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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第7回 『血圧計』  
連載1 ― 「圧力の特徴を知る」
(掲載日: 2007.09.07)
 私たちの周囲には、「圧力」が大きく関係している現象が数多くあります。

 紙パック入りの飲料にストローを差しただけでは中の液体は出てきませんが、ちょっと力を加えると液体が飛び出します。また、自転車のタイヤは、空気を入れていくと固くなっていきます。

 指を切ったときに出血するのも、指の血管内の圧力が空気の圧力より高いからです。圧力の高い動脈が切れると、血は間欠泉のように吹き出します。全身を流れる血液の圧力(血圧)は、体の部位によって異なります。血圧を測る簡便な機械が血圧計で、聴診器を使って手動で測るもの、自動で測定してくれるものもあります。

 今回の連載は、この「血圧計」についてですが、まずは圧力の話から始め、血圧の話、血圧計の原理の順に説明していきましょう。

1.圧力をイメージする

 圧力とは、「単位面積当たりに働く力」のことです。同じ力をかけても、力の加わる面積によって圧力は変わってきます。

 床にブロックを置いた場合を考えてみましょう(図1)。サイズが5cm×10cm×20cm、重さが10kgのブロックがあります。大きさの異なる3つの面(a、b、c)の面積は、a:50cu、b:100cu、c:200cuです。それぞれの面を下にして床に置いた場合の圧力は、a:0.2kg/cu、b:0.1kg/cu、c:0.05kg/cuとなります。重さが同じでも、面積によって床に与える圧力が違うことが分かります。



 小さい面積に力を加えると、その圧力は非常に大きくなります。例えば、箸で湯豆腐をすくうのは大変。箸では切りづらいキュウリでも、箸を突き刺すことは簡単です。クギや画びょうは、少しの力で簡単に壁に刺すことができます。立つと足元が沈むくらい柔らかいベッドでも、横になればあまり沈みません。

2.液体と気体の圧

 液体と気体の圧力の特徴とは、『一部分に加えた力は全ての部分同じ圧力で伝わる』ということです。この法則を、『パスカルの原理』と言います。

 これは、注射器の例で考えてみると分かります。力を加えてピストンを押すと、圧力が上昇し、水は勢いよく飛び出します(図2-a)。次に、注射器の先に穴の開いたゴム風船を付けてみるとどうなるでしょう?

 ピストンを押します。すると、どの穴からも同じように水が飛び出します(図2-b)。これは、水がピストンから受けた力が風船内の「全ての部分」に伝わっているということです。



さらに、「同じ圧力」とは、図2-aと図2- bの注射器は、水の飛び出す勢いが同じということです。かけたものと同じ圧力が、全ての部分に同じように加わっています。ですから、穴の数が増えたせいで、圧力が減り、水の勢いが弱くなるということはありません。一度にたくさんの水が放出されるようになるだけです。

 このように、重力の影響を考えなければ、ひとつながりの液体や気体が周囲に与える圧力は、どの場所でも同じになります。

 では、重力がある場合はどうなのでしょうか?

 縦にいくつかの穴を開けた筒の例で考えてみます(図3)。この筒に水を注ぐと、下にある穴ほど水が勢いよく飛び出します。下にある水は上にある水の重さを受けているので、水の圧力は深いほど大きくなります。

 この重力のことを踏まえると、気圧や水圧といった普段身の回りにある圧力のことが分かってきますね。

<POINT!>
 圧力とは、「単位面積当たりに働く力」のこと。
 『パスカルの原理』とは、一定の容器内に液体を満たして、ある面に圧力をかけたとき、重力の影響がなければ、その内部のあらゆる部分に均等に圧力が加わるということ。
連載2 「身の周りの圧力」 >>
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