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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2005.10.07
「医者の不養生」は本当?――米ハーバード大が医師の健康管理調査
 「医者の不養生」と言われるが、本当にそうだろうか――。米ハーバード大学は、同大に所属する医師15,000人強を対象に、日々の健康管理に関するアンケート調査を実施した。

 それによると、ほとんどの回答者が規則正しい食事や、適度な運動を心がけており、一般人よりも行き届いた健康管理をしていることがわかった。また、ガン検診を受けることには全般に積極的で、喫煙者も少なかった。一方、代替医療の利用者の割合は一般人ほど多くなかったという。

  アンケートの回答者数は2,115人(回答率約14%。男性1,185人、女性930人)。食事については、回答者のほとんど(82%)が毎日、朝食をとり、野菜や果物を含む3食を心がけているという。ファストフード店をよく利用すると答えた回答者は12%にとどまった。飲酒についても半数が1週間に1〜5杯程度で済ませており、57%がオリーブ油を優先的に使用するなど、できるだけ飽和脂肪酸を避けていることが分かった。

 運動量も、回答者の半分以上が1週間に少なくとも3度は、やや激しい、または激しい運動をしていると答えた。規則的な食事と適度な運動の効果か、回答者の平均BMI値は23.9と健康値の範囲内に収まった。このアンケートを実施した同大の医療ニュースレター「The Harvard Health Letter」のアンソニー・コマロフ編集長によれば、「一般に比べて回答者の食事量は少なく、体重も軽い」ことも判明したという。

 こうした生活習慣からか、自分に心臓疾患のリスクがあると考える回答者は8%にとどまり、喫煙者も39人しかいなかった。

 アンケートでは、このほかにサプリメントや代替医療、ガン検診等に対する姿勢についても尋ねた。ビタミン剤などのサプリメントの摂取を心がけている回答者は77%を占めたが、ハーブ療法やカイロプラクティス、針治療などの代替医療を受けることに積極的な人は一般の米国人ほど多くなかった。
First released 29 Sept 2005 @
小児がんの終末医療で患者に意識調査――豪セント・ジュード小児科病院
 子供の末期がん患者の終末期の過ごし方を決めるのは概して、親や担当医であろう。患者は、こうした決定をどのような気持ちで受け止めているのだろうか。オーストラリアのセント・ジュード小児科病院は、10〜20歳までの末期がん患者を対象に、病状や、現在受けている治療法についての意識調査を実施。その結果、患者の多くが自分の病状を認識しており、家族や担当医など周囲の人間に対する気遣いや思いやりから、決められた治療法や過ごし方を受け入れているケースが多いことがわかった。

 調査は、同病院とシドニー小児科病院で治療を受けている末期がん患者20人を対象に行った。両病院では、患者は「医薬品の安全性を確かめるための臨床試験参加」、「DNR指示(蘇生処置拒否指示)」、「終末期医療」の3つの選択肢から1つを選ぶことができる。

  どの選択肢を選ぶかを決めるまでの1週間、患者に聞き取り調査を行なったところ、19人(95%)が「家族や病院関係者、そして、自分と同じ病気の患者のためになることは何か、自分が周囲から何をしてほしいと望まれているかを考えて決める」と答えたという。実際に、臨床試験への参加を決めた患者の1人は「家族から臨床試験を受けて欲しいと懇願された。家族のためでなかったら、受けなかったと思う」と答えた。また、臨床試験段階の新薬が自分の延命に繋がらないとわかっていても「将来、他の患者の治療に役立てるかもしれないと考えた」と答えた患者もいた。

  一方で、延命に効果のある治療法と理解していても、「苦しまずに過ごしたい」との思いから、すべての治療から身を引きたいと訴える患者も65%あった。また、「他の患者が延命機器につながれた状態で亡くなったのを見て、同じ治療を受けたくないと思った」と答えた患者は50%、すでに自分の死を覚悟している患者は50%あったという。

  調査チームの一人である固形腫瘍学クリニックのウエイン・ファーマン副理事は「子供の末期がん患者に尊厳ある終末期を過ごしてもらうためにも、両親や担当医が患者自身の意識を知ることは良いことだと思う。また、担当医は終末期の治療法や過ごし方を決める際に、患者が子供であっても、周囲の人間の意見に配慮する傾向が強いことを念頭に置くべきだろう」と述べた。

 調査結果は米腫瘍学専門誌「Journal of Clinical Oncology」のオンライン版に掲載された。
First released 5 Sept 2005 @
「思いやりのある医療」教育を目指して――米インディアナ大学
 最新鋭の医療機器を置いた研究所、医学専門書、みっちりと詰まった臨床研修―――。医学教育は、このような環境の中で、医師が医療技術を身につけることに重点を置く傾向にある。しかし、患者を対象にしたアンケートによれば、患者が医師に期待するのは技術力ばかりではなく、患者に対する「思いやり」、「コミュニケーション力」であるという。

 米インディアナ大学では、日常業務の中で院長や先輩医師、同僚、コメディカル等によって示される態度や言葉の習慣によって、医学生や研修医が医師としての心得を学ぶ「潜在カリキュラム(hidden curriculum)」を重視している。このほど、米国とカナダの8大学の医学部関係者を集めて、同大の取り組みを紹介するとともに、医療技術とともに「思いやりのある医療」の教育方法を構築するにはどうすれば良いか、その方法論などについて意見交換した。

 会合で、同大のデブラ・リツルマン博士は、「一方的に教え込むやり方以上に、学生や研修医が自分たちの経験を語り、その中から生じる疑問点について議論することから得るものが多い」と強調。「人々は医師に対して思いやりのある接し方をしてもらうことを期待している。良いことに、米国とカナダの各大学は、そうした医師の育成に前向きであることだ。小さな一歩は今後大きく広がっていくだろう」と、同様の取り組みが今後広がる可能性について言及した。

 会合に参加したのは、ダートマス大学、ドレクセル大学、マックマスター大学、ワシントン大学など米加8大学。
First released 3 Oct 2005 @
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