自由な立場で意見表明を
先見創意の会

医療百論2024

コロナ禍明け、変化・変革の動きに備えよ
酷暑による電力不足や、円安による物価高騰で国民は耐える1年に。
世界では戦争が止まず、日本の防衛費も拡大の一途。
生成AI 、ChatGPTの登場で世の中や医療界はどう変わるのか。
総勢25名のコラムニストによる63本のコラムを一斉掲載。
はじめに

先見創意の会は、医療関係者や医療に関心のある一般の方々が個人として自由な立場で情報の交換、相互啓発、意見表明を行う場を提供することを主たる目的として2006年に発足しました。
この19年間、様々な情報を提供とするとともに、コラムニストや会員の皆様から頂いた貴重なご意見やご提案をホームページ上に掲載してきました。会員数やアクセス件数も増加し、本会の役割も認知されるようになったことを喜ばしく思っております。
約20年の継続は正に「継続は力なり」を実感しております。

2023年もまさに激動の1年だったと思います。世界に目を向けると気候温暖化による洪水・干ばつ・高潮等が世界を覆い国連事務総長は「温暖化を超え沸騰化に突入した」と宣言しました。
それに伴う食糧危機・大規模な森林火災による森林の喪失により『負のスパイラス』に陥っています。ウクライナ紛争は3年目に突入し先の見えない膠着状態が続いています。
中東では昨年10月にハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃に対してのイスラエルによる軍事侵攻が始まり、ガザの住民を凄惨な状態に陥れています。
また、今年は世界の人口の半数以上がかかわる米国・ロシア・インド・インドネシア等の大きな選挙が予定されており全体主義・国家主義が幅を利かせる中、民主主義の存続が危ぶまれています。

国内に目を向けると新型コロナウィルスがある程度終息したとの判断により感染症分類が2類から5類に緩和されましたが、一向に終息の兆しが見られません。
さらに3年間殆ど流行が見られなかったインフルエンザが、インバウンド復活も相まって大流行しています。
戦略性が全く見えない少子・高齢化対策により国民の不安が増す中、政治資金の裏金問題が噴出し政治不信が益々増す事となりました。
今年1月1日に発生した能登大地震は被災地の住民に未曽有の被害をもたらしました。IT・科学技術が進歩し、東日本大震災等の経験が生かされると期待しましたが、救助・復興が遅々として進まない状況に直面し愕然としています。

このような時代だからこそ、医療・福祉の重要性が一層増している事を痛感させられています。こんな状況の中、当会の活動が、困難に立ち向かう皆様の知恵の一となることを切に願っております。
今後とも、当会の目的を忘れることなくホームページのコンテンツの充実を図り、会員同士の情報交換、相互啓発や意見表明の場として発展するよう尽力する所存です。 何卒よろしくお願い申し上げます。

最後に会の運営を支えて頂いているコラムニストの方々、そして事務局の方々に深謝いたします。

2024年3月末日

一般社団法人 先見創意の会
代表理事  斎藤 達也

目次
おわりに

2023年6月、認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができる社会の実現を目指した「認知症基本法」が成立しました。認知症の人に関わる医療・介護職には、当事者の意向や思いに寄り添いながら、認知症サポーター、民生委員、地域住民などと連携した支援を展開することが、現在求められています。
認知症施策を担う市区町村も、同法の基本理念に基づき、認知症の人の意向を踏まえた効果的な施策を展開することが求められています。しかしながら、市区町村担当者からは、「認知症の人のニーズや課題が分からない」「国から示された様々な施策を実行することで手一杯」「実務を担う認知症地域支援推進員(以下、推進員)と連携がうまくとれない」などの声が、一方、推進員からは、「市区町村が事業の方針を決めてくれない」「認知症の人が抱える課題などを報告しても対応してくれない」「自分らの活動を理解してくれない」などの声がよく聞かれます。なお、こうした現象は、在宅医療・介護連携推進事業でも同様に見られます。

では、なぜ、両者はうまく連携できないのでしょうか。専門職である推進員は、個別支援には慣れていますが、地域課題を言語化することも、関係団体や組織を動かすことも苦手です。他方、市区町村担当者は、関係団体を入れた会議体を設置して、地域課題解決を促すことはできますが、地域課題や認知症当事者の支援ニーズをイメージすることができません。両者は、視点(ミクロ対マクロ)、アプローチの仕方、関心領域が全く異なっているのです。こうした状況にも関わらず、委託・受託といった上下関係にあるため、腹を割って話し合うこともせず、その結果、連携も進まない状況が続いているのです。
では、どうしたらよいのでしょうか。上下の関係ではなく、横(=協働)の関係になるよう促すことです。推進員には、支援の現場を知っているという強みが、市区町村には、関係団体を巻き込んだ課題解決を促す力を持っているという強みがあります。両者がお互いの強みを認識して連携・協働を図ることができるようになれば、「現場の声を生かした施策の展開」が市町村単位でできるようになるでしょう。

認知症の人に関わる医療職には、介護職・推進員・認知症サポーターだけでなく、視点・価値観などが全く異なる市区町村とも連携・協働することが求められています。医療百論は、医療に関するテーマだけでなく、関連領域のテーマ(法律・介護など)や医療を取り巻く環境に関するテーマ(政治・経済、社会など)を総合的に論じたものです。『医療百論2024』が、社会のなかでの医療の位置づけや医療職が果たすべき役割・機能を再考するための一助となれば幸いです。

最後にコラムを執筆して頂いている先生方と事務局に深謝いたします。

2024年3月末日

一般社団法人 先見創意の会
副代表 川越 雅弘