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本腰を入れる

大橋照子 (NPO「日本スピーチ・話し方協会」代表 ・フリーアナウンサー)

「徒然草」に、「50歳になっても究められない仕事は辞めたほうがよい」とあるそうだ。
これは大変含蓄のある言葉で、これを聞くと50代以上の多くの人が、「え~、今の仕事変えた方がいいのかなあ」と思うかもしれない。

この「徒然草」は、鎌倉時代末期に吉田兼好(兼好法師)によって書かれた随筆集で、1330年代の初め頃にまとめられたといわれる。
そこで調べてみると、鎌倉時代初期の平均寿命はなんと24歳。12世紀は最長でも50年程度と書いてある。それから少しずつ延びたとしても、「徒然草」が書かれた頃はせいぜい長くても60年くらいの寿命だったのではないだろうか。

残りの人生が10年だったら、「50歳になっても究められない仕事は辞めた方がよい」も、うなずける。確かに、あとの人生は好きなことをして過ごしたほうがいい。
でもこれを現代の平均寿命に当てはめると、「70歳になっても究められない仕事は辞めたほうがよい」ということになり、「なあんだ当り前じゃないか」ということになる。
だから現代は、50歳で今の仕事を辞めなくてもいい。
と言ってしまっては身も蓋もないので、これを仕事ではなくて趣味に置き換えてみよう。

「70歳になっても究められない趣味は辞めたほうがよい」これはどうだろう。
いや、やはりそんなことはない。趣味も習い事も何歳からでも始められる。本腰の入れ方ひとつで、(日本一になることはできないかもしれないが)周囲の人たちの中で、かなり上手い方にはなれるかもしれない。

私が大人になってから習い始めたのは、ゴルフと空手だ。ゴルフは40年習い続けていて、空手は3年になる。不思議なことに、古希を過ぎても毎日のように新しいことを習い、進化していく気がする。

この二つに共通することに、最近気がついた。上半身の力を抜くことと、腰の回転だ。
ゴルフのショットは、腰を先にグイッと回し、腕があとからついてくるようにするとナイスショットになる。この年齢で、飛距離が少し伸びた。
空手の突きも、腰をグイッと先に回してからこぶしを突き出すと、力強いパンチになる。
そうだったのかと、うれしい発見が毎日ある。
腰の入れ方が大事なのである。
本腰を入れて、腰を入れる。――そうだったのか。 
趣味も習い事も、本腰の入れ方で深さと喜びが一段と増すのだ――と、ひとり納得をしている。

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大橋照子(NPO「日本スピーチ・話し方協会」代表 ・フリーアナウンサー)

◇◇大橋氏の掲載済コラム◇◇
「暗記の悦び」【2025.9.2掲載】
「今どきの・・・」【2025.5.13掲載】
「空手とスピーチ」【2025.2.4掲載】

☞それ以前のコラムはこちらからご覧下さい。

2026.02.17