コラム

    • 生前贈与の活用

    • 2012年12月04日2012:12:04:09:00:00
      • 上田峰久
        • 税理士

 

平成25年度税制改正では「相続税増税」が検討されている。相続税増税に備え、少しでも対策をしておくことが重要だ。
 
相続税対策の基本となるのは、相続財産を減らすこと。そこでよく言われるのが、「生前贈与」を使った方法である。
 
生前贈与により財産を移転する方法には「暦年課税の贈与制度」と「相続時精算課税制度」の2つの方法がある。
 
今回は、両制度の内容及び活用方法について整理する。
 
 

■暦年課税の贈与制度

 
(1)制度の概要
 
贈与税は、「その年の1月1日から12月31日までの間」に贈与を受けた財産の合計額が課税対象となる。暦年課税の贈与制度は、年間1人あたり、110万円までの基礎控除があり、超えた分について超過累進税率により贈与税を支払う制度である。
 
贈与によって財産を取得した場合には、原則として次の算式により計算した金額の贈与税が課税される。なお、その後に相続税の計算をする場合には、相続開始前3年以内に贈与により取得したものを除き、相続財産の価額に贈与財産の価額を加算する必要はない。
 
(算式)
課税価格=贈与財産の評価額-110万円(基礎控除額)
贈与税額=課税価格×贈与税率(10%~50%)-控除額
 
 
(2)活用方法
 
将来の相続税額を考慮した場合、贈与税を支払ってでも贈与した方が有利な場合がある。
 
つまり、「贈与税負担率」<「相続税負担率」の状況である。
 
ただし、相続税負担率は相続財産総額に応じて変化するため、まずは相続財産総額の現状把握が必要となる。
 
 

■相続時精算課税制度

 
(1)制度の概要
 
65歳以上の父または母から、20歳以上の子に対して贈与が行なわれる場合には、「暦年課税の贈与制度」、「相続時精算課税制度」のどちらかを選択適用することができる。
 
相続時精算課税制度を選択すると一生の累計で2,500万円まで無税で贈与でき、相続時精算課税を選択した贈与財産の合計額が2,500万円を超えた場合には、超えた部分に対して一律20%の贈与税が課税される。
 
(算式)
贈与税額={課税価格-2,500万円(特別控除額)}×20%
 
 
そして、この制度を適用した贈与者(父または母)の相続の際、相続財産額と相続時精算課税制度による贈与財産額の合計額に基づき相続税額を計算し、その算出された相続税額から既に支払った贈与税額を控除する。
 
その際、既に支払った贈与税額が相続税額から控除しきれない場合には、その控除しきれない額の還付を受けることができる。なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、「贈与時の価額」となる。
 
なお、相続時精算課税制度を選択した場合、その贈与者からの贈与についてはその後、暦年課税の贈与制度が使えなくなるため、注意が必要である。
 
(2)活用方法
 
相続時精算課税制度による贈与を受けた後に、相続が発生したときは、相続財産額と相続時精算課税制度による贈与財産額の合計額に基づき相続税額を計算するが、加算される金額は「贈与時の価額」であることから、評価額が低いときにこの制度を活用して贈与しておけば、その後の値上がり分については相続財産に反映されないことになる。
 
例えば、子が、父から時価3億円の株式の贈与を受けた後、評価額が上昇し、父の相続時には5億円(2億円上昇)になっていた場合、相続税計算上、相続財産額に加算する贈与財産額は、「相続時の評価額」ではなく「贈与時の評価額」であるから、加算される金額は3億円となる。相続時精算課税制度を活用した結果、上昇分2億円が父の相続税の対象ではなくなったことになり、ここに「相続時精算課税制度」の効果がある。
 
なお、相続時の時価が贈与時より下落していた場合には、逆の結果となるため注意が必要となる。
 
 
 
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上田峰久(税理士)

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