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「保険者は患者の敵か味方か?」執筆者 浜風
(掲載日 2005.2.8)
 危機感を訴えているサラリーマンの健康保険組合が黒字に転換しつつある。だが、保険料を引き下げるわけでもなく、被保険者に何か特典が出るわけでもない。健保幹部は相変わらず「存亡の危機」を口にしている。保険者は、被保険者にとって「敵」か「味方」か?

 健康保険組合連合会(健保連、約1600組合)の2003年度決算見込みは、経常収支が1386億円の黒字になる見通し。2002年度が3999億円と過去最悪の赤字だったことを考えれば、まさに「奇跡な大転換」と言いたいところだが、その原因が「総報酬制の導入」と「被保険者本人の自己負担率引き上げ」(2割から3割へ)では、喜ぶわけにはいかない。つまり患者と被保険者の出血(「痛み」どころではない)による赤字脱却なのだ。

■黒字転換を機に保養所増設も

  しかし、健保連や健保組合の幹部には、患者や被保険者の痛みすら感じていないようだ。以下は伝聞ではなく、私自身が実際に聞いた幹部の言葉だ。

 「だいたい保険料が安すぎた。社員は医療費を国や会社からの恵みものと考えている」(金融系健保代表)、「保険料が上がり、自己負担が増えれば、抑制効果が期待できる。その通りの結果だ。3割負担は間違いではなかった」(鉄鋼メーカー健保役員)......。

 ある損保会社健保組合の設立趣旨がある。「健保組合は保険者として、被保険者が医療を等しく受けられる権利を擁護し、医療の公正化に努め、被保険者と被扶養者の健康に寄与する」(抜粋・要約)。随分、建前と本音が違う。実態がこれでは、誰のための健保組合なのか、さっぱりわからない。こんな不埒な発言をするのは一部の役員だと信じたい。最近、黒字転換を機に保養所の増設や修繕を急ぐ健保組合すらあると聞く。健保組合の本当の台所事情を知りたい。

  厚生労働省内では、医療保険制度と診療報酬体系の抜本的な見直しをめぐる本格的な論議が始まっている。保険者の再編・統合や高齢者医療保険制度の創設がメインテーマだが、保険者の機能強化をめぐる論議や行方にも注目したい。

■強まる経営者の干渉

  健保連や経済労働団体が、患者や被保険者の意見や希望を代弁するのであれば、結構なことだが、不明朗な会計処理と決算を振りかざし、保険財政の危機をあおるだけあおり、最後は国民に尻ぬぐいさせる手法は、もうごめんだ。

 最近、健保組合への経営者からの干渉が強まっている。労働組合の弱体化が背景にあるが、露骨に保健事業の縮小や給付の必要以上の点検を要求しているという。また、大手企業では、経営者が健保組合の役員の選任を実質的に決め、ほとんどの社員は選任方法どころか、誰が役員になっているのかも知らないのが実態のようだ。レセプトやカルテの開示は患者の権利だとすれば、健保組合に関する情報の正確な開示も、被保険者の当然の権利のはずだ。

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