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医療政策ウオッチ
 医療政策に関連した資料や国会での答弁などを掲載します。
掲載日: 2005.10.25
西島英利参議院議員による質問と尾辻厚生労働大臣の答弁等
 参議院厚生労働委員会
 2005.10.20
 10月20日に開かれた参議院厚生労働委員会で、西島英利参議院議員は、経済財政諮問会議が推進する高齢化修正GDPの伸び率管理制度等について、サッチャー政権下における医療費抑制策が医療の質の低下を招いたイギリスの「二の舞になる」として「絶対に導入してはならない」と反対の意を唱えた。これに対し、尾辻厚生労働相は「今やるべきことは、伸び率管理というマクロから抑えるやり方とミクロの施策の接点を見出し、十分議論することだろう」として、反対意見に理解を示した。

  また、西島議員は、財政制度等審議会が提案する保険の免責制度についても、平成14年の健康保険法改正時の坂口厚労大臣(当時)による「3割負担以上の自己負担は絶対ない」という答弁に照らし合わせて、十分な議論をすべきだと強調。尾辻厚労大臣も平成14年度の健保法改正法の附則にある規定や坂口厚労大臣(当時)の答弁を踏まえ、議論の必要性があることに同意した。

 質疑応答の要旨は以下の通り。
●西島議員
 経済財政諮問会議が提案する伸び率管理制度を導入した場合、2025年度の医療費は対GDP比で5.8%に抑制されることになる。イギリスでは、医療費抑制策の一環で企業経営手段や競争原理の導入など効率化を推し進めた結果、医療従事者が削減され、患者の待ち時間が延長された。このため、イギリスはガンの5年生存率が欧州先進諸国の中で最低になったうえ、医療の質も富裕層とほとんどの国民の間で格差が生じるという事態にも陥った。

  ブレア政権はこうした過去の反省から、主要疾患の死亡率低下を目指して待機時間を短縮するための政策に打って出ている。具体的には、NHS予算を1999年(412億ポンド)から2005年(850億ポンド)にかけて倍増。さらに、2001年時点でGDP比7.5%の医療費を2007年度には同9.4%に引き上げると発表している。

 ドイツ、フランスにおいても同様の抑制策が取られていたと思うが、その結果はどうだったか教えて欲しい。
●水田邦雄 厚生労働省保険局長
 フランスでは、国が医療費総額と病院と開業医の部門ごとの医療費を決定している。目標超過時の開業医に対する一律の医療費返還義務が制度上組まれていたが、これについては違憲判決が出されて、ほとんどが実効をあげておらず、目標額を超過している。また、 ドイツについては、開業医についてはもともと保険者と保険医協会の間で診療報酬総額について総額請負方式というものが採用されており、制度上、上限をあらかじめ設定する仕組みがとられている。入院や薬剤についても同様に伸びの上限が定められているが、多くの例外が設けられ、所期の成果はあがっていない。
●西島議員
 経済財政諮問会議の提案によると2025年度医療費は42兆円で、対GDP比では5.8%の抑制になるという。イギリスは7.5%から9.4%に増やそうとしているのに、これは削減するということで、イギリスの二の舞になるのは目に見えている。絶対に日本には導入してはならない。 ブレア政権はこうした過去の反省から、主要疾患の死亡率低下を目指して待機時間を短縮するための政策に打って出ている。具体的には、NHS予算を1999年(412億ポンド)から2005年(850億ポンド)にかけて倍増。さらに、2001年時点でGDP比7.5%の医療費を2007年度には9.4%に引き上げると発表している。
●尾辻厚労大臣
 私もこの伸び率管理という考え方には反対をしてきた。その考え方は今も変わっていない。医療費抑制に反対はしないが、今やるべきことは、伸び率管理というマクロから抑えるやり方とミクロの施策を積み上げ、接点を見出し、十分議論することだろう。
●西島議員
 財政制度等審議会が提案する保険の免責制の導入についてだが、先日の「骨太の方針2005」の中では、最初の素案では軽度・低額医療費について免責的な記述があった。そもそも、低額医療費と病気の軽症、重症は関係ないのではないか。また、平成14年の健康保険法改正時、当時の坂口厚生労働大臣は国会で、3割以上の自己負担は絶対にないと答弁で明言されている。坂口大臣(当時)の答弁も含め、この給付の割合について将来にわたって100分の70の給付ということを維持されるのだろうか。導入されれば、3割以上の負担になるうえ、日本では原則の療養の現物給付のありかたも変わるのではないか。
●尾辻厚労大臣
 平成14年度の健保法改正法の附則で「将来にわたり100分の70を維持するものとする」という規定と、坂口大臣(当時)の答弁を踏まえたうえで3割を超えるかどうかの議論をするべきだろう。
●西島議員
 経済財政諮問会議は、医療経営実態調査からみると人件費率が50%あるので、近年の物価、賃金傾向等踏まえて、大幅なマイナス改定を行なうべきであるとしている。人事院勧告では人件費は92.4%下がっているというが、電力やガス、JR等の公益企業等の1人当たり平均年間給与は平成13年度と平成16年度ではいずれもアップしている。また、国家公務員の行政職職員の年間給与は少し下がっている程度だ。

 病院の1人当たり給与をみると薬剤師、看護職員等々、すべて、このほかの公益企業等よりずっと低く、国公立、公的社会保険関係法人といった社会保険庁病院と比べても、1ヶ月当たりの給料には大きな差がある。

 平成15年6月の医療経済実態調査の結果、病院の費用構成のうち給与費は52.6%占める。一番大きいパイを抑制するのが経営であろう。しかし、給与費の中で占めるのは労働集約型産業である。医療には様々な施設規準、人員規準がある。人を減らすことができないし、マイナス改定だから、賃金も下がるのだという議論には当たらない。

 今でも安い民間病院の賃金がさらに抑制されれば、(医療従事者の)士気が低下し、イギリスのような状態になることは避けられないのではないか。また、再生産費用をどう考えるのか。医療の継続をしていくうえで当然そこには投資も必要になってくる。平成15年の医療経済実態調査によれば、(民間病院は)赤字の状態。こういう中で銀行への元金の返済等も行なわなければならないという厳しい状況だ。調査の結果をもとにしっかりとした診療報酬を決めていただきたい。
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