コラム

    • 民主党政権の最後の選択肢は

    • 2011年07月26日2011:07:26:00:05:00
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

 

 日本の政治は現在、究極の閉塞状況にある。
 
 与党・民主党と野党の自民党、公明党が平成23年度第2次補正予算案に加え、特例公債法案、再生エネルギー特別措置法案の審議を円滑に進めようと交渉をしているにもかかわらず、最高責任者であるはずの菅直人首相は自らの不適切な政治献金問題について真摯に答弁しようとせず、国会運営のブレーキ役になっている。 
 
 こんな首相にはお目にかかったことがない。
 
 
 菅首相の不適切献金問題は一部のマスコミしか報じていないので若干説明が必要だろう。 
 
 首相の資金管理団体が日本人拉致事件容疑者の長男が所属する政治団体から派生した団体に計6250万円を献金していたというものだ。 
 
 政治団体にはよど号ハイジャック犯の故田宮高麿元リーダーと、石岡亨さん=拉致当時22歳、松木薫さん=同26歳=を欧州から北朝鮮に拉致したとして国際手配されている森順子(よりこ)容疑者の長男が所属、この長男は今年4月の東京都三鷹市議選に立候補したが落選している。 
 
 現時点では政治資金規正法に抵触する可能性は低いとされるが、菅首相は政府の拉致問題対策本部長であり、道義的責任は免れない。 にもかかわらず、拉致容疑者側を支援している団体に献金した責任についての菅首相答弁は「三鷹市議選に立候補した人物については全く承知しておらず、私が謝るとか謝らないとかいうことにはならないと思う」というものだった。 
 
 そのあと、拉致被害者家族の増元照明さんが参考人として「今回の献金問題で横田早紀江さん(拉致被害者・横田めぐみさんの母)は『何を信じていいかわからない』『本当に私たちの家族を取り戻してくれる政府なのか』と吐き気がするほど具合が悪くなった」と追及した。 
 
 しかし、菅首相は「(献金した団体が拉致容疑者と)関係があると認識していなかったが、そういうことがあるとすれば、そうした関係の濃いところとの政治的な付き合いは控えていきたい」「そういう関係があったとすれば、連携などの活動をしたことについて大変申し訳なく思っている」と釈明するにとどまった。 
 
 「知らなかった」で済む話かどうか。いくら政治資金規正法がザル法だとはいえ、相手の氏素性を知らずに、6250万円もの献金をするということがあり得るのか。
 
 
 内閣支持率はすでに20%台に低迷しており、自らも東日本大震災からの復旧に「一定のめど」がついた段階で退陣する意思を示したはずの菅首相の悪あがきに対抗する手段はないのか?
 
 法律的に首相は内閣不信任決議案が可決されなければ自らの意思に反して辞任する必要はない。不信任案が可決された場合も衆院解散という手段に訴えることができる。
 
 
 そこで問われるのが民主党の自浄能力だ。このままの状態が続けば、民主党は国民全体から見離されることになる。そのことへの危機感は根強く、中堅・若手も菅降ろしに動きつつある。党内では8月上旬に代表選を強行し、菅首相を民主党代表の座から引きずり降ろし、その後の震災対策、原発事故対策などについて野党との協議を円滑化させる奇策も浮上しているという。 だが、そんな悠長なことでいいのか。
 
 海江田万里経済産業相は菅首相の「脱原発依存」発言について「個人的な発言とおっしゃるわけだから、共有しているかどうかは鴻毛より軽い」と述べた。最近では国会答弁に臨むにあたり、掌に「忍」の文字を書いて出席している写真が新聞に掲載された。
 
 主要閣僚、党三役が自らの職を賭して菅首相を説得する。退陣要求が受け入れられなければ連袂辞職する。究極の政治的閉塞を打破する方法はそれしか残されていない。
 
 
---關田伸雄(政治ジャーナリスト)

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