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医療機器メカトロニクス
病院で何気なく目にする様々な医療機器、その仕組みや原理等を分かりやすく解説します。
(解説者:医師 北村 大也)
第2回 『レントゲン』  
連載1 ― 「 レントゲンとX線」
(掲載日: 2007.03.09)
図1:ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン レントゲン撮影は、病院で受ける検査の中でもポピュラーな検査のひとつでしょう。「レントゲン」という呼び名自体も覚えやすいものですが、実はX線を発明したヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(図1)というドイツの物理学者の名前に由来しています。


 レントゲン博士は、ドイツのヴルツブルク大学物理学研究所所長であった1895年に放射線の1種を発見しました。当時は、正体が不明であったために「X線」と名付けました。

 このX線を使って写真を撮る検査が、「レントゲン撮影」です。正式名称は「X線単純撮影」ですが、一般に認知されている呼称なので、病院でも「レントゲン撮りに行きましょう」などと使われています。

 X線を使った検査には、ほかにもX線透視やCT検査などがあります。X線単純撮影は一番簡単な検査であり、基本の検査と言えるでしょう。整形外科では骨折の有無を調べたり、内科では肺炎の有無を調べたりする際に撮影されます。

1.X線とは?

 X線は、電磁波の1種です。

 「電磁波」と聞くと、高圧線の下に住んでいると白血病やがんになる、携帯電話の使用で脳腫瘍ができる――など、悪いイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

 しかし、実際は、多くの調査・研究がなされている段階で、人体に与える影響ははっきりと分かっていません。多くの国のスタンスは、“クロ”とは言えないけど“シロ”でもないから、「注意しつつ研究をしていきましょう」という感じです。

 とにかく、X線を知るにはまず電磁波から。電磁波についての基本的なことを理解してしまいましょう。

2.電磁波の基礎知識

(1)電場と磁場

 電磁波とは、その名のとおり電気と磁気に関係がある「波」のこと。電気があるところを「電場」、磁気があるところを「磁場」と言います。

 どちらも目に見えませんが、さまざまな現象を通してその存在を感じることができます。こすった下敷きに髪がくっつくのは「電気の力」(静電気)、磁石に鉄がつくのは「磁気の力」です。

 「電場」と「磁場」は、密接な関係にあります。

 学校の実験で作った電磁石を覚えていますか?鉄の棒にエナメル線を巻いて電気を流すと鉄の棒が磁石になります。電気が流れるところに磁場は発生します。反対に、磁場が変化すると電気が流れます。

 身近な例では、自転車のライト。分解すると、磁石と導線を巻き付けたコイルがあります。自転車をこぐと磁石が回転し、磁場が変化します。この磁場の変化に、コイルが反応して電気が流れ、ライトが点灯します。

(2)マクスウェルの方程式

 イギリスの理論物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、電場と磁場の関係をまとめた「マクスウェルの方程式」を1864年に発表しました。また、マクスウェルは、電流や磁気の方向や強さを変化させたとき、電場と磁場の変化が互いを誘導し合い空間を伝わっていく波、「電磁波」があることを予測しました。この電磁波の存在は、後にハインリヒ・ヘルツの実験により証明されます。

(3)周波数

 電磁波は、周期的に強くなったり弱くなったりを繰り返します。1秒間に何回この強弱を繰り返すかを「周波数」(単位:ヘルツ、Hz)と言います。

 電磁波は、毎秒30万キロメートル進みます。周波数は、「1秒間に進む距離の間にある波の個数」と考えられるので、[毎秒30万キロメートル÷周波数]で1個の波の長さ「波長」が分かります(図2)。

図2:周波数と波長の関係

3.生活と電磁波

 周波数によって、電磁波はさまざまな種類に分けられます(表1)。

表1:電磁波の種類と用途

 光も電磁波の1種(可視光線)、紫外線や赤外線など、聞いたことのあるものもたくさんあります。このように、わたしたちの周囲には、さまざまな電磁波が存在しています。

 電磁波は、種類によってその性質を大きく変えるので、一概に人体に有害である・ないは決められません。赤外線はものを温め、紫外線は日焼けを作ります。高圧線や家電製品、携帯電話などから発生する電磁波が有害かもしれないと問題になっていますが、はっきりとした危険は指摘されていません。

 医療分野で利用されるX線は、周波数が3.0×(10の16乗)Hz、波長は0.00001mm(1mmの10万分の1)しかありません。一方、家電製品の電磁波の波長は6000km、地球の半径に匹敵します。同じ電磁波とは思えない違いです。ちなみに、電子レンジの波長は約10cm。こちらは少し身近な感じですが。

 いずれにしても、現代生活においては、電子機器の発達に伴い電磁波の重要性は増すばかりです。

  <POINT!>
※「レントゲン」とは、「X線」のこと。
※X線は、電磁波の1種。

 次回は、レントゲン(X線)の正体に、より深く迫っていきます。

  連載2 「レントゲン(X線)の正体」 >>
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