自由な立場で意見表明を
先見創意の会

急がれる「ヤングケアラー」の救済

河合雅司 (ジャーナリスト、人口減少対策総合研究所 理事長)

「ヤングケアラー」という言葉をご存じだろうか。本来ならば大人が担うような家事や家族介護を日常的に行っている子どものことである。

驚くことに中学2年生の17人に1人が、そんな環境に置かれているのだ。中には、学校から帰宅した後に7時間以上も従事している子どもいる。子どもたちの〝声なき悲鳴〟に耳を傾けなければならない。

ヤングケアラーの実態については、厚生労働省と文部科学省が中学2年生と高校2年生を対象に初めて実態調査を実施し、今年4月にその結果がまとまった。

浮き彫りになったのは、想像以上に広がっていたことだ。中学2年生で家族を世話している人は実に5.7%に上っていた。学校の各クラスに数人は「ヤングケアラー」がいるということだ。しかも、45.1%がケアに従事する回数について「ほぼ毎日」と回答しており平日の世話に費やす時間は平均4.0時間であった。

一方、全日制高校の2年生は4.1%が該当していた。「ほぼ毎日」が47.6%を占め、平日に費やす時間は平均3.8時間であった。
このうち、1日に「7時間以上」という過酷な状況にある人も、中学2年生の11.6%、高校2年生は10.7%といずれも1割以上を占めていた。

ケアしている対象としては「きょうだい」が最も多く、中学2年生の61.8%、高校2年生の44.3%を占めた。次いで「父母」 (中学2年生で23.5%、高校2年生29.6%)、「祖父母」(同14.7%、22.5%)が続いた。

「父母」と回答した人に、父母の状態を聞いたところ、中学2年生、高校2年生とも「身体障がい」が最も多かった。また、「祖父母」の世話をしている人では、要介護や認知症の家族をケアしている人も少なくなかった。

担う仕事の内容は、食事の準備や洗濯などの家事が多いが、幼い兄弟姉妹の保育園の送迎、祖父母の散歩といった外出の付き添いや入浴などの身体的介護など多岐にわたっている。

ヤングケアラーが生まれる要因の1つが、少子高齢化である。昔に比べて頼れる親族が減り、家庭内に介護を担う大人がいないというケースが増えたのだ。必然的に中学生以上の年齢の子どもに〝しわ寄せ〟が回っているということである。

もう1つの要因は、親の働き方の多様化に行政サービスや公的支援サービスが追い付いていないことである。共働き世帯が増大したことに加えて、夜間や日曜日などに出勤せざるを得ない仕事が増えているためだ。

こうした時間帯は介護サービスの利用が難しい場合が多く、結果として子どもが同居する祖父母や障がいのある兄弟姉妹のケアをしなければならなくなっていのである。

長い時間をケアに費やすことによる弊害は甚大だ。自分の時間を取ることができなくなることはもとより、宿題や勉強に十分な時間を割けないという人も少なくない。

中学2年生の16.0%、高校2年生の13.0%が「宿題や勉強をする時間が取れない」と回答している。「学校に行きたくても行けない」という人までいる。「睡眠時間が十分に取れず、授業中に眠くなる」、「集中力が途切れ、勉強に影響がある」といった切実な声も寄せられている。

進路変更を余儀なくされた人や進路変更を考えざるを得なくなっている人は中学2年生の4.1%、高校2年生では5.5%に及んでおり、人生設計にまで深刻な影響を及ぼしている。

ヤングケアラーの難しさは、実態が把握しづらい点にある。そもそも、子どもの場合、自分の仕事内容を十分理解していないケースが少なくないのだ。

本来、子どもが担うには困難な仕事であっても、家の手伝いぐらいに受け止めていることが多い。自分自身をヤングケアラーと認識している人は中学2年生で1.8%、高校2年生も2.3%にとどまっており、当たり前のこととして特段意識していない人は少なくない。「やりたいけれど、できていないこと」についての質問に対しても、「特にない」と回答した人が中学2年生で58.0%、高校2年生では52・1%といずれも過半数を占めた。

実態調査からは、学校で悩みを打ち明けづらい実態も浮き彫りになっており、「相談した経験がない」と答えた人は中学2年生で67.7%、高校2年生で64.2%であった。

「相談経験がない」と回答した人のうち、「誰かに相談するほどの悩みではない」との回答が中学2年生で74.5%、高校2年生で65.0%であった。「相談しても状況が変わるとは思えない」と諦めている人も中学2年生で24.1%、高校2年生で22.8%に及んでいる。教師が欠席日数の多さや学習態度といった「変化」を敏感に察知しないと、表面化しづらいということである。

自治体などには児童支援の体制もあるが、虐待対応に追われて人の手当てが十分にできていないところが少なくないのだ。

子どもに過度の負担をかけることは、学業や進路への影響だけでなく、健全な発育や人間関係の構築を阻む悪影響が懸念される。

解決にはヤングケアラー自身への救済だけでなく、介護サービスの充実や親の勤務形態に合わせた公的支援の拡充など、家族全体への対応が必要となる。

収入がギリギリで止む無く子どもに介護を委ねて親が働いているというケースも少なくないからである。「介護離職」とも隣合わせで、ヤングケアラーを減らせても世帯の収入が激減し生活が困窮するのでは真の解決にはならない。

ヤングケアラーへの支援は世界的課題でもあり、各国が対応を迫られている。菅義偉首相が支援を表明し、政府は早期発見や支援の強化に取り組む構えだが、対策は広範にわたる。子どもの成長を考えれば時間的余裕もない。縦割り行政を排除し、包括的かつ迅速な政策展開が求められている。

ーー
河合雅司(ジャーナリスト、人口減少対策総合研究所 理事長)

◇◇河合雅司氏の掲載済コラム◇◇
◆「DX成功の秘訣は『リスキリング』の充実だ」【2021.1.12掲載】
◆「コロナへの”過剰な恐怖心”が、日本を破綻に追い込む」【2020.9.22掲載】
◆「コロナばかりに目を奪われるな」【2020.5.19掲載】

☞それ以前のコラムはこちらから

2021.05.18