コラム

    • 休職期間満了時の復職について

    • 2015年07月28日2015:07:28:09:54:24
      • 尾畑亜紀子
        • 弁護士

1.休職の制度について

 
休職制度においてもっとも議論になるのは、業務外の傷病による長期欠勤が継続した場合の傷病休職である。この論点については2013年の原稿で言及したが、紛争が増加傾向にあること、最近の裁判例もあることから、再度検討したい。
 
傷病休職は、就業規則上、一定期間欠勤が続いた場合に会社の命令によって適用される。休職期間の長さは勤続年数などによって異なる規定となっていることが専らである。
休職期間中に傷病が軽快し、就労可能となれば休職は終了し、当該労働者は復職する。復職できずに休職期間が満了すれば、退職となる。
 
実務上問題になるのは、休職期間満了時の復職の可否である。
 
 

2.厚労省のモデル就業規則の規定

 
モデル就業規則では、休職の規程は以下のようになっている。
 
「第9条労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。①業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき○年以内 ②前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。」
 
なお、脚注には、「休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません」とあり、法文による規律がないために対応に苦慮する場合がある。
 
 

3.一般的な取り扱い

 
一般的な取り扱いとしては、休職発令に際して、ある程度の欠勤期間が前提となるために、就業規則に基づく一定期間の欠勤があれば休職させる扱いが多いと思われる。
 
もっとも、休職発令の際には、一定期間欠勤後に復職ができないのか、主治医の診断書を提出させるようにすることが肝要である。なぜならば、休職の開始は労働者本人の意向に沿う場合もあるが、そうでない場合もあり、会社としての判断となるので、できる限り客観性をもたせるような裏づけを準備しておくことが望ましいからである。
 
一般的に、主治医の診断書には、一定期間の休養、自宅療養等が必要である旨記載される。
 
 

4.復職の判断

 
休職発令後、一般的な就業規則では休職期間は長期で1年あるいは1年半と規定される場合が多い。かかる長期の休職の結果、休職期間満了時の復職は、容易でない。
 
もっとも、事業主としては、復職について慎重に判断する必要がある。
 
なぜならば、休職期間満了により、復職ができなければ、上記のとおり退職の扱いとなるからである。
 
休職していた労働者としては、そのまま退職するつもりはなく、復職を望むことも多いと思われるので、事業主としては、休職発令時と同様、自らの判断に客観性をもたせるよう努力しなければならない。
 
具体的には、主治医の診断書提出を求めるほか、診断書の内容について直接照会するために、労働者本人の同意を得て、主治医に面談を申し入れるとか、仮に主治医が復職可能という結論を出していたとしても、産業医に対しても意見を求め、場合によっては主治医の判断と異なる対応をしなければならないこともある。
 
 

5.近時の裁判例

 
上記の取り扱いについて近時の裁判例がある(横浜地裁平成27年1月14日決定)。
 
事案は、適応障害により3ヶ月の欠勤を経て、1年の休職期間に入った労働者が、休職期間満了退職とされたことを不服として、労働契約が存続している前提で賃金の仮払いを求めた賃金仮払い仮処分の事件である。
 
決定では、休職期間満了前に、主治医が、休職期間満了日に復職できない旨の診断書を作成したため、事業主において退職のための書類を労働者本人に送付した。その後、労働者から、主治医を通じ、通常勤務も問題ない旨の診断書が改めて提出された。それに対して事業主において主治医と面談したところ、労働者の希望に基づいて通常勤務が可能である旨の診断書を作成した事実が明らかになった、などの事実が認定された。
 
その上で、裁判所は、休職期間満了時に復職可能であったとは言えず、労働者に賃金請求権は認められないとして請求を却下した。
 
 

6.まとめ

 
以上のとおり、休職期間満了時の復職の可否の判断に当たっては、主治医に対する面談、産業医への受診と意見聴取を行なうことが、事業主の判断に慎重さを求める意味において必須と思われるのである。
 
 
 
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尾畑亜紀子(弁護士)

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