コラム

    • 都市サステイナビリティの教育ワークショップ:高校編

    • 2016年06月21日2016:06:21:11:25:49
      • 森宏一郎
        • 滋賀大学 経済学系 教授

前々回のコラムで、「都市サステイナビリティの研究の一環で、滋賀大学とボゴール農科大学(インドネシア)で実施した、都市サステイナビリティを学ぶための教育ワークショップ」について書いた。今回はその続編として、岐阜県立大垣北高校で実施したものについて書きたい。
 
ワークショップに至る経緯としては、前回のボゴール農科大学で実施したものとは異なり、「研究の一環」として準備されたわけではなかった。別の2つのプロジェクトが始動していたため、教育ワークショップ活動は前回を最後に休止状態にあったのである。
 
スーパー・グローバル・ハイスクールに選定された大垣北高校は「アジアを学び世界をつなぐ1600人のリーダーの育成」を掲げている。大学や企業などの外部の力を導入したり、部分的に海外フィールドワークを実施したりしながら、高校生がアジア諸国を舞台に課題研究を行っている。
 
本年度はその3年目に当たり、過去2年間の反省から、高校生の取り組みが単なる調査型ではなく提案型になるように、ワークショップ等を導入しながら、何とか高校生の柔軟な発想を引き出していきたいという内容の相談を高校から受けたのである。
 
実は、前々回コラムを読んで、私へ辿り着いたということで、これは先見創意の会のおかげなのである。もっとも、最初から私のところへ話が来たというわけではなく、紆余曲折があって私のところへ辿り着いたというのが実態であり、私が誇らしげに語れるようなものはないのだが。
 
 

◆おもしろいことをやりたい!

 
ただ、最初から前回と類似のものをやる予定ではなかった。一つには、依頼元の高校側はワークショップだけを想定していたわけではなく、講演でもなんでもよいので、とにかく何かしてほしいというリクエストであったからである。
 
もう一つの理由は、前回のワークショップは使用した教材を含めて、大学生や大学院生を想定したものだったからである。高校生には難しいのではないかと思っていたのである。
 
しかし、単なる講演は実施側としてもおもしろくないし、自分が高校生だったら、大学の先生の話は進学後に聞けば良いと考えて集中できないだろうと思った。そこで、何か身近な話を用いて、具体的な作業を通じて思考し発表するタイプの活動をするしかないだろうということになった。
 
このとき、担当の高校の先生2人と私のチームが合意したことは「高校生の未来のために、何かおもしろい活動を高校生自身にやってもらおう。そのための仕掛けを用意しよう。」ということであった。当初、そのためのネタ探しを高校の先生2人にやってもらった。
 
高校の先生のネタ探し作業のおかげで、最終的に、前回の教材を高校生用に改変して、高校生用のワークショップを企画・実施する決意に至ったのである。もっとも、高校生320人を相手に、80人、120人、120人の3セクションからなる規模のものは初体験で、一つの挑戦的実験であった。
 
 

◆高校生の潜在力

 
前回と同様、ジャカルタを舞台にした、都市政策局長を主人公にした物語(ケース)を高校生に事前に読んでもらった。物語自体はフィクションであるが、物語に出てくるデータや将来予測は学術研究から得られた成果を利用しており、架空ではない。
 
高校生は主人公の都市政策局長になって、問題の分析を行い、どのような都市像を選択するかの意思決定が求められる。ただし、1セクション100分間という制約があるうえ、高校生がジャカルタに精通しているわけではないため、意思決定よりもそこに至るまでの作業プロセスを重視した。
 
私の想定精度が悪いということかもしれないが、高校生の活躍ぶりには驚いた。具体的に都市サステイナビリティに関わる個別的な問題を抽出し、付箋と模造紙を用いて、それらの関係図を作成し始めると、大学生たちが作成したものと遜色のないものが数多く出てきたのである(写真1~6)。
 
【写真1】高校生が作成した問題関係図A
 
これまでのスーパー・グローバル・ハイスクールのプログラム内容によって、高校生に素養が身についているというところが大きいのではないかと感じた。
 
加えて、高校の先生方の努力のおかげもあって、「どこかにある(?)正解を探すのではなく、自分の頭脳を信じて、答えをつくってみようじゃないか!」というメッセージを高校生たちが柔軟かつ素早く受け入れてくれたことが大きかった。
 
さらに、問題と問題の間にある関係を複合的に考えるという課題に対しては、全く反対の結論になるような複数の経路を理路整然と説明できる高校生が何人もいて、少し感動的でもあった。その中の一人は、ワークショップ後に、この種の勉強ができる大学はどこかという質問をくれた。
 
他方、高校生一般の集中力は2時間程度が限界なのかもしれないと感じる場面もあった。作業を停止し、まとめの段階に入ると、集中力が切れている様子が散見された。この問題に対処することは、私にとっても課題の一つである。
 
 

◆おわりに:創造的な協働の場をつくる

 
大人数の高校生を対象に、都市サステイナビリティの教育ワークショップをやってみたわけだが、一つの挑戦でもあり、予想通り、いくつも問題が出てきた。その中で一番大きなものは、やはり、主に時間の制約によって意思決定の提案まで行けなかったことである。
 
たしかに、そこに至るプロセスにおいて、良い意味で期待を裏切るような論理や説明が高校生によって提示された。しかし、創造性が最も発揮されるべきところは最後の意思決定の提案のところではないかと思う。
 
そこでは、決断の勇気が求められると同時に、決断に伴う限界やコストを考慮する冷静な頭脳も必要になる。この部分こそが、一番エキサイティングで創造的なプロセスになるだろう。
 
今回のワークショップは、高校生という、より長く将来を担うステークホルダーとの協働機会でもあった。超学際的研究(注1)の重要な一部分であり、若い世代と効果的に協働するための具体的方法を考え出していく必要があると考えさせられた。若い世代とともに挑戦を続けていきたい。
 
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(注1)超学際的研究とは、単に異分野にまたがって研究するということにとどまらず、研究の設計や成果の創出・普及のプロセスにおいて、行政、コミュニティ、市民、マスコミ、国際機関、NGO、NPOなどの多様なステークホルダー(利害関係者)を具体的に巻き込みながら行う研究のことである。
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【写真2】高校生が作成した問題関係図B
 
【写真3】高校生が作成した問題関係図C
 
【写真4】高校生が作成した問題関係図D
 
【写真5】高校生が作成した問題関係図E
 
【写真6】高校生が作成した問題関係図F
 
 
 
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森宏一郎(滋賀大学国際センター 教授)

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