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先見創意の会

「おひさまネット」―地域の高齢者を見守り、支え合う組織

岡光序治 (会社経営、元厚生省勤務)

50年には1世帯の平均人員が2人未満に

国立社会保障・人口問題研究所が4月12日、世帯数の将来推計を発表。それによると、1世帯当たりの平均人員は20年の2.21人から50年には1.92人になるという。1人暮らしの世帯の割合は20年の38%から、50年には41%となり、65歳以上の一人暮らしが全世帯に占める割合が20年の13%から50年には21%になるという。
今後は子供を持たず、いざというときに頼れる近親者のいない高齢者が急増する可能性が高い。

地域での取り組み。一例の紹介

地域の人同士によるあいさつや気軽な声かけをすることで見守り、支え合おうというもの。見守りを希望する人が地域包括支援センターに登録し、近隣の人が「見守り協力隊」となって行う、緩やかな見守り活動である。ちなみに、筆者の住んでいる地域の状況を紹介する。小学校区の人口 4,330人、65歳以上人口1,833人(令和5年9月)、登録者23名(要介護6名・要支援7名)、登録保留者15名(要介護2名・要支援2名)
登録を検討してほしい高齢者は、フレイル、認知症、要介護になっているか、恐れのある方であろうから、その割合を仮に65歳以上人口の5%と置くと91人余り、登録者に保留者を加えても二つの数字がかなりかけ離れていると言えそうである。

果たして、この仕組みは機能しているのかという疑問は湧いてくる。現に、協力員の交流会を開いたところ、仕組みの存在を疑問視する声が聞かれた。あわせて、登録者の協力者に対する過剰期待―好意で支援の手を差し伸べたら、もっと違うことをもっとしてほしいと要望が次々に膨らみ、手に余る事態になり、協力隊を止めたい、という声も出た。

期待できる機能には限界があることは承知しているが、繋がりのあるコミュニティ作りの一つの手段になると考え、自治会活動の中でより普及することを目指し、まずは、その仕組みの周知に努めている。

プロソーシャルの心理と行動の育成

パンデミックからの教訓として、西欧では、アジアにおけるプロソーシャルな行動に注目する動きがある。自ら守るとともに他にうつさないー例えば、人が集まる場所ではマスクをする、積極的にワクチン接種を継続的に行うなど―利他的な行動を通じて社会に参加しようとする傾向に着目しているという。

我が国におけるコロナ対応がそのように評価できるのかすぐには納得しかねる気持ちもする。自立の名の下で実は孤立しつながりのないまま、潤いのない、カサカサの心理状態で「利他」活動が期待できるのか、という疑念である。しかし、このことを論じる必要はない。むしろ、プロソーシャルな行動が一層行われるようにこの動向をチャンスととらまえるべきだと思う。

今行っている例と考えられるものとして、新聞販売店と地域団体が協定を結び、新聞受けから新聞があふれていれば、販売所から地域団体に通報してもらう、郵便物も同様に郵便局から団体に連絡してもらう。連絡があれば、団体が地域の民生委員に連絡し場合によっては警察や消防も一緒に当該のお宅に行き安否確認するわけである。買い物・通院の際のライドシェアで確認を相互に行う、などもあげることができる。資力と人的協力が得られれば、高齢者と子供を対象にする食堂を開設したい。

そして、提案しているのは、水道局の協力である。水道メーターの傍に流量測定センサーを設置し、測定結果を定時間隔で自動的に飛ばし、各戸毎にデータを把握する。各戸で水が流れないことは異変を疑わせる。水道局に各戸の流量がゼロないしそれに近い状態を選別・キャッチするAIを置いてもらい、異常を把握した時点で地域団体に通報してもらう、仕組みである。(流量測定センサーを設置し各戸の流量が自動的に把握できればーこのようなネットワーク作りはすでに商用として提案されている―検針員は不要になる。その人件費を測定センサー設置費に充当すればこの仕組みは設置可能である。)

また、有給休暇制度において、地域活動を含め利他活動に従事する有給休暇制度を導入すべきである。ちなみに、PTAに加入したくないという父兄が増え、学校関係者は困惑している。夫婦で共に仕事をしているからPTA活動に参加する時間がない、というのが表向きの理由である。また、公園や道路の清掃に若い年齢層が参加しない口実がなくなる。
園芸福祉活動は有力なツールである。老いも若きも子どもも種をまき、花を育てれば、気持ちは豊かになり、街もきれいになる。広島の漁協は、海岸で貝堀隊を編成、海岸の再生と貝堀の復活を試みている。この線から行くと、取種林を開発し一本一本の木の所有者になってもらい木を育て種を採取する。こうした例にみられるように、若い年齢層―なかでも大学生ーや子どもに着目し、ちょっとした利益と学習に関連付ければ、利他につながる活動は組織化できるものと考える。この際、皆でアイデアを出し、小さな試みを足元から行う社会的ムードをこしらえることが肝要と思う。

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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

◇◇岡光序治氏の掲載済コラム◇◇
◆「どうする地域社会福祉?」【2024.1.16掲載】
◆「「孤独死防止策に関する提案」【2023.10.3掲載】
◆「どうする地域社会福祉?」【2023.7.11掲載】
◆「少子化対策私見」【2023.4.18掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧ください。

2024.04.30