コラム

    • これでいいのか 居直りの論理

    • 2011年05月24日2011:05:24:00:05:00
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

 

 「まるで居直り強盗のような」と思ってしまうのはおかしいだろうか。 
 
 
 菅直人首相は中部電力への浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)停止要請で世論の支持を幾分か取り戻したものの、その前の内閣支持率は政権維持の危険水域といわれる20%台前半を低迷。在日韓国人から政治資金の提供を受けた政治資金規正法違反は東日本大震災の発生でうやむやになったままだ。 
 
 震災や福島第1原発事故への対応もすべてが後手にまわり、被災者の不安と怒りを限りなく増幅させてきた。「原子力に詳しい」という首相の自負を信じる人は皆無であり、ほとんどの人が反菅感情を募らせている。 
 
 
 だが、彼は辞めない。周辺に「支持率が一桁になっても」と漏らし、復興対策のための平成23年度第2次補正予算案の提出も8月以降に先送りして、6月にフランスで開催予定のサミット(主要国首脳会議)出席を含め、政権への居直り姿勢を鮮明にしている。 
 
 「千年に一度の大災害のあと、原子炉がメルトダウン(炉心溶融)するという、前代未聞の危機にある現状の中で、政治的空白は許されない」という意見もある。もっともらしく聞こえるが、それは政権が機能しているという前提に立った話だ。 
 
 浜岡原発停止要請以外は無策で、震災から2カ月経過しているのに被災者に安心感すら与えられないリーダーが存在することそのものが「政治的空白」だ。最大の懸案である被災者対応や復興対応も、いくつも立ち上げた○○本部や復興構想会議に丸投げしたままで、誰が何をどこで決めているのかもわからない「政治不在」が続いている。 
 
 「代わる人がいない」との声も聞く。確かに与野党問わず人材は払底しており、国民の大多数が「この人なら」と納得する候補はいないかもしれない。だが、「誰がなっても菅よりはいい」という意見が巷間に満ちているのも事実だ。 
 
 
 自分では辞めない首相をクビにするには、内閣不信任案の可決が必要となる。だが、野党である自民党や公明党は可決のめどが立たない状況での不信任案提出に及び腰であり、菅首相に批判的な民主党の小沢グループもクビを切ったあとの政治状況を見極められずに右往左往している。情けない限りだ。こうした混乱が菅首相を居直りに駆り立てている。 
 
 
 未曾有の危機にありながら政治的リーダーシップが存在しない日本を国際社会はバカにしている。「日本ブランド」が見向きもされなくなれば、海外進出企業の経済活動にも大きな影響が出るのは間違いない。 
 
 
 明治維新の際に最後の将軍・徳川慶喜は大政奉還を行い、江戸に戻ってからも恭順の姿勢を貫いた。戊辰戦争は各地で繰り広げられたが、慶喜が官軍との全面対決を決意していたら、日本は真っ二つに割れ、もっともっと多くの血が流れただろう。 
 
 それと比較しても、菅氏が政権に居座っているために日本が国家として立ち行かなくなるのを黙って見ていていいのだろうか。居直り強盗を野放しにしておくという選択はないはずだ。
 
 
--- 關田伸雄 (政治ジャーナリスト)

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