コラム

    • 菅民主党政権の驚くべき統治能力のなさ

    • 2010年10月12日2010:10:12:00:05:00
      • 關田伸雄
        • 政治ジャーナリスト

菅政権が誕生してから4カ月が過ぎた。だが、やったことと言えば、参院選で大敗したことと、民主党代表選で小沢一郎氏を破って再選を果たしことぐらい。驚くべき統治能力のなさを露呈している。

 
民主党代表選は、マスコミによる世論誘導の影響もあり、民主党の党員・サポーターが小沢氏の政治資金問題に「ノー」の審判を下した結果だ。菅直人首相―仙谷由人官房長官ライン(いわゆる反小沢勢力)は「政治とカネ」の問題を強調し、「世論」という印籠を掲げて小沢支持勢力を切り崩した。
 
しかし、国会議員票では接戦となり、勝ったとはいえ、菅氏は足元の民主党内に半数近い批判勢力を抱える結果に。小沢氏を含め菅批判勢力は政権打倒のチャンスを虎視眈々と狙っている。
 
この間、中国漁船が沖縄・尖閣諸島近くの領海を侵犯し、停船させようとした海上保安庁の巡視船に体当たりする事件が起きた。海保は漁船を確保して石垣島に曳航、船長を公務執行妨害容疑で逮捕した。
 
尖閣諸島は一度も中国領になったことがない、わが国固有の領土であり、漁船の確保と巡視船を損傷させた船長の逮捕は当然だ。菅氏や仙谷氏は「わが国の国内法に則って粛々と処理する」と表明した。
 
那覇地検は船長の勾留を延長、起訴に向けた準備を進めた。ほかの事件と比較しても、勾留を延長したケースのほとんどが起訴に至っており、多くの国民が「毅然とした対応」を期待していた。
 
にもかかわらず、尖閣諸島周辺に地下資源が眠っていることが明らかになったころから「釣魚島(尖閣諸島の中国呼称)は中国の領土だ」と急に主張し始めた中国政府は、船長逮捕に強く反発、ニューヨークで行われた国連総会に出席した温家宝首相まで国際社会に向けて声高に「日本の非」を喧伝した。
 
多くの国民が「対抗して国際社会に『中国の非』をアピールすればいい」と考えたのではないか。ところが菅政権の対応は違っていた。那覇地検に外務省担当課長を派遣し、「状況説明」に全力をあげた。結果は「今後の日中関係にも配慮した」船長の釈放だった。
 
菅、仙谷両氏らは「地検の判断」を強調し、政治介入を行わなかったことを強調している。だが、「法と証拠」の徹底順守だけが求められる検察当局が、日中関係という極めてナイーブな政治的ことがらに配慮する事態はあってはならないことであり、政治介入の結果であることは明白だ。
 
中国で旧日本軍遺棄化学兵器処理事業を受注しようと調査を行っていた準大手ゼネコン「フジタ」の社員4人が、軍事管理区域に入り込んでビデオ撮影を行っていたとして身柄を拘束された影響もあるのだろう。しかし、4人のうち3人は解放されたものの、1人は依然として「人質」としてホテルに軟禁状態にある。
 
国内需要の大部分を中国からの供給に頼っているレアアースの輸出を中国政府が事実上差し止めるという経済的な攻勢も、菅氏らのいうところの「地検の判断」に影響を与えたようだ。
 
人質と輸出入、つまり、本来、国家が最低限守らなければならない「人命と財産」を握って中国は攻勢をかけている。国際社会の目もあって、いきなり乱暴なことはできないはずだが、中国はわが国に刃を突きつけながら、同盟関係にある米国の出方まで冷静な目で探っているのである。
 
菅氏は欠席予定だったアジア欧州会議(ASEM)の首脳会議に急きょ参加して「日本の立場」を説明しようとしたが、「ときすでに遅し」の観は否めない。
 
4カ月間もあったのに何もせず、中国の恫喝にオロオロしている菅政権は、国民にも国際社会でも呆れられている。
 
臨時国会が本格化しても、衆参ねじれ状態が続くままでは、自らの成果をアピールできるような政策遂行はまったく期待できない。このまま何もできない政権は、わが国とって有害以外に何ものでもない。
 
 
--- 關田伸雄(政治ジャーナリスト)

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