コラム

    • 人口構造の変化が医療・介護提供体制に及ぼす影響 -その1(全2回)-

    • 2012年09月11日2012:09:11:00:05:00
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

 

 ■はじめに 

 
 「社会保障・税一体改革大綱」に基づき、厚生労働省は、団塊の世代が後期高齢期に入る 2025年を ターゲットに、医療・介護サービス提供体制の改革に取り組もうとしているが、この制度改革の方向性に大きく影響を与えているのが「人口構造の変化(マーケットの変化)」である。
 
 本稿では、今後の人口構造の変化の特徴を整理するとともに、これら変化が医療・介護サービス提供体制に及ぼす影響について考察する。第1回目の今回は「人口構造の変化の特徴」について整理する。
 
 

■年齢階級別にみた人口の変化(表1) 

 
1. 年少人口(0-14歳)
 年少人口は1954年の2,989万人をピークに年々減少し、2011年現在1,671万人(総人口の13.1%)となっている。今後もこの傾向は続き、2025年には1,324万人(11.0%)にまで減少すると見込まれている。 
 
2. 生産年齢人口(15-64歳)
 生産年齢人口は戦後一貫して増加を続け、1995年に8,726万人(69.5%)に達したが、その後減少局面に入り、2011年現在8,134万人(63.6%)となっている。今後もこの傾向は続き、2025年には7,085万人(58.7%)にまで減少すると見込まれている。2011-2025年間で約1千万人の生産年齢人口が減少するのである。 
 
3. 前期高齢者人口(65-74歳)
 65-74歳人口は、2011年現在の1,504万人(11.8%)が、2015年に1,749万人(13.8%)まで増加した後減少局面に入り、2025年には1,479万人(12.3%)になると見込まれている。 
 
4. 後期高齢者人口(75-84歳、85歳以上)
 後期高齢者のうち、75-84歳人口をみると、2011年現在の1,064万人(8.3%)が年々増加し、2025年には1,442万人(12.0%)に達すると見込まれている(増加率36%)。ただし、2025年以降は減少局面に入っていく。 
 
 次に、85歳以上人口をみると、2011年現在の407万人(3.2%)が年々増加し、2025年には736万人(6.1%)に達すると見込まれている(増加率81%)。85歳以上人口はその後も増加を続け、2040年に1,037万人(9.7%)まで達した後、やや減少するものの、2050年から再び増加に転ずると見込まれている。 
 
 
 
表1. 年齢階級別にみた将来推計人口(単位:万人)
出所)国立社会保障・人口問題研究所(2012):日本の将来推計人口(平成24年1月推計)より作成。
 
 
 

■都道府県別にみた年齢階級別人口の変化(2010-2025年間) 

 
1. 年少人口(0-14歳)
 2010-2025年間は、全ての都道府県で年少人口が減少する。 
 
 人口減少率を都道府県別にみると、沖縄県(▲16.3%)、東京都(▲21.5%)、滋賀県(▲22.2%)、鹿児島県(▲24.0%)で低く、和歌山県(▲34.3%)、秋田県(▲32.7%)、奈良県(▲32.7%)、富山県(▲32.6%)で高くなっている。 
 
2. 生産年齢人口(15-64歳)
 2010-2025年間は、全ての都道府県で生産年齢人口が減少する。 
 
 人口減少率を都道府県別にみると、東京都(▲2.8%)、沖縄県(▲3.7%)、愛知県(▲5.3%)、神奈川県(▲5.9%)で低く、秋田県(▲26.8%)、青森県(▲23.1%)、和歌山県(▲22.2%)、長崎県(▲21.5%)で高くなっている。 
 
3. 前期高齢者人口(65-74歳)
 2010-2025年間は、1道23県で増加、1都2府20県で減少する。 
 
 人口増減率を都道府県別にみると、沖縄県45.3%、鹿児島県17.4%、福島県14.5%、佐賀県14.4%で高く、大阪府(▲21.2%)、京都府(▲14.1%)、和歌山県(▲11.1%)、山口県(▲10.7%)で低くなっている。 
 
4. 後期高齢者人口(75-84歳、85歳以上)
 75-84歳人口をみると、2010-2025年間は、1都1道2府40県で増加、3県で減少する。 
 
 人口増減率を都道府県別にみると、埼玉県(89.4%)、千葉県(77.2%)、神奈川県(66.7%)、愛知県(59.3%)で高く、山形県(▲2.4%)、秋田県(▲2.1%)、鹿児島県(▲1.0%)、島根県(1.0%)で低くなっている。 
 
 次に、85歳以上人口をみると、全ての都道府県で40%以上増加する。 
 
 人口増加率を都道府県別にみると、埼玉県(148.4%)、神奈川県(138.0%)、千葉県(133.9%)、大阪府(131.5%)で高く、島根県(43.6%)、高知県(47.8%)、鳥取県(48.8%)、鹿児島県(50.1%)で低くなっている。 
 
 

■まとめ 

 
 人口構造の変化のポイントを整理すると、 
 
・年少人口(0-14歳)は、1954年から年々減少しており、2025年には総人口の11.0%にまで減少する。
 
・医療や介護の従事者となる生産年齢人口(15-64歳)は1995年から減少局面に入っており、2011-2025年間に約1千万人の減少が見込まれている。
 
・生産年齢人口は、2025年までの間、全ての都道府県で減少するが、減少幅は大都市部ほど小さい。
 
・前期高齢者(65-74歳)の増加は2016年をピークに減少局面に入る。
 
・後期高齢者のうち、85歳以上人口の増加が今後顕著となる(特に、都市部において)。
 
などである。 
 
 高齢化が先に進んでいる都道府県では、今後の後期高齢者人口の伸びは緩やかである一方、生産年齢人口の減少幅は大きいため、医療・介護従事者確保が困難化する可能性が高い。一方、都市部の場合、生産年齢人口の減少幅は小さいものの、後期高齢者、特に85歳以上人口が急激に伸びるため、看取り対策や在宅医療の確保問題などが顕在化する可能性が高い。なお、これら傾向は、都道府県間だけでなく、同一県内の県庁所在地周辺の二次医療圏と郡部の二次医療圏でも生じることになる。 
 
 
 次回は、年齢階級別にみた医療・介護サービス受給状況の現状を整理した上で、これら人口構造の変化が、医療・介護提供体制の構築に及ぼす影響について言及したい。
 
 
 
---川越雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)

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