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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第9回 『心電図』  
連載5 ― 「心電図の原理」
(掲載日: 2007.12.28)
<< 連載4「心電図の基本的知識(その4)―心臓を動かす電気的しくみ―」
1.電圧をイメージする
 
 心電図は、各電極間の電圧を測定しています。

 例えば、ダムをイメージしてください(図15)。ダムでは、高い所から低い所へ水が流れていきます。この水の流れを電流と考えます。水が流れるための落差(高さ)が「電圧」です。

 電圧は、電流を流そうとする方向が正の値になります。連載1の図1で示した電気回路では電池の+から電流が流れて行きます。電池はさながら、水を持ち上げるポンプです。これにより電流を流すための電圧が発生します。



2. 心臓に発生した電圧のベクトルと心電図波形との関係

 心電図測定では、10個の電極を用いて、12個もの波形を記録していきます(簡単なモニタリングは別です)。手足に付けた電極から測定したものを「標準肢誘導」、胸に付けた電極から測定したものを「胸部誘導」と言います。

 連載4の図14を詳しく見ながら、少しずつ説明していきます。図14では、右手と左足に電極を付け、2つの電極間の電圧を測定し、心電図を得ました。 

 心臓は立体的な構造物ですから、電流が流れる際も、電線の電圧測定と違い“どの向きに流れたか”を知ることは大事です。心臓全体で発生した電圧は、「向き」がある量なのでベクトルです。

 心臓は、(図16)に示した位置で人間の胸に収まっています。右房にある洞結節は左上にあり、ここから心臓全体に電流は流れて行くので、そのときの電圧はベクトルで表すことが可能です。


 
 このベクトルは、電極の間を結んだ線(ベクトル)とほぼ同じ方向なので、心臓に発生した電圧の大きさをある程度正確に反映していると考えられます。

 次回は、心臓の電圧の検出方法について説明します。

<POINT!>
心電図は、心臓の電気活動の変動を体外から測定したものである
心臓は立体のため、心臓の電気活動も空間的方向を持つ量(ベクトル)である。
連載6-「心臓の電圧の検出方法(誘導法)」 >>
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