コラム

    • そして誰もいなくなった...祭りのあとの静けさ

    • 2013年08月06日2013:08:06:08:00:05
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

7月21日に投開票が行われた参院選は野党勢力の自滅に終わった。自民、公明両党が参院で過半数を得たことにより、衆参両院のねじれは解消され、安倍晋三首相は長期政権への基盤づくりに成功したかのように見える。
 
週刊誌などは、安倍政権が第9条を含む憲法改正や、締結国間で貿易に関する障壁を原則的に撤廃する「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定」に乗り出す―と警鐘を鳴らし始めている。
 
しかし、ものごとがそう簡単に進むだろうか。
 
 

■選択肢なき選択の結果

 
参院選結果を報じた新聞各紙1面の見出しは次の通りだ。
 
 朝日新聞 自公圧勝、衆参過半数 自民1強体制に
 
 毎日新聞 自民圧勝 ねじれ解消 民主惨敗 改選17
 
 読売新聞 自公過半数ねじれ解消 自民1人区圧勝29勝2敗 民主惨敗 東京も失う
 
 産経新聞 自公76「ねじれ」解消 民主17、細野幹事長辞意 安倍長期政権へ基盤
 
産経が「安倍長期政権」に期待を込めて言及したのに対し、朝日が「自民1強」に警戒感を示すといった違いはあるが、おおむね似たような見出しだ。
 
ただ、有権者の側から言えば、「ほかに投票する政党・候補者がない」という消極的理由で1票を投じたケースが多かったのではないかと思う。
 
参院選では自民党との「自共対決」を演出した共産党が、東京、大阪、京都の3選挙区で議席を獲得した。
 
さらに、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が選挙後の7月27、27両日に実施した世論調査で、自民党大勝の理由について「野党に魅力がないから」との回答が76.7%に上る一方、「自民党が評価されているから」と答えた人は19.4%にとどまった。
 
安倍内閣支持率は57.8%と前回(7月13、14両日)調査から1.7ポイント持ち直したものの、不支持率も3.5ポイント増の28.7%になった。
 
こうしたことを考え合わせると、完全な惨敗だった民主党や比例1議席に終わった社民党、議席を獲得できなかった生活の党にとどまらず、非自民勢力の結集を図れなかった日本維新の会、みんなの党など野党各党の“自滅”と言える。
 
その意味で、参院選翌日の新聞各紙の1面は客観報道ではあるものの、選挙結果の本質をとらえているものとは言い難い。
 
 

■順風満帆ではなく八方ふさがり

 
安倍政権が参院選結果をどう分析しているかは定かではないが、「アベノミクスが一定の評価を得た」との認識に立って、中長期の課題である成長戦略の最終決定に向けて動き出そうとしている。今後の経済の動向にもよるが、早ければ秋の臨時国会に関連法案の一部が提出される可能性もある。
 
アベノミクスについては、7月30日付の当コラムで滋賀大学国際センターの森宏一郎准教授も「時間軸に基づくアベノミクスの整理」という題で解説されており、門外漢として評価は避けるが、失業率の引き下げや実質賃金の上昇につながらなければ、国民の評価は一転して「長期政権」は絵に描いた餅になる。
 
外交においても、対中国、韓国との関係改善、その前提となる日米関係の再構築も、オバマ米政権が中国との直接対話路線を継続させている現状を鑑みると、十分な成果をあげているとは言えない。
 
TPPも交渉参加の冒頭から思惑の違いが浮き彫りとなった格好で、今後の展開から目が離せなくなっている。
 
さらに、福島第1原発では、 高濃度汚染水が地下水と混じって太平洋に流れ出す状態が続いているうえ、 3号機の原子炉建屋からの湯気が止まらず、格納容器内の水蒸気が漏れている可能性も指摘されている。
 
順風満帆どころか八方ふさがりを思わせる現状であり、安倍政権が「何でもできる」と言っているのは週刊誌の見出しだけだ。
 
参院選後の民主党内の責任論争は噴飯ものだが、安倍政権も多くの難問を抱えながら立ちすくんでいる。
 
まるで、祭りが終わって誰もいなくなった神社の境内のようだ。
 
その政権に何ができるのか? 安倍政権はどこへ行こうとしているのか?
 
マスコミにあおられることなく、事実に沿って冷静に注視していくことが国民に求められている。
 
 
 
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關田伸雄(政治ジャーナリスト)

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