コラム

    • 生活期リハビリテーションの見直しの方向性とその意味-その1(全2回)-

    • 2015年05月26日2015:05:26:08:05:00
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに

 
団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が、現在推進されている。
 
ただし、2015~2025年間は、医療・介護ニーズの高い75歳以上人口が533万人(32.4%)増加する一方で、医療・介護の担い手となる15~64歳人口(生産年齢人口)は597万人(7.8%)減少する。そのため、要支援・要介護者の発生ならびに重度化を防ぐ「介護予防」や、それを実現するための手段としての「リハビリテーション(以下、リハ)」の機能強化が重要課題となる。こうした背景を受け、2015年4月の介護報酬改定、2018年の診療報酬・介護報酬の同時改定を見据えた上で、2014年9月に急遽立ち上げられたのが「高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たな在り方検討会」である。
 
本稿では、まず、同検討会での検討状況をベースに、生活期リハの現状と課題の整理を行う。次回、生活期リハ見直しの方向性とその意味について言及する。
 
 

■生活期リハの現状

 
ここでは、生活期リハに関する各種調査結果をもとに、主な現状を整理する。
 
1)リハに対する高齢者ニーズ
 
通所リハの利用者に対するアンケート(有効回答n=2,725)によると、リハ継続の理由としては、「身体機能を治したい」が79.0%と最も多く、次いで「筋力や体力をつけたい」75.7%、「歩けるようになりたい」61.0%、「日常生活を送る上での基本的な動作(移動や食事、排泄、入浴、着替えなど)ができるようになりたい」56.0%、「職員やなじみの仲間などと会いたい」54.7%、「痛みを治したい」52.9%、「専門のリハを受けたい」45.5%、「病気やけがになる前に行っていた趣味活動や仕事をするなどの社会的活動をできるようになりたい」42.3%、「買い物や掃除、料理など家事ができるようになりたい」36.3%などの順であった。
 
身体機能に対するニーズが高いものの、日常生活活動(Activities of daily living:ADL)や手段的ADL(Instrumental ADL:IADL)、社会参加に対するニーズも4~6割程度存在するなど、リハに対するニーズが多様であることがわかる(図1)。
 
図1. 通所リハの継続理由(本人・複数回答、n=2,725)
出所)第2回高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たな在り方検討会(2014年10月15日)、資料2-2「資料編」を筆者改変。
 
 
2)通所リハにおけるリハ内容
 
通所リハで実施されているリハの内容をみると、「筋力トレーニング」が86.6%と最も多く、次いで「関節可動域訓練」74.2%、「屋内歩行訓練」71.2%、「機能・ADL評価」32.0%、「起居動作訓練(寝返り、起き上がり、立ち上がり)」31.7%の順で、IADL訓練(2.3%)や社会参加訓練(2.2%)、患者・家族に対する介護指導(3.4%)などはほとんど実施されていなかった。
 
ここで、要支援者に対する実施率をみたが、「筋力トレーニング」90.8%、「関節可動域訓練」72.6%、「屋内歩行訓練」64.4%、「機能・ADL評価」34.9%、「屋外歩行訓練」19.5%の順で、IADL訓練(3.1%)や社会参加訓練(3.1%)はほとんど実施されていなかった。
 
図2. リハの実施内容(複数回答、n=3,302)
注.要介護度別内訳は、要支援1-2:827人、要介護1-2:1,658人、要介護3-5:808人、不明9人である。
出所)第2回高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たな在り方検討会(2014年10月15日)、資料2-2「資料編」を筆者改変。
 
 
3)要支援者に対するリハサービスの終了状況
 
介護予防訪問・通所リハの月間利用者に占める終了者割合をみると、通所リハ(n=7,636)では1.2%、訪問リハ(n=2,843)では4.2%であった。
 
 

■おわりに

 
生活期リハに関する各種調査から、
 
1) 要介護高齢者のリハニーズとしては、身体機能の維持・改善に関するものが多いものの、ADLやIADL、社会参加に対するニーズも4~6割程度存在するなど、多様なリハニーズが存在していた。
 
2) 通所リハで実施されているリハ内容をみると、身体機能へのアプローチが中心で、IADLや社会参加への支援、介護指導などの実施率は1割未満であった。なお、この傾向は、ADLがほぼ自立しているが、起居動作や歩行動作、IADLに支障を来している要支援者でも同様であった。
 
3) 要支援者に提供されているリハサービスの終了率は5%未満であった。
 
などがわかった。
 
こうした実態を踏まえて、今回、生活期リハのあり方(特に、インテーク(本人の意向や思いの確認プロセス)を含むリハマネジメントのあり方)の大幅な見直しが行われたのである。
 
次回は、今回の見直しの方向性とその意味について言及したい。
 
 
 
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川越雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)

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