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後発医薬品メーカーに対して『10・10・10の法則』が作用

工藤 高 (株)MMオフィス 代表取締役

後発医薬品は2015年6月の閣議決定により、数量ベースで「2017年なかばに70%以上とするとともに、2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上」というシェア目標が定められていた。本年3月末がちょうど最終目標の2020年度末だったが、3月に日本ジェネリック製薬協会が公表したジェネリック医薬品シェア分析結果(速報値:2020年度第3四半期)(20年10月〜12月)の数量シェア分析結果(速報値)は79.4%と80%にわずかに届かなかった。

診療報酬上における後発医薬品使用のインセンティブ(誘因)には「後発医薬品使用体制加算(入院初日)」があり、DPC /PDPS(急性期1日当たり包括払い)では機能評価係数Ⅰで評価されている。他にも「外来後発医薬品使用体制加算」(診療所のみ、院内処方が対象)、「一般名処方加算」(院外処方のみ)、「バイオ後続品導入初期加算」がある。

費用面では薬剤点数が最初から包括されていて、薬価差益が捻出できないDPCや療養病棟入院料では経営効果が大きい。たとえば薬価1万円の薬剤が薬価差益20%(消費税前)だと薬剤卸より8,000円で医療機関へ納入される。そこに消費税が10%かかるため8,800円を卸に支払う。つまり、消費税込みの薬価差益は12%、1,200円である。1989年に消費税3%が初めて導入されたとき日本医師会の要望もあって医療サービスを「非課税取引」にした。理由は消費税によって患者自己負担が増加し、医療機関への受診抑制が起こるのではという危惧だった。もし、時計の針を戻せるならば通常の課税扱いにすれば良かったと医療機関関係者ならば誰しも思っている。

薬剤が包括されている入院料では前述の薬価差益1,200円は出ない。それならば納入価格8,800円の先発医薬品よりは、納入価6,000円の後発医薬品使用が「変動費」である薬剤費比率を下げていく。たまに薬剤卸から報告された「納入価ベース」(納入量)での薬価差益を自院のデータとしている病院があるが、実際は「請求ベース」(使用量)で計算が必要であり、その際に包括入院料で使用された薬剤は薬価差益が捻出できていない。

厚労省の2020年度診療報酬改定の結果検証の特別調査データによると、入院患者に対して「後発医薬品を積極的に処方する」は有床診療所で20.0%、病院で50.4%であった。一方、先発品を処方する理由では、診療所、病院の医師ともに「患者からの希望があるから」(診療所71.9%、病院76.0%)が最も多くなっていた。その次は「後発医薬品の品質や医学的な理由(効果や副作用)に疑問があるから」(診療所41.3%、病院43.3%)だった。

この回答を裏付けるようなことが発生してしまった。後発医薬品メーカーの小林化工と日医工が薬機法(旧薬事法)の重大な違反により、相次いで行政処分を受けたことであり、小林化工の業務停止命令は116日間と過去最長であり、日医工は32日となった。今回の業務停止は後発医薬品への信頼に大きなダメージを与えた。さらに各社の自主点検で問題が見つかり、出荷停止が相次いでいる。弊社の新規クライアントでも後発品使用割合が40%と低かった病院でちょうど切り替えを進めていた矢先だった。後発医薬品反対派の医師から「言ったとおりだろう」と切り替えはストップした。従来から問題視されていた「品質への不安」が露呈したわけだ。

さらにもう一つの後発医薬品の問題点である「安定供給への不安」も発生している。現在、一部の後発医薬品の供給不足という問題が生じており、医療機関では入手できない薬剤を再び先発医薬品に切り替えて対応している。そのため弊社クライアントでも後発医薬品使用割合が2%前後ほど下がり、取得している加算基準を割りそうな気配になっている。厚労省による経過措置的な診療報酬上の対応策が必要である。

2022年改定に向けて調剤薬局における「後発医薬品調剤体制加算」等を見直したらどうかという議論が始まっている。いずれ医療機関にもそのような対応は取られるであろう。ただし、そのためには後発医薬品の「高い品質」と「安定供給」がきっちりと担保されていないといけない。マーケティングの世界に「10・10・10(テン・テン・テン)の法則」がある。これは「企業ブランドを構築するには最低10年かかる。そして、信用を失うのは10秒かからない。その失った信用を取り戻すには再び10年かかる」というものであり、行政処分を受けた後発医薬品メーカーに該当しているのではないか。これまで政府による後発医薬品推進策という追い風に乗って、シェア拡大経営第一だった後発医薬品メーカーには品質管理最優先の「量から質」への経営方針転換が必要なのは改めて言うまでもない。

(※本稿は医学通信社「月刊保険診療2021年8月号」の定期連載に加筆訂正したものです。)

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工藤 高 [(株)MMオフィス 代表取締役]

2021.09.07