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若い医師に「学校医」体験をーー地域医療を知る一歩に

楢原多計志 (福祉ジャーナリスト)

「学校医が足りない」。新年度を控え、地方自治体は学校医の確保に躍起になっている。
なり手不足が深刻化し、1人の学校医が10校以上を掛け持ちしているケースも珍しくないという。子どもの病気の早期発見や健康維持を目的とする学校医は「地域医療の最前線」にいる。医学部授業や医師研修に学校医体験を組み込めないだろうか。

▽月額7万円

小中高は学校保健安全法で学校医を置くことが義務付けられている。学校医の人選は教育委員会が地元の医師会や医療機関を通じて推薦してもらうケースが一般的で、内科医が最も多く、眼科医、耳鼻咽喉科医、整形外科医、小児科医が続く。

学校医のなり手不足が顕在化、深刻化している。以前は離島や過疎地で目立つ程度だったが、最近では大都市でも問題になっている。首都圏の教育委員会職員は「何回も拝み倒してやっと継続していただいた」と苦境を語った。

なり手不足の原因は何か。横浜市の学校医(内科クリニック経営)は、「学校健診は平日の日中に実施する。通常の診療を中断(休診)し、学校に出向いて短時間の大勢の子ども診なければならないことが大きい」と体力的、経済的な負担の大きさを挙げる。医師は60代。「妻からそろそろ辞めたら言われている」と苦笑した。学校医の高齢化も問題だ。

報酬の低さも原因の1つ。自治体によって報酬額は異なるが、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)がことし1月に公表した「学校医活動の充実に関する考察①」(アンケート調査)によると、1校あたりの報酬額は年間「20万円未満」が53.8%で最も多く、次の「20~39万円」34.7%を加えると、約9割は月額7万円余で引き受けていることなる。

▽制度疲労

文部科学省も学校医不足を認め、その負担軽減策を探っている。昨年5月に立ち上げた担当者・有識者による調査検討会で「公立小学校1校あたりの学校医数は2.81人、中学校2.77人、高校2.52人(2024年度学校基本調査)だが、医師1人が複数の学校を兼務しているケースもあるなど都道府県でばらつきがあり、地域によっては学校医を募集しても応募がないなど確保が難しくなった」などと現状を説明した。

同検討会で、日本学校保健会の委員は「厚生労働省の資料では診療所の医師が後継者を決めず、80歳で廃院すると、2040年には関東で41%の診療所の医師がいなくなるとある。学校医が不足する中においても、しっかりと健康診断できることが求められる」と訴えた。

また、「毎年6月までに健診を実施することになっているが、(花粉症治療に追われている耳鼻咽喉科医の事情などを考えると)、文科省の方針通りに6月30日までに行う必要があるのか」と実施時期の変更を求めた。検討会では学校医制度の制度疲労を指摘する意見が目立った。

「学校医は、健診をするだけの存在ではなく、健康教育や感染症対策、メンタルケアまで含めた幅広い役割を担う(学校医の再定義)」、「一定の研修や経験を積んだ医師を『認定学校医』とし、社会評価を高める(認定制度の導入)」、「児童数や業務量に応じた適正な報酬を確保し、持続可能な制度とする」などを提言している。

私見だが、学校医制度は日本が誇れる医療システムの1ではあるものの、評価が低いように感じる。実施方法や報酬の在り方などを再考するとともに、地域医療として持続可能にするため若い医師の参画を促すべきだ。医学部の授業や研修を通じて学校医が行っている子どもの健康管理や疾病の早期発見をぜひ体験してほしい。

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楢原多計志(福祉ジャーナリスト)

◇◇楢原多計志氏の掲載済コラム◇◇
「訪日外国人の医療費未払いを防げ」【2025年9月23日掲載】
「年金改革で氷河期世代救済?本気か 『参院選に不利』と与党尻込み」【2025年4月1日掲載】
「“直美”の増加、どうする」【2024.12.14掲載】

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2026.03.10