コラム

    • 政治不在=民主ポピュリズムの陥穽

    • 2010年12月21日2010:12:21:00:05:00
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

 菅直人首相が国営諫早湾干拓事業(長崎県)で潮受け堤防排水門の5年間開門を命じた福岡高裁判決を受け入れ、上告を断念することを表明した。

 
 野党時代に諫早湾干拓事業を批判し続けてきた「初心」を貫いた格好だが、長崎県は事前調整なしの一方的な上告断念に強く反発、鹿野道彦農水相の現地入りを拒否するなど、事態は混迷の一途をたどっている。
 
 民主党政権が地元自治体や住民とトラブルになったのは、群馬県の八ツ場ダムの建設中止、沖縄県の米軍普天間飛行場移設に続いて3例目だ。いずれも同党のポピュリズム体質が原因と言える。
 
 八ツ場ダム建設中止は民主党が政権交代を成し遂げた衆院選のマニフェストに明記されていた。鳩山政権で国土交通相に就任した前原誠司・現外相が地元との意見交換もなにもなしにいきなり建設中止を明言したため、群馬県だけでなく同ダムの恩恵を受けることになっていた東京都、埼玉、千葉、茨城、栃木各県が激怒して中止撤回を要求、最近になって馬淵澄夫国交相が撤回を示唆したものの、建設容認の住民らは「信用できない」として現地での意見交換を拒否する状態が続いている。
 
 普天間移設問題もご存じの通り、鳩山由紀夫前首相が衆院選で「最低でも県外」と演説して回ったばかりに、沖縄県民に過剰な期待を与え、米国との板挟みにあったあげく、社民党の連立離脱による鳩山退陣につながった。名護市への移転に柔軟な姿勢を示していた仲井真弘多知事も「県外移設」を公約せずにいわれなくなり、未だに先行きの見通しは立っていない。
 
 諫早湾干拓事業をめぐっても、長崎県が国の上告断念を批判、県議会は上告を求める決議を行い、議長らが首相官邸に申し入れを行った。
 
 反対運動が日本の外交・防衛問題と直結し、いわゆる「活動家」が自らの存在意義を示すために「反対のための反対運動」を主導している普天間移設問題も含めて、大規模プロジェクトには常に賛否両論が存在する。それが自らの利益・不利益につながるかどうかもあるが、地元住民には自らのふるさとの未来をどう描いていくかという思いもある。
 
 民主党政権はそういう事情を無視して、自民党政権時代にプロジェクトに反対していた住民や活動家の話だけを聞き、「けしからん」とパフォーマンスを繰り返してきた。
 
 しかし、それは政治ではない。理想を掲げるのは結構なことだが、現実の政治はどうやったらソフトランディングできるかを念頭に置きながら、賛成(容認)派と反対派に対応する必要がある。政権としての当初の判断が間違っていたという結論に至ることも覚悟しなければならない。
 
 マニフェストを掲げて選挙を戦い、勝利して政権の座に就いたらそれを実現していくというのはあくまで理想だ。ただ、それぞれの思いが複雑に絡み合う現実に対応するには理想だけでは不十分だ。
 
 プロジェクトにかかわってきた官僚も含め、関係者の話を徹底して聞き、どうやったらソフトランディングできるかを考え、十分な事前調整を行ったうえで最終的な政治決断をする。レイムダック(死に体)と化している菅政権に求めても無駄かもしれないが、あえて「それが政治の要諦だ」と申し上げたい。
 
 
--- 關田伸雄 (政治ジャーナリスト)

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