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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2006.08.25
ボツリヌス菌毒素が手術痕の治療に効果
 米バッファロー大学の研究者らが、手術で残った傷痕の治療にシワ取りに使われることで知られるボツリヌス菌毒素(ボトックス)が役立つとする研究結果を出した。

 研究は、額など顔面にできた癌を取り除く手術をした患者など31人を対象に実施。切開した部位を縫合してから24時間内に患部周辺にボツリヌス菌を投与した患者と、食塩液を投与した患者それぞれの手術痕が6ヵ月後にどれだけ目立たなくなっているかを比べた。傷がつくと特に気になる部位であるうえ、ボトックスが投与された場合の安全性と効果が確認されていることから、顔面を研究の対象に選んだ。

 手術痕の比較・評価は、患者の手術に関与せず、ボツリヌス菌の投与についても一切知らされていない形成外科医2人が行なった。手術痕がもっとも目立たないとの評価を「10」としたところ、食塩液を投与された患者グループの傷痕の評価は中央値で「7.1」だったのに対し、ボツリヌス菌毒素を投与された患者グループは同「8.9」と総じて高い評価だった。(一例の写真参照:クリックで拡大表示)

   

 ボトックスの投与により、傷が目立たなくなる理由についてデビッド・シェリス教授は「傷痕の治癒過程で周囲の筋肉が引っ張られるため、傷が広がってしまうことがある。ボトックスは一時的に筋肉を弛緩させるので、傷ができてから2〜4ヶ月間、傷の周囲がひきつるのを抑える効果がある」と説明している。

 「今後は、下肢や上肢、胸部などの傷痕の治癒についても、ボトックスが有効か調べる」(同)方針という。
First released 17 Aug 2006 @
鳥インフルエンザ感染防止には家禽のワクチン接種の徹底を
 家禽類の集団へのワクチン接種率が95%に満たない場合、危険性の高いH5N1型のような鳥インフルエンザの流行を逆に促す可能性がある、という研究がネイチャーに発表された。この研究を行った英エディンバラ大学とウォーリック大学の研究者らによれば、現在使用できるワクチンは一羽一羽の家禽に効果はあるものの、集団の場合、ほぼ全ての家禽に対するワクチン接種を徹底していなければ、感染は逆に広がりやすくなるという。ワクチンを接種した家禽が混じっていると死亡する家禽が少なく、鳥インフルエンザに感染している家禽がいても気付くまでに時間がかかるためだ。

 気付かぬうちに感染が拡大する現象は「silent spread」と呼ばれる。今回の研究結果から、silent spreadを防ぐためにも、集団の95%以上にワクチンを接種する必要があるという。しかし1つの家禽の集団の90%以上にワクチンを接種することは難しく、実際の接種率が90%を大きく下回るケースがほとんどだ。

 感染の早期発見のために、ワクチン接種を受けていない鳥を家禽の集団の中に混在させる方法も考えられる。ワクチン接種をしていない鳥を観察することにより、集団全体のワクチン接種率に関係なく、鳥インフルエンザの早期発見が可能になるためだ。

 エディンバラ大学のニック・サヴィル博士は「ワクチンの接種は徹底させなければ状況を悪くするだけだ。また、ワクチン接種は、生物安全保障(biosecurity)の観点や、調査と診断、教育、そして感染した鳥の移動制限と処分などを含む包括的な戦略の一環として行なわれるべきだ」と強調した。
First released 18 Aug 2006 @
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