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2024年度診療報酬改定で新設の地域包括医療病棟、施設基準緩和の見通し

谷口久美子 (医療ライター)

中央社会保険医療協議会・総会は11月5日、地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟について議論した。このうち地域包括医療病棟は2024年度診療報酬改定で高齢救急患者の受け皿として鳴物入りで導入された。看護配置10対1急性期病棟(「急性期一般入院料2〜6」からの病棟転換を期待したが、施設基準が厳しすぎで移行が進んでいないのが現状だ。施設基準の緩和を求める診療側の要望に支払側も一定の理解を示しており、次回改定で見直しが行われることになりそうだ。以下に厚労省が示した主な論点とそれに対する各側の意見を整理する。

1. 論点1:地域医療包括病棟の施設基準見直し

(1)背景とデータ 
①地域包括医療病棟の届出を行うには、▽平均在院日数21日以内▽「急性期一般入院料4」と同等の重症度、医療・看護必要度該当患者割合▽入院中にADLが低下した患者割合5%未満―などの厳しい施設基準を満たさねばならず、これが10対1急性期病棟などを持つ病院が転換をためらう要因になっているとの指摘がある。

②地域包括医療病棟には、▽高齢救急患者の受け入れ▽積極的なリハビリの実施▽早期退院・在宅復帰に向けた支援―などの役割が期待されているが、実際は高齢者や要介護者を多く受け入れるほど平均在院日数の延長やADL低下が起きやすく、施設基準の充足が困難になる矛盾が生じている。厚労省のデータによると、届出病棟の約4割がADL低下5%未満の基準を満たせていない。

(2)論点の内容
高齢者の生理学的特徴や地域包括医療病棟における診療の現状を踏まえ、より高齢の患者を入院させることへの負のインセンティブを生まない観点から、平均在院日数やADL要件等のアウトカム評価のあり方をどう考えるか。

(3)各側の意見
<診療側>平均在院日数、入院中にADLが低下した患者割合5%以下、看護必要度の該当患者割合に関する施設基準の緩和を要望。

<支払側>届出がしやすくなるような対応策を講じることには賛同するも、施設基準の一律緩和には否定的。代わりに▽ADLが低下しやすい患者を多く受け入れた場合の救済措置の設定▽85歳以上の患者割合が多い場合の平均在院日数の基準を別に設定―することでの対応を提案している。

2. 論点2:地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の評価における内科・外科格差の解消

(1)背景とデータ
地域包括医療病棟とともに地域包括ケア病棟も、高齢救急患者の受け皿としての機能が求められている。ところで救急搬送や緊急入院の大半は内科系症例であり、外科系症例は少ない。これに対して予定入院は手術を控えた外科系の症例が多い傾向にある。地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟とも入院料は包括評価となっているが、これら病棟に救急搬送または緊急入院する患者は、予定入院患者に比べて包括範囲内で実施される医療が多く、出来高算定できる医療は少ないことが明らかになっている(つまり、内科系症例が中心の救急搬送・緊急入院患者を多く受け入れる病棟ほど、病院経営上は不利になる)。

(2)論点の内容
①地域包括医療病棟に求められる、高齢者に頻度の高い疾患や緊急入院の受け入れを促進する評価のあり方について、例えば地域包括医療病棟の入院料は患者によらず一律であるが、手術のない緊急入院の患者は手術を行う患者に比べ、包括範囲内で実施される医療が多いが出来高で算定できる医療は少ないこと等を踏まえ、どのように考えるか。

②地域包括ケア病棟の初期加算は、転院・転棟とそれ以外の差は大きく設定されている一方、直接入院のうち救急搬送からの入院と予定入院との差は小さい。実際の包括内出来高点数(=包括範囲内で実施される医療)は転院・転棟や直接の予定入院と比べ、直接の緊急入院の場合が高いこと等を踏まえ、そのあり方をどのように考えるか。

(3)各側の意見
<診療側>
①について:手術のない緊急入院や救急搬送からの入院について、実態に即してより一層評価すべき。内科系疾患の受け入れがしっかりと評価される仕組みへの見直しが必要だ。
②について:初期加算において救急搬送からの直接入院に加え、緊急入院を評価することは実態に即しており、賛同する。

<支払側>
①について:外科系と内科系の相対的な差異を是正し、公平かつきめ細かな評価にすることが考えられる。病棟に期待される機能の発揮を促す方向で具体案を事務局に整理してほしい。
②緊急入院を積極的に受け入れてもらうために予定入院との評価のメリハリは強化すべき。

3. 論点3:包括期入院医療を担う病院としての機能を新たに評価

(1)背景とデータ
2040年に向けた新たな地域医療構想では、これまでの病床機能報告に加えて医療機関機能報告が創設される。当該報告に基づく取り組みが始まる2027年を見据え、包括期の入院医療(医療機関機能報告では「高齢者救急・地域急性期機能」に該当)を担う地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟を持つ病院の機能を、救急搬送の受け入れや在宅医療を担う医療機関の後方支援などの実績を指標として評価することが狙い。

(2)論点
地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟を有する病院が地域で包括期の医療を担うにあたり、在宅医療の後方支援、救急からの下り搬送の受け入れ、介護施設等との連携、そのほかの地域貢献など、果たすべき機能がより評価されるための評価のあり方について、在宅療養後方支援病院への評価との関係性も含め、どのように考えるか。

病院としての機能を評価する指標の候補には、救急搬送受入件数、下り搬送等受入件数、当該病棟への緊急入院、後方支援に関する加算の算定件数、自宅等からの入院件数、協力対象施設である介護施設への往診―を挙げている。

(3)各側の意見
診療側・支払側とも指標候補などについて細かな注文はつけているものの、この方向で検討を進めていくこと自体には反対していない。

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谷口久美子(医療ライター)

◇◇谷口氏の掲載済コラム◇◇
「次期診療報酬改定の議論が本格化、機能強化型在支診の評価見直しなどが論点に」【2025.10.28掲載】

2025.12.02