コラム

    • いつか来た道

    • 2012年06月19日2012:06:19:00:00:05
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

 

 野田佳彦首相が「社会保障と税の一体改革」を今国会で実現しようと悪戦苦闘している。年金も医療も財政破綻のふちにあり、「待ったなし」と言われ続けた抜本改革を先送りにしてきた歴代政権と比較すれば、志は立派である。
 
 だが、予算委員会を含む衆参両院での法案審議状況や、民主党と自民、公明両党との修正協議の様子をみていると、「いつか来た道」の危うさを思わざるを得ない。「いつか…」とは、自民、旧社会両党を軸とする「55年体制」における、「足して2で割る」政治決着だ。
 
 細川連立政権の誕生による自民党の政権脱落以降、一時期の自社さ連立時代に同じような政治決着が図られたことはある。
 
 だが、「マニフェスト(政権公約)政治」が注目されるようになったため、とくに民主党への政権交代後は、政策課題に関する政党間の取引はほぼ完全に姿を消してきていた。
 
 かつて政党間取引の主戦場だった各党の国会対策委員会が国会日程の駆け引きだけを行う場になったのもこのためだ。
 
 しかし、衆参両院のねじれの中で、消費増税関連法案などの重要法案を成立させようとすれば、政治的な妥協は避けて通れない。
 
 党内に小沢一郎氏や鹿野道彦氏など消費増税に批判的なグループを抱える野田首相は、自民党や公明党の対案や注文を丸飲みしても、消費増税関連法案を成立させようとしてきた。13日の政府・民主三役会議で早々と「(一連の修正案を自民党と)共同提案できるよう努力してほしい」と指示したのも、こうした意欲の現れだ。
 
 民主党が修正案骨子で「中長期的な公的年金制度改革は、必要に応じて社会保障制度改革推進会議で議論し結論を得る」と先送りを打ち出したり、目玉だった、幼稚園と保育所を一体化する「総合こども園」創設を撤回したりしたのも首相の指示を受けてのことだ。
 
 なりふり構わぬ消費増税路線。よくも悪くも「歴史に残る宰相」になることだけを夢見ているとしか思えない。
 
 しかし、「足して2で割る」「対案まる飲み」で政策的な整合性が維持できるはずはない。消費増税を含めて双方の思惑が錯綜する制度が生まれ、近い将来の抜本見直しが必要になる。それは「55年体制」下における政策決定の歴史が証明している。
 
 「現下の政治状況を考えればやむを得ない」という声も聞こえてくる。だが、税制、社会保障制度という国民生活の基本にあたる政策課題でこうした手法が許容されるのか。前回のコラムでも指摘したが、国民の支持を失っている政権がマニフェストに反する消費増税を強行し、そのうえで「話し合い解散」や「大連立」によってすべてを煙に巻こうとしているのだろうか。こうした愚政を続ければ、与野党ともに国民の信を失い、この国の政治は再びあてどなく漂流することになる。
 
 
 
--- 關田伸雄(政治ジャーナリスト)

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