コラム

    • 師走

    • 2010年12月14日2010:12:14:10:58:24
      • 中村十念
        • (株)日本医療総合研究所
        • 取締役社長

 師走である。賞与の季節でもある。従業員の賞与の資金調達に走り回っている医療機関の医師も多いのではなかろうか。

 
 銀行が医療法人に金を出し渋るようになってから久しい。例の貸出先ランキングが出回り始めてからずっとそうである。
 
 そもそも医療法人は過小資本体質である。個人しか出資者になれないし、出資者になっても配当が受けられないので出資する人は限られる。途中での増資も実質的には不可能だ。等々の理由による。
 
 過小資本は、利益が出ている間はあまり問題にならない。損失が出始めると問題が発生する。過小資本ゆえ、あれよあれよという間に債務超過に陥ってしまう。利益の蓄積が小さいという面もある。債務超過になると貸出先ランキングのD(破たん懸念)、E(実質破たん)に該当するからだ。これに赤字が加わると、銀行は、絶対というほど、金を貸さない。担保を出してもダメ、という門前払い状態になる。
 
 他方、過小資本ゆえに、経営改善が奏功すれば、債務超過を脱するのも早いという特色もある。しかし、そのようなことは考慮もされず、銀行は、企業も医療法人も同じ基準で審査する。その結果、資金繰りはそうでもないのに、破たん懸念先とか実質破たん先とかのレッテルを貼られて、退場させられる。
 
 銀行が貸してくれないとどうするのか。身内や知り合いから借金するしかない。まず自分、それから家族、先輩・同輩から、となる。それでも足りないと高利貸し、そうなるともうダメである。そしてこのような金廻りの悪さは、経営者自身を受け身・小出し・言い訳の負けパターン体質にしてしまう。
 
 
 この話は、どこかで聞いたような話である。
 
 日本の今の話である。
 
 日本政府の財政は、借金なしではまわらない。どこから借金しているかというと、主に国民から国債という形で借金をしている。
 
 よく国民一人当たりいくらの借金と言われるが正しくない。国民一人当たりいくらの貸金というのが正しい。銀行が国債の買い手になっているから、一見銀行から借金をしているように見えるが、銀行の金も元は国民の預金である。
 
 つまり、政府は身内からの借入に頼っているのであるが、その身内が国債を買ってくれなくなるのではと恐れている。そのあまり、身が竦んで、金縛り状態だ。「破たん懸念先」あるいは「実質破たん先」と見なされているのではないかという心配が原因だ。ただし、それは、国の資本がわからなくては何とも言えない。「資本=資産ー負債」である。「負債>資産」でなければ、「資本<0」ではないので、破たん懸念とか実質破たんとか言えないはずだ。
 
 政府の心配も無理は無い。どこまで正しいか不明だが、財務省は、政府財政は平成20年度末で300兆円超の債務超過であると発表している。これを信用するなら、毎年2兆円ずつ利益を出しても150年しないとプラスにならないという立派過ぎる債務超過であり、実質破たん先である。
 
 しかし、バランスシートをよく見ると、政府の固定資産がわずかに182兆円しかないことになっている。逆粉飾の懸念もある。
 
 負債は間違いなかろうから、政府の資産の見える化を急ぐべきだ。それが出来てはじめて、借入金について筋の通った議論が可能になる。その際には、政府の資産と国民の資産を混同しないことが大切なのは、言うまでもない。(医療法人の従業員が豊かであることと医療法人自体が豊かであることは無関係であることと同じ)
 
 医療法人と国に共通に言えることは、次のことである。
 
・「理念なき経営は最低であり、利益なき経営は最悪である」ことを深く認識すべき。政治も同じである。
・会計システムの整備に努力すべき。
・新たな借金は弁済の財源を考えてから行うこと。
 
 
 良い年はしばらく来ないと思いますが、せめて来年も生き延びられる年であることを願っています。
 
 
--- 中村十念 ((株)日本医療総合研究所 代表取締役社長)
 
 

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