コラム

    • 寄附と税

    • 2011年08月09日2011:08:09:00:05:00
      • 鈴木克己
        • 税理士

 

 震災を受けて、義援金や寄附金が注目されている。知られていないことであるが、寄附と税は結構密接な関連がある。 
 
 今回は、寄附と税について整理したい。 
 
 

■寄附と税

 
 今回の震災を受けて、多くの企業が寄附金や義援金を積極的に拠出している。 
 
 株式会社が寄附をした場合、相手先や使途によって株式会社側で損金に算入される額が異なることをご存知だろうか? 
 
 たとえば、株式会社が震災復興活動を行う目的のNPOや公益法人に寄附金を拠出しても、原則として、一定額の範囲内でしか損金算入できない。 
 
  

■企業による復興支援 

 
 企業による復興支援の例として、ヤマトホールディングス(ヤマト運輸)が挙げられる。 
 
 ヤマトホールディングスが東日本大震災の復興支援のために今年度において、宅配する荷物1つについて10円を自社と関係のあるヤマト福祉財団(公益財団法人)を通じて寄附することを決めた。寄附の総額は100億円を超える額になるそうである。 
 
 相手先がいくらヤマトホールディングスと関係が深いとはいえ、運営面で厳しい制限と監督を受ける公益財団法人であり、使途も水産業や農業の復興に直接助成するとされている寄附であることから、当然その全額が損金に算入されると考えるが、原則は、寄附の相手が公益財団法人であったとしても全額が損金に算入されない。 
 
 その一方で国や地方公共団体などに寄附する場合や緊急性、かつ、重要性のある寄附であるものとして財務大臣の指定を受けた寄附金については全額が損金に算入される。 
 
 結局、ヤマトホールディングスの場合、東日本大震災の復興支援のためということで財務大臣の指定を受けることができ、寄附金の全額が損金に算入される予定である。しかし、このような寄附金が財務大臣の指定を受けるのはきわめて異例であり、我々、税務の世界に生きる者も驚いた。 
 
 ちなみに仮に指定寄附金を受けられなかった場合、ヤマトホールディングス側で損金算入が認められるのは20億円程度と言われており、寄附する額の大半が損金に算入されなかった可能性が高い。 
 
 

■企業の寄附金と税制

 
 企業が寄附金を支出した場合には、次の3つに区分して損金算入額が計算される。
 
 
(1)国や地方公共団体に対する寄附金・財務大臣の指定を受けた寄附金
 
 これらの寄附金は、公益性の高い寄附金としてその全額が損金に算入される。 上述したヤマトホールディングスの例は、財務大臣の指定を受けた寄附金として全額が損金に算入されることになる。 
 
(2)特定公益増進法人に対する寄附金 
 
 公益財団法人など公益的な団体に対する寄附金をいい、支出した寄附金の一定額が損金算入される。ヤマトホールディングスの場合、財務大臣の指定を受けなければ、この寄附金の区分に該当することになり、一部だけが損金算入される。
 
(3)その他の寄附金
 
 上述した(1)、(2)以外の寄附金でこちらも一定額のみが損金に算入される。 
 
 
 寄附金は、ともすると税逃れに活用されやすい側面もあることから、すべての寄附について損金算入を認めるという方向性は正しいとはいえないと考える。 
 
 しかしながら、今回の震災の用に緊急性が高い事象に対する寄附金については、迅速に、かつ、積極的に財務大臣の指定による寄附金が活用されるべきであろう(実際、ヤマトホールディングスのように従来では考えられなかったような指定が行われつつある)。 
 
 損金に算入されなくても高い志に基づいて寄附を行うべきではないかという意見もあるだろう。しかしながら、企業は株主の目、債権者の目など様々な利害関係者の理解を得る必要があり、寄附と損金算入の関係は無視できないであろうし、損金算入は寄附のインセンティブになる。 
  
 今回の震災を受けて、寄附に関するご相談を多く受けるが、国や地方公共団体へ単純に寄附するよりも自分たちが考える復興支援の在り方(国や地方公共団体を挟んでの寄附ではなく、自分たちが考える方法で被災者に直接支援したい)というお話が非常に多い。こんなところにも現政府への不信が表れているように思う。 
 
 
 
---鈴木克己(税理士)

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