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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第7回 『血圧計』  
連載3 ― 「流体の圧力(動圧と静圧)」
(掲載日: 2007.09.21)
<< 連載2 「身の周りの圧力」
1.“流れ”は圧力を生む

 前回までは、動いていない液体の圧力の話でしたが、動いている液体や気体(流体)の場合はちょっと様子が変わってきます。

 流体では流れによる力が加わってきます。例えばホースの水ですが、ホースの口を指で押さえ、水の勢いを強くします。その水に手を当てると痛いくらいです。流れのないプールに入った場合、体は水からの圧力を受けますが、川の場合は、さらに流れによる力が加わってきます。流れが押す力を「動圧」と言い、流れがなくても受ける圧力を「静圧」と言います(図5)。


  動圧は、その流速が速いほど大きくなります。川の流れを想像してみましょう。流れが速くなれば、その圧力は強くなります。台風ではんらんした川の流れは、自動車を押し流すほどの強さです。

 また、動圧と静圧を合わせたものを「全圧」といい、流れのない水の圧力は[全圧=静圧]ですが、流れのある水の圧力は[全圧=静圧+動圧]となります。

 流体の圧力についてイメージできましたか?血管という管を流れる血液(流体)の圧力が血圧(血液の圧力)です。だんだんと本筋の血圧の話に近づいてきましたね。

2.管の太さと流速の関係

 太い部分と細い部分のある太さが一様でない管があります。この管の中を水が流れているとします。このとき、太い部分での流速は遅く、細い部分での流速は早くなります。なぜでしょうか? 

 はじめに、太さが一様な管を考えます(図6-a)。入口の部分をある一定時間に通過する水の量は、出口の部分を同じ一定時間で通過する水の量と同じになります。これはイメージしやすいですね。

 では次に、出口が細くなった管を考えます(図6-b)。この管の場合も、入口と出口を一定時間に通過する水の量は同じになります。出口の部分は、通り抜けられる面積が狭くなっていますから、速度が早くないと同じ量の水は通過できません。面積が半分になれば流速は2倍になります。1/3の面積なら3倍の速度です。

 
3.『ベルヌーイの定理』

 ひとつながりの管の中を流れる流体を考えたとき、管の太さに関係なく流体の全圧は一定になります。これが『ベルヌーイの定理』です。流体の持っている力は一定で、動圧が増えれば静圧が減り、静圧が増えれば動圧が減るというイメージです。

 さて、「動圧は、その流速が速いほど大きくなる」と説明しました。ということは、太さが変わる管内の流体の動圧は、太い部分では小さく、細い部分では大きくなります。

 また、ベルヌーイの定理により、太い管での静圧は大きく、細い管の静圧は小さくなります。これらのことから、管の太さに関係なく、ひとつながりの管内を流れる流体の全圧(動圧+静圧)は一定です。

 管が細くなると流体の流速と動圧が大きくなるのは、ホースの話を思い出してもらえれば、分かりやすいでしょう。ホースの口を細くすれば、水は速く強く飛び出します。

 では、図6-bの管を使ってベルヌーイの定理を確認しましょう(図7)。

 太い管と細い管の全圧は変わりません。動圧は流速の遅い太い管では小さく、流速の速くなる細い管では大きくなります。一方、太い管の静圧は大きく、細い管の静圧は小さくなります。

<POINT!>
 流れの持つ圧力を「動圧」、流れがなくても受ける圧力を「静圧」と言う。
 太い管は静圧が大きい代わりに動圧が小さい。細い管は静圧が小さい代わりに動圧が大きい。
 『ベルヌーイの定理』とは、管の太い、細いに関係なく全圧(動圧+静圧)は一定(どこでも同じ値)ということ。

 次回からは、ようやく血圧の話に入っていきます。
連載4 「血圧のしくみ」 >>
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