コラム

    • 法人税制の税制改正を鳥瞰する

    • 2010年12月28日2010:12:28:00:05:00
      • 鈴木克己
        • 税理士

(本コラムを執筆している時点で)民主党への政権交代後2度目の税制改正がまとまろうとしている。昨年度は政権交代直後ということもあり、目立った改正事項のない穏やかな税制改正であったが、今回の税制改正は昨年度とは違い大きな改正項目がある。 

 
 今回は、法人税制の税制改正項目を鳥瞰し、整理したい。 
 
 なお、内容は本コラム執筆時点(平成22年12月13日)のものであることから、最終的には内容に一部修正があり得ることをご承知置き頂きたい。 
 
 

■減税と増税のコンビネーション 

 
 一言でいえば、“減税と増税のコンビネーション”。 
 
 減税となるのは、税率の引き下げである。具体的には2種類の引き下げが予定されている。 
 
 一つは法人税実効税率の5%引き下げである。実効税率の引き下げであることから、国税である法人税の税率を引き下げることはもちろん、それに連動して計算される法人住民税も減税される。一般企業の場合、法人税と地方税を合わせた実効税率は、40.86%といわれていることから引き下げ実現により35%程度まで引き下げられることになる。 
 
 もう一つは、中小企業向け軽減税率(期末資本金1億円以下の法人につき年800万円までの所得について認められている税率)について、18%が15%に引き下げられることになる。 
 
 これらは明らかな減税措置であるが、国際的な水準からはまだまだ高い(たとえば、アジア諸国や欧州は20%台が主流)ことから、一段の引き下げを求める意見もある。 
 
 併せて、引き下げに伴い生じる1兆5,000億円(中小企業の税率引き下げ分を合わせると1兆5,700億円)といわれる税収不足については、企業に対する増税で約半分の8,000億円を賄うとしている。 
 
 その増税で影響が大きいと思われるのは、減価償却の縮小と繰越欠損金の利用制限である。減価償却については、償却率(毎年度減価償却費として経費にする率)を見直し、購入してすぐに大きな償却費が計上される今の仕組みから償却をスローペースにする仕組みに変えることが予定されている。この結果、購入初期に経費になる金額が少なくなることから、増税となる。 
 
 購入初期の償却額が少なくなってしまうので、高額な医療機器などの購入を予定している場合には、この改正による影響を考慮し、設備投資のタイミングを検討する必要が出てくるかもしれない。 
 
 繰越欠損金は、過去の赤字をその後の黒字と相殺できる制度である。過去の赤字について相殺できる期間を現行の7年から9年に延長はされるが、相殺できる黒字は8割まで(つまり、2割は課税対象。従来は全額相殺が認められていた)に制限することで、結果、増税となる。 
 
 

■雇用促進税制の創設 

 
 新しい制度としては、税制による雇用の促進を図る趣旨で議論されていた雇用促進税制が導入されることになる。 
 
 具体的には、雇用保険の一般被保険者数が前事業年末より10%増加しており、かつ、前事業年度の支払給与総額が一定基準で増額されていることという要件を満たせば、増加した従業員1人当たり20万円を法人税額から控除するという制度になりそうだ。 
 
 この制度は、医療法人も当然対象になるものと思われ、新規事業の開始や新規施設の開設の際に適用が受けられる特例として注目される。 
 
 

■全体的にもう一つという評価も 

 
 新聞紙上などでは、法人税制の改正について、税率の引き下げなど思い切った施策が打ち出されたものの、もう一つという論調が多い。 
 
 実際、引き下がった後の実効税率は、国際水準から見ればまだまだ高い水準にあり、引き下げに伴う税収不足の大半を税率の引き下げで恩恵を受ける企業への増税で補うというチグハグな格好になっている印象も受ける。 
 
 国際水準といえば、減価償却の償却率の見直しも国際水準に近づけ、企業の設備投資を促すためいう趣旨で導入されたものを元に戻す結果となり、ここも一貫性がない。 
 
 企業の競争力の強化、そして雇用の回復、景気の回復、、、、そのために、税ができることは何かという深い議論は、3度目の税制改正(?)に先送りされた印象もある。
 
 
--- 鈴木克己 (税理士)

コラムニスト一覧
月別アーカイブ