多くの日本人は8月15日を終戦の記念日としているが、それ以降も千島列島でソ連軍に対する自衛的戦闘が継続し、そのことに一定の意義があったことに留意する必要がある。
(注29) 「自衛隊基地に初めて米軍無人機『MQ9』配備へ 鹿屋基地を検討」:NHKニュース(2022年1月26日 16時01分)。文中には明記はないがMQ-9は「武装型」の無人機である。先ほどのトルコ製バイラクタルTB2と比較すると価格も性能も数段上とされている。
(注30) 「空自、グローバルホークを三沢に3機配備へ」:Web東奥 2022年3月12日 
(注31) 2016年には新型の地対艦ミサイルシステムを択捉島と国後島に配備し、以来、2020年には地対空ミサイルシステムS300V4の配備、さらにこの3月にはそれを使った訓練を行った。
(注32) 直接的には地震が原因ではあるが、3月20日を過ぎて、東電管内の停電の可能性についてのお知らせが届いた。
(注33) 学校教育における歴史教育が、(教科書ではそれなりに記述されているにしても)授業自体はせいぜい第一次世界大戦まででとどまっているのは問題である。大学入試に出題されることが少ないのも要因の一つである。
(注34) 今般、ウクライナにおいて火炎瓶を製造し、実際に使用している画像が映った。投擲が中心だろうが、ドローンを使っての投下も行うとの説明だった。スペイン内戦で最初に使用され、1939年のノモンハン事件で大日本帝国陸軍がソ連軍のBT戦車に対して用いたものである。全共闘世代には懐かしいだろう。先ほどのAn-2ともどもローテクそのものと言えよう。

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佐藤敏信(久留米大学教授・医学博士)

◇◇佐藤敏信氏の掲載済コラム◇◇
◆「新型コロナ下の報道と衆議院選の結果から見えた日本のマスコミの限界」【2021.12.7掲載】
◆「コロナ禍は地域医療構想にも影響を及ぼすか?」【2021.8.3掲載】
◆「コロナ禍の中でウイルスの生存戦略に思いを巡らし、我々の取るべき態度を考える」【2021.4.20掲載】
◆「コロナを「正しく恐れる」とはいうものの」【2020.12.22掲載】

☞それ以前のコラムはこちらから藤 敏信(久留米大学教授・医学博士)

2022.03.29