コラム

    • 「国民連合政府」の虚妄

    • 2015年12月01日2015:12:01:10:03:08
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

志位和夫共産党委員長が得意の絶頂にいる。
 
安全保障関連法の成立直後に自らが仕掛けた「国民連合政府」提案に、ネタがなくなったマスコミが飛びつき、一躍、「時の人」になったためだ。
 
民主党内の現実路線派や維新の党などの否定的意見で構想が下火になったあとも、あちこちで「国民連合政府」構想を「唯一の道」として説いて回っている。
 
「どこかの政党を除くというのは問題にならなくなり、今は共産党との協力が野党の課題として当たり前になっている」。鼻息は荒い。
 
志位氏は「国民連合政府」構想について、「戦争法(安全保障関連法)廃止」の連合政府をつくるため、これに賛同する野党が国政選挙で選挙協力を行う―と説明している。
 
「戦争法案に反対する国民的戦いに、私たち(共産党)自身が参加し、国民の戦いの中で寄せられた『野党はバラバラではだめだ。結束して安倍政権を倒してほしい』という痛切な声を、私たち(共産党)なりに受け止め、『この声に応えるには、私たち(共産党)自身も変わらなければならない』と思いを定めて打ち出したものです。いわば、国民の戦いの中から生まれた提案だと私たち(共産党)は考えています」(10月27日の日本記者クラブでの会見で志位氏)と安全保障法反対運動の帰結でもあるかのような言いぶりだ。
 
しかし、2004年1月の第23回党大会で大幅改定された共産党の現行綱領には「日本社会が必要とする民主主義的改革を実行する政府」(不破哲三議長=当時)として「民主連合政府」の樹立がうたわれている。
 
それ以前の綱領では「『民主連合政府』というのは、革命に進んでいく過程の中間段階の政府であって、民主主義革命の任務を遂行する政府は『民族民主統一戦線の政府』であり、この政府が権力を握って『革命の政府』に成長・発展する」(不破氏)と規定されていた。
 
志位氏は現行綱領にも「民主主義革命を目指す民主連合政府」と「さしあたって一致できる目標の範囲での政府」が規定されていることを強調し、今回の「戦争法廃止の国民連合政府」が後者にあたると説明して、安全保障関連法成立当日に緊急開催した党第4回中央委員会総会(4中総)で、「国民連合政府」構想提唱の了承を得た。
 
言葉一つで粛清の憂き目にあう共産党ならではの言い回しを羅列してきた。だが、平たく言えば、「国民連合政府」なるものは、「異常な対米従属と、大企業による横暴な支配を打破し、民主主義革命を実行する民主連合政府」、それに引き続いて、「生産手段の社会化を中心とする社会主義的変革によって社会主義・共産主義社会を建設する」ための突破口と位置付けられる。
 
週末ごとに国会議事堂を取り巻いた安全保障関連法反対のパワーを自らの綱領路線の伸長に利用しようというのだ。
 
関連法成立当日に「国民連合政府」構想を提唱したのも、反対勢力を雲散霧消させず自陣営に取り込もうという周到な計算があったためだ。
 
野党第1党である民主党は、党内に安全保障関連法に理解を示す勢力も抱えているため、「法律が成立した以上、この問題から手を引き、経済運営や消費税率引き上げに伴う軽減税率の導入問題などで安倍政権を追い詰めていく」(中堅)構えだった。「共産党との共闘はもういい」というムードが、一部議員を除いて、党内では支配的だった。
 
岡田克也代表がいかに「空気が読めない政治家」(中堅)でも、こうした雰囲気に気付かなかったわけではないと推察する。
 
しかし、共産党に先手を打たれて動揺したのか、32ある参院選1人(改選)区での共産党票ほしさのためか、最初に、「思い切った提案だ」と評価してしまった。共産党戦略にうっかり乗ってしまった格好だ。
 
その後、前原誠司元代表、細野豪志政調会長、長妻昭代表代行らの突き上げを受けて、「共産党との連立はハードルが高い」「あり得ない」と順次、軌道修正を図ってきた。
とはいえ、綸言汗のごとし。岡田氏の「国民連合政府」構想評価は有権者の記憶に残ることになってしまった。
 
共産党にしてみれば、今回の「国民連合政府」構想提唱が党綱領路線に沿ったものだと強弁できる以上、絵に描いた餅に終わろうが、誰も責任を問われなくて済む。
 
「構想を壊したのは民主党だ」「民主党は戦争法廃止に消極姿勢を示した」と批判すれば、思惑通り、安全保障関連法に反対した勢力を取り込むことも可能だろう。
 
共産党にとってこれほど都合のいいことはない。
 
かくして志位氏は「国民連合政府」構想をひっさげて元気いっぱい全国を飛び回っている。心からお祝いを申し上げたい。
 
 
 
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關田伸雄(政治ジャーナリスト)

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