コラム

    • 認知症高齢者/認知症ケアの現状と課題 -その2(全2回)-

    • 2015年01月27日2015:01:27:09:51:21
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

>>その1 に続く)
 

■はじめに

 
前稿では、近畿地区A市の人口・認定・給付データをもとに、認知症高齢者の性・年齢階級別出現率、認知症高齢者と非認知症高齢者の要介護度分布及び要介護度別にみた所在地の違いをみた。
 
本稿では、さらに、認知機能障害/行動・心理症状(BPSD)の発生状況、手段的日常生活活動(IADL)状況、要介護度の変化状況を分析した上で、認知症ケア提供上の課題について言及したい。
 
 

■認知機能

 
近畿地区A市の2011年9月時点の認知症要介護高齢者1,740人について、認知機能関連8項目に問題がある割合と要介護度の関係をみた(図1)。
 
ここで、これら割合が初めて30%以上となる要介護度を項目別にみると、「短期記憶」は要介護1、「日課の理解」「日常の意思決定」「季節の理解」は要介護2、「場所の理解」は要介護3、「生年月日の理解」は要介護4、「名前の理解」「意思の伝達」は要介護5であった。軽度要介護状態では近時記憶や問題解決能力/判断力に、中度要介護状態では時間や場所の見当識に、重度要介護状態では遠隔記憶や意思伝達能力に障害を来たしていくといった、認知機能の低下の流れがあることがわかる。
 
 
 
 

■行動・心理症状(BPSD)

 
BPSDの発生率をみると、「ひどい物忘れ」65.7%、「同じ話をする」45.4%、「感情が不安定」35.9%の順であった(表1)。ここで、介護負担感に影響すると思われる4項目(介護に抵抗/昼夜逆転/大声を出す/徘徊)の発生率を要介護度別にみると、昼夜逆転は「要介護4」、それ以外は「要介護3」で最も高かった(図1)。
 
 
 
 

■IADL

 
表2に、認知症群/非認知症群別にみたIADL4項目の性別要介護度別自立度割合を示す。
 
ここで、女性の要支援者の自立度を比較すると、薬の内服では「認知症群」57.5%、「非認知症群」89.8%、金銭管理では「認知症群」35.0%、「非認知症群」82.0%、買い物では「認知症群」27.5%、「非認知症群」42.0%、簡単な調理では「認知症群」50.0%、「非認知症群」74.6%と、全てのIADLで、認知症群の自立度が低かった。
 
 
 
 

■要介護度の変化

 
認知症群/非認知症群別にみた2011~2013年間の、要介護度別にみた重度化率の比較を図3に示す。
 
ここで、重度化率をみると、要支援1では「認知症群」86.7%、「非認知症群」57.0%など、全ての要介護度で、認知症群の重度化率が高かった。
 
 
 
 

■おわりに

 
A市のデータ分析から、
1)認知機能に関しては、近時記憶や問題解決能力/判断力→時間や場所の見当識→遠隔記憶/意思伝達能力の順に機能低下していた。
2)介護負担感の強い4つのBPSDの要介護度別発生率をみると、昼夜逆転は要介護4、介護に抵抗する/大声を出す/徘徊は要介護3で最も高かった。
3)要支援の女性のIADL4項目の自立度(実行状況)を比較すると、全ての項目で認知症群の方が低かった。
4)全ての要介護度で、認知症群の方が、要介護度の重度化率が高かった。
などがわかった。
 
今回、要介護3から、昼夜逆転などのBPSDの発生率が増加していることを明らかにしたが、前号で紹介した「認知症群の場合、非認知症群に比べて、要介護3から急激に施設やグループホーム等への入所率が増加する」という事実と突き合わせると、これらBPSDが在宅生活を困難化させている可能性が示唆された。認知症高齢者の心理状態や置かれている状況に十分配慮しながら、これらBPSDが生じている要因を分析し(身体的要因、環境的要因、薬剤の影響など)、適切な対処方法を専門職が如何に説明・助言できるかが、在宅生活を継続するための重要な要素となろう。
 
また、認知症高齢者のケアプランをみると、「通所介護」「訪問介護」の導入が多い。今回、IADLの実行状況をみたが、同じ要介護度で比べた場合、認知症群の実行率が低い(これら行為をしていない、または、させてもらっていない)。認知症高齢者にとって、「何らかの役割を担っていること」は非常に重要である。本人のIADLの能力を適切に評価し、出来る部分に関しては本人に行ってもらうなど、自立支援型ケアの提供を、IADLの動作評価ができるリハ職とケア職が協働する形で推進していく必要があると考える。
 
 
付記:本稿は、厚生労働科学研究費(長寿科学研究開発事業)「地域包括ケアシステム構築に向けた地域マネジメント力の強化手法ならびに地域リーダー養成プログラムの開発に関する研究」(H26−長寿−一般−009 研究代表者 川越雅弘)の成果の一部である。
 
 
 
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川越雅弘(国立社会保障人口問題研究所)

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